FacebookとGoogleはこの1年、今後もコンバージョンを追跡できるようにするためのある手段を、広告主に勧めてきた。それが、サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングです。
広告主は長年、サードパーティCookieやFacebookのトラッキングピクセルといったトラッカーで、広告による商品の購入やダウンロード、あるいはニュースレターの購読といった行動を測定してきました。
広告主たちは、ブラウザのトラッカーブロック、Appleによるトラッキングの妨害、GoogleのChromeブラウザにおける、サードパーティCookieのサポート終了といった逆風が吹き荒れるなかでも、引き続きトラッキングを行いたいと考えています。
これを受け、FacebookとGoogleはこの1年、今後もコンバージョンを追跡できるようにするためのある手段を、広告主に勧めてきました。それが、「サーバーサイド・コンバージョン・トラッキング」です。
Advertisement
──サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングとは何ですか?
サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングとは、FacebookやGoogleといったプラットフォーマーのアドテクサーバーと、広告主やリテーラーのWebサイトをホストするサーバーを直接接続して、トラッキングを行う手法です。Cookieやトラッキングピクセルと同様、広告主のWebサイトからアドテクプラットフォーマーのサーバーに情報を送り、誰かが商品ページをクリックしたり、何かを購入したことを明らかにするのです。
──トラッキングピクセルやCookieと同じであれば、何が新しいのでしょうか?
広告主のサーバーと、FacebookやGoogleのサーバーが、ブラウザを経由せずに接続されるという点でしょう。現在、ブラウザに付与されるCookieやトラッキングピクセルは、以前のように機能していません。サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングは、パフォーマンス測定に必要なデータに、プラットフォーマーが現在も将来もアクセスできるようにするための方法なのです。
英国に本社を置くデジタルエージェンシー、アキュラキャスト(AccuraCast)の創業者、ファルハド・ディベチャ氏は「トラッキングピクセルやCookieは、まだなんとか機能しているが、正確に通知を計測するには不十分だ。広告主のなかにも『同じデータを、プラットフォーマーのサーバーにも送信したい』と考える企業がいても不思議ではない」と説明します。
──どのような広告の計測に使うことができるのでしょうか?
GoogleとFacebookでは、測定対象となる広告の種類が異なります。Googleのサーバーサイド・コンバージョン・トラッキングの場合、広告主はGoogleやFacebookの広告、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)や、あらゆる種類のチャネルで購入された在庫について、広告の露出がどのようにコンバージョンに結びついたかを追跡することができます。一方、FacebookのコンバージョンAPIが計測可能にするのは、Facebook経由で購入した広告在庫のみです。
ミックスパネル(Mixpanel)、トランスユニオン(TransUnion)傘下のシグナル(Signal)、トゥイリオ(Twilio)傘下のセグメント(Segment)といったアドテク企業も、あらゆる広告セラーから購入した広告のサーバーサイド・コンバージョン・トラッキングを提供しています。
──広告露出がコンバージョンにつながったことを、広告プラットフォームはどのように知るのでしょうか?
プラットフォーマーが効果を把握するには、広告露出とコンバージョンを照合するためのデータが必要になります。つまり広告主は、コンバージョンした顧客のメールアドレスや電話番号、IPアドレス、データポイントといったデータを、GoogleやFacebookに渡す必要があります。広告を見てコンバージョンした人はGoogleやFacebookにログインしている可能性が高いため、これらのプラットフォームは関連性を確認できるのです。
──昔ながらの「オーディエンスマッチング」と何が違うのですか?
確かに、ライブランプ(LiveRamp)のような企業は何年も前から、広告主がオフラインやオンラインのデータをアップロードし、広告のパフォーマンスを測定できるようにしています。しかしサーバーサイド・コンバージョン・トラッキングにおいては、プラットフォーマーと広告主が、サーバーを介して「直接」通信し、データ連携を発生させる必要があります。
──ちょっと待ってください。プラットフォーマーにさらに多くのデータが渡るということですか?
Shopifyのようなパートナーを経由する、自前のサーバーを使うなど、どのような接続方法を確立するかによって、広告主はGoogleやFacebookに渡す情報をさまざまなレベルでコントロールできます。
Googleの広報担当者は「サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングは、広告主がユーザーのデータをよりコントロールできるようにするための、継続的な取り組みの一環として構築されている」と話し、Googleは1年前にサーバーサイド・コンバージョン・タグを発表してから、さまざまなアップデートを定期的に行っていると強調しています。
一方、Facebookは自社のサーバーサイド・コンバージョン・トラッキングをコンバージョンAPI(CAPI)と呼び、この仕組みがFacebookのトラッキングピクセルとは別に実装されている場合、広告主はどのデータを共有するかをコントロールできると説明しています。
──うーん…プライバシーはどうなるのでしょうか?
広告主にサーバーサイド・コンバージョン・トラッキングの導入を勧めているエージェンシーは、ユーザーの情報は暗号化されると説明しています。また、サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングは、むしろ広告主が安全を確保したいと願っている機密情報を、ブラウザから閉め出すことができます。
なお、デジタルエージェンシー、ジェリーフィッシュ(Jellyfish)のデータ、プラニング担当最高ソリューション責任者であるジェームズ・パーカー氏によれば、サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングを導入している広告主は、自社のプライバシーポリシーや規約に従い、「個人情報がマーケティングパートナーと共有される可能性がある」と明記したうえで、データ取得を行っているようです。オーディエンスマッチングなどの目的で、すでにFacebookやGoogleとデータを共有している場合はなおさらです。
「実際、広告主とアドテクベンダーのあいだでデータが共有される例は散見されている。そこから察するに、多くのマーケターは、サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングに取り組んでいるはずだ」とパーカー氏は話します。しかし、場合によっては、データ取得の際には、ユーザーのきちんとした同意が必要だとする、GDPR(一般データ保護規則)などにより、サーバーサイドのデータ共有が妨げられる可能性があります。パーカー氏も「GDPRは、かなりの障害になる可能性がある」と述べています。
──これは、FacebookやGoogleがAppleのプライバシーアップデートを回避する手段なのでしょうか?
そういうわけではありません。パーカー氏、ディベチャ氏などのエージェンシー幹部は、サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングを導入した広告主は、トラッキング規制により、見逃す結果になったかもしれないコンバージョンを検出していると口を揃えますが、Appleの変更によって生じた隙間を、完全に埋めることはできません。
また、Facebookやインスタグラムでターゲティング可能なオーディエンスを発掘する手助けを行っている、オーディエンスキッチン(Audience Kitchen)の創業者、タイ・マーティン氏は「(広告主には)わからない、細かなことがまだ存在する」といいます。「つまり、サーバーサイド・コンバージョン・トラッキングは、まだ不完全なソリューション」ということです。
[原文:WTF is server-side conversion tracking?]
KATE KAYE(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:村上莞)