デジタル広告オークションの不透明さに、また注目が集まっています。最新の論点は、「ビッドスタッキング(bid stacking)」という言葉に集約されています。デジタルマーケティングにおける新語をわかりやすく解説する一問一答シリーズ。今回はこのビッドスタッキングを取り上げます。
デジタル広告オークションの不透明さに、また注目が集まっています。6つのアドエクスチェンジが10月最終週、状況を一変させることはないと公開書簡で約束したからです。「こうしたことを宣言する必要があるという事実は、プログラマティック広告の現状を厳然と反映している」と、大手パブリッシャーのある幹部は指摘します。
最新の論点は、「ビッドスタッキング(bid stacking)」という言葉に集約されています。いまパブリッシャーは、ビッドスタッキングのような戦略がどこで用いられているか、より詳しく調べようとしているからです。しかし、ビッドスタッキングとはいったい何なのか? なぜパブリッシャーの興味を引くのでしょうか?
デジタルマーケティングにおける新語をわかりやすく解説する一問一答シリーズ。今回はこのビッドスタッキングを取り上げます。
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――「ビッドスタッキング」とは何ですか?
ビッドスタッキング(「マルチビッディング(multi-bidding)」とも呼ばれる)とは、同じインベントリー(在庫)に複数の入札を行って、インプレッション落札の可能性を高めるのにエクスチェンジが用いるテクニックです。ビッドスタッキングによってそのインプレッションを獲得する機会が増えるので、マッチ率が上昇します。そして、インプレッションを獲得するごとにパブリッシャーに手数料を請求できるので、マッチ率が高いほど、ベンダー向けの支払いが増えるのです。
――それでどんな問題が生じるのですか?
デマンドサイドプラットフォーム(DSP)は知らないうちにインベントリーに複数回入札できるので、ビッドスタッキングを行うエクスチェンジは、需要を人為的に膨らませて、オークションでの価格を引き上げていると、匿名を条件にあるパブリッシング幹部は語ってくれました。つまり、需要は何度も重複するが、供給量は変わらないことになりえます。情報筋によると、これは、より多くの資金が各エクスチェンジを通じて流れる可能性を高める、入札の駆け引きの一例だといいます。
――ビッドスタッキングはどれくらい一般的なのでしょうか?
アドテク関係の多くのことと同様に不明です。広告オークションが不透明ということは、買い手と売り手が、取引データを示すログレベルのデータを見ないということです。「これはこれまで常に問題だったが、買い手とパブリッシャーはこの数年間に、より多くの知識を身につけており、公正な市場を求めているので、ベンダーに問い詰めはじめている」と、パブリッシング幹部は言います。
――バイサイドにとっての問題は何ですか?
インベントリーの真の費用をつり上げてきたなら、場合によっては問題でしょう。入札件数が増えたら、基本的に購入が難しくなるので、買い手は確実に落札しようとして、料金を引き上げるかもしれません。
――ビッドスタッキングが行われているタイミングについて、パブリッシャーはどうすれば可視性を確保できるのでしょうか?
(ログファイルデータとも呼ばれる)ログレベルのデータ、つまり入札の流れのデータを通して可視性を確保するのが最良の方法です。パブリッシャーはログレベルのデータを表示するよう要請できます。しかし、これまでのところ、ログレベルのデータの提供に前向きなベンダーはほとんどいません。パブリッシャーが陰で糸を引いているとエージェンシーパートナーが確信していたり、そうでない場合にオークションで何が起きているか知っていたりして、信用問題につながっているのではないかと、心配するパブリッシャーもいます。
――なるほど。それで、ビッドスタッキングについて知ることがなぜ重要なのでしょうか?
競合他社にとって不当なやり方でベンダーの収益を膨らませ、パブリッシャーに対して過剰請求を生じさせる、オークションの動きを偏らせるひとつの事例だからです。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)