スーパーファン によるバイラルの再現、ブランドらの新戦略

昨年、ネバダ州の10代の少年だったカーター・ウィルカーソン君が、Twitter上でバイラル現象を巻き起こした。「いくつリツイートを獲得すればチキンナゲット1年分をもらえますか」と、ファーストフードチェーンのウェンディーズ(Wendy’s)にTwitter上で尋ねたところ、ウェンディーズも返答して何百万ものリツイートを集めることになったのだ。この #NuggsforCarter から、1年が経った。

当時16歳であったウィルカーソン君はインフルエンサーでも何でもなく、ただのウェンディーズが好きな少年だった。しかし、ウェンディーズはそれに便乗して、もしも彼のツイートが1800万リツイートを獲得すれば、チキンナゲット1年分をプレゼントすると約束したのだ。ウィルカーソン君のツイートは何と結果的に340万回リツイートされた。コメディアンのエレン・デジェネレスによる、2014年アカデミー授賞式のセルフィーツイートがそれまで持っていたリツイート回数の記録をウィルカーソン君が見事破った形だ。ウェンディーズのエンゲージメントも向上した。ウィルカーソン君は前述のデジェネレスの人気テレビ番組に何度も出演した。その結果、6週間でウェンディーズは25億のメディアインプレッションを獲得した。ウェンディーズによると、ウィルカーソン君のチキンナゲットをめぐる挑戦は500万回の言及数に達し、ブランド全体の言及数を376%増加させたという。

ブランドに熱狂的な支持を寄せる消費者のことを、マーケターたちは恥ずかしげもなく「スーパーファン」と呼ぶ。スーパーファンたちを活用したマーケティング戦略はウェンディーズが発明した訳ではない。 しかし、#NuggsForCarterが明らかにしたのは、スーパーファンたちが持つ力だ。このバイラル現象以降、このアプローチを採用するブランドの数は増えているとインフルエンサーエージェンシーたちは言う。

「最終的に勝つのはファン」

今週、ユニバーサル・スタジオ(Universal Studios)は動画を1本リリースした。それは映画『ジュラシックパーク(Jurassic Park)』のファンたちが自分たちの好きなシーンを再現したビデオを集めて制作されたオリジナル動画だ。新作『ジュラシック・ワールド・フォールン・キングダム(Jurassic World: Fallen Kingdom)』プロモーションの一環として作られた。

3月にはエメラルド・ナッツ(Emerald Nuts)はAmazon上で書かれたユーザーレビューを最新の広告キャンペーンのタグラインに活用した。また10月には、シューズブランドであるサッカニー(Saucony)もグラフィックデザイナーのスーパーファンを見つけている。彼はサッカニーのジャズシューズが好きで36足も同じ靴を購入するほどのスーパーファンだ。サッカニーは彼をインスタグラム(Instagram)のキャンペーンに起用している。

「ファンとインフルエンサーの違いは何かというと、それは他人が持っているオーディエンスを借りるか自ら作るかという点にある」と映画『ジュラシック・ワールド』のキャンペーンでユニバーサル・スタジオと取り組んだクリエイティブネットワーク、トンガル(Tongal)の共同ファウンダーかつプレジデントであるジェームス・デジュリオ氏は言う。トンガルはこの1年で、レゴ(Lego)やナショナルジオグラフィック(National Geographic)と言ったブランドのブランデッドコンテンツをスーパーファンたちを使って制作することを行ってきた。「最終的に勝つのはファンだ。そのことに気づきはじめているブランドの数は増えている。#NuggsforCarterはパーフェクトな例だ」と、デジュリオ氏は言った。

ファンのセレブも狙い

ブランドについてすでによく知っているセレブリティを起用するという方法も広告主たちは探っている。有名人たちがオーガニックにブランドについてポストしてくれることを期待するとともに、彼らを将来のキャンペーンに起用するといった具合だ。1月にグルーポン(Groupon)が女優・コメディアンのティファニー・ハディッシュをスーパーボールのCMに起用したのはその好例だ。これは彼女がテレビ番組のインタビューでグルーポンについて言及したことがはじまりだ。

エージェンシーであるRQは、ピザハット(Pizza Hut)、サムスン(Samsung)、そしてミニクーパー(Mini Cooper)といった広告主のためにこの1年、オンラインや対面でのインタビューで彼らのブランドが好きだと発言したことがあるセレブリティたちを見つけてきた。RQのCEO兼ファウンダーである、ブライアン・ソルツマン氏によると、RQはプロのインフルエンサーを起用はしないとのことだ。

RQはピザハットと先月仕事をしたばかりだ。ソルツマン氏はこのキャンペーンの目標は「ポップカルチャーにおけるピザハットの話題性に火をつける」ことだったと語る。人気番組「ザ・トゥナイト・ショー(The Tonight Show)」のホストであるジミー・ファロンは番組はじめのモノローグでピザハットに言及した。これに気づいたエージェンシーはファロンと番組スタッフにピザハットのピザを何箱分も送り、メンバー限定のジャケットもプレゼントした。その結果ファロンはTwitter上でピザハットにお礼のツイートを送ることになる。ファロンのツイッター上のフォロワー数は5100万人になる。それだけではない。その後、彼の1130万人のインスタグラムフォロワーたちに向けてジャケットについてのストーリーを投稿したのだ。これらすべてピザハットから何らかの報酬が支払われたわけではない。

自然発生的な対話

サッカニーの案件を担当したエージェンシー、メカニカ(Mechanica)のブランドエンゲージメント戦略の責任者であるミカ・ドナヒュー氏によると、ブランドのために金銭を受け取って投稿するインフルエンサーとは違って、非インフルエンサーの場合オープンで正直な会話が起きやすいとのことだ。その結果、自然発生的にブランドの名前が言及されることになる。「制作するクリエイティブに、スーパーファンをうまく取り込むことができれば真の意味でのコラボレーターになってくれるだろう。投稿回数単位で料金を請求するインフルエンサーを雇うよりも、ブランド自体に深い想い入れを持っているからだ」と、彼は言う。

多くのブランドにとって、プロのインフルエンサーを雇うよりもファンをキャンペーンに採用する方がはるかに安くつく。ピザハットとジミー・ファロンの例で言うと、必要なコストはピザ代の数百ドルだけだった。しかしファンを利用したマーケティングも、選ばれたファンをプロモーションするプロセスも考慮すると、コストは増える。

「スーパーファンを起用した場合、コラボレーション自体を拡散・プロモーションするために多くの費用が使われる。有名人のインフルエンサーを起用した場合、彼ら個人に支払うための費用が増える」と、ドナヒュー氏は語った。

具体的な投資対効果

こういった戦略によってエンゲージメントは増加するかもしれないが、これが売上にどう影響を与えるかは不明瞭だ。ウェンディーズから売上の数字を教えてもらうことはできなかったが、インフルエンサーキャンペーンはそもそもセールス成果を測るのが困難だ。

プロモーターとして起用した人物は、オンラインで人々から「このプロダクトはどこで手に入れることができるのか」と、質問を受けることになる。RQはこういったダイレクトメッセージの数をトラッキングすることでオフラインでのセールスへの影響をモニタリングしていると、ソルツマン氏は言う。投資対効果という点ではインフルエンサーを使った典型的な一度限りのプロモーションをはるかに超えると、彼は言った。

「スーパーファンを使うことであらゆるマーケティングキャンペーンの投資対効果を上げることができる。スーパーファンを起用すれば、コンテンツの発生、そしてコンバージョンともに止まる所を知らない。グランドは彼らの生活の一部だからだ」と、ソルツマン氏は語った。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)