企業がウェブサイト間で情報をやり取りする方法はいろいろあります。そのなかでも特に簡単な仕組みがリンクデコレーション(リンクの修飾)です。デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回のテーマは、リンクデコレーションです。
企業がウェブサイト間で情報をやり取りする方法はいろいろあります。そのなかでも特に簡単な仕組みがリンクデコレーション(リンクの修飾)です。
この手法は、パブリッシャー、広告主、アフィリエイトマーケター、大手プラットフォームなどが用いていて、オンラインでは何年も前から一般的になっているもの。ですが、Appleによるトラッキング防止の取り組みを回避してオンラインで追跡できる(ものの、現在テスト中のITP2.2では、さらにその対策をされる予定)ということで、最近、また注目を集めています。
デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回のテーマは、リンクデコレーションです。
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──面白そうです。どんなものなのですか?
リンクデコレーションは、聞いたそのままの意味で、こういう用語はめったにありません。リンクをクリックするとURLに情報が追加される仕組みです。この付加情報によって、リンクの行き先を変えることなく、リンク先サイトに情報を送信できます。URLに追加された「?」に続いて表示される部分が付加情報です。この「?」以降の情報は、ひとまとめにクエリ文字列と呼ばれます。クエリ文字列は、クエリパラメーターと呼ばれる個々の情報が複数集まって構成されることもあります。
──どのように機能するのですか?
リンクデコレーションのやり方は主に2つあります。基本的なのは、リンク作成時に静的に追加情報をURLに付け加える方法です。メールによるニュースレターにある自社サイトへのリンクで、パブリッシャーがよく用いています。ニュースレター内のリンクをクリックしたページ訪問がわかるようにするには、「http://www.example.com/article」というリンクの代わりに、「http://www.example.com/article?referrer_source=emailNewsletter」のようにリンクを修飾します。
もうひとつの、複雑なほうの方法では、リンクのクリックがトリガーとなり情報を動的に付加するJavaScriptコードでリンクを修飾します。リンク先サイトに訪問者を導いた各クリックに特有な情報を渡したい場合には、この方法を使います。たとえば、複数のパブリッシャーサイトにまたがるディスプレイ広告キャンペーンを追跡する広告主は、こちらを選ぶでしょう。広告を掲載しているパブリッシャーごとに手作業でリンクをカスタマイズする代わりに、広告のクリック時にコードでURLに「?publisher=[name of publisher]」のように追加できます。こうすることで、サイトに訪問者をもたらしたのがどのパブリッシャーなのかを広告主が判断できます。
──リンクに追加された情報をサイトはどうやって収集するのですか?
URLのテキストを取り込み、クエリ文字列を抜き出し、さまざまなクエリパラメーターを分析できするJavaScriptのコードをサイトが実行します。クエリパラメーターは、「&」記号で分かれていて、書式は同じ。「label=information」のように、情報のラベル、「=」記号、情報そのものという順番です。書式が決まっているので、構造化されたデータの処理は簡単で、参照元を記録したり、訪問者ごとに保持できる固有なファイルであるクッキーに情報を保存したりと、好きに使えます。
──リンクデコレーションは、サイト訪問の参照元の把握にしか使えないのでしょうか?
そんなことはありません。リンクには、どんな情報も――理論上、情報を表す文字と数字のどんな組み合わせも――付加できます。たとえば、オンラインでフォームに入力しますよね。そのような入力情報を、記入済みフォームを受け取るなんらかのページに渡すのにも、リンクデコレーションは使えます。これは、たとえば「digiday」とGoogle検索するとわかります。検索結果ページのURLに「q=digiday」というクエリ文字列が含まれていると思います。これは、検索クエリの送信後に追加されたものです(「q」はGoogleが「クエリ」のラベルに選んだ文字です)。
──リンクデコレーションは、新しい手法なのですか?
まったく違います。リンクデコレーションは、正確な起源ははっきりしませんが、サイト間や同じサイト内のページ間の情報の受け渡しに、長年、使われています。
──では、なぜいまになって話題になっているのですか?
Appleが自社ブラウザ「Safari」に追加した追跡対策機能を回避するのに、FacebookやGoogleといった企業がリンクデコレーションを使ってきましたが、Appleがそれをよしとしなくなったからです。
──サイト越えトラッキングのためにリンクデコレーションがどのように使われているのですか?
詳しく説明した【一問一答】記事はこちらです。
参考書風にまとめるとこうです。FacebookやGoogleのようなサードパーティ企業が所有していないサイトで追跡をするのを好ましく思わないAppleは、自社ブラウザのSafariにトラッキングを防ぐ機能を追加しました。するとFacebookとGoogleが、この追跡防止機能の回避策を見つけました。リンクデコレーションを使って、コントロールができるリンクにユーザーの識別に使えるように情報を付加し、その情報をリンク先のサイトに渡すのです。協力サイトがファーストパーティクッキー(Cookie)を保存して、その認証情報を格納すると、FacebookやGoogleはそのサイトに保存されているコードを通じて、その情報にアクセスできます。Appleは、FacebookとGoogleがリンクデコレーションにより保存されたファーストパーティクッキーを通じて、ウェブで人々を追跡できるのを制限するため、リンクデコレーションで保存されたと考えるクッキーを削除することにしました。
視覚的なほうがわかるという人は、こちらに説明動画があります。
──では、リンクデコレーション自体が悪いというわけではないのですね。
そうです。ありふれたウェブの基本機能を、広告企業がウェブで人々を追跡するのに使っているのです。クッキーと同じですね。
Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)