Q&A：プロンプトエンジニアリングは誰しも必須のスキルとなるか

SI Japan 2023/6/22

一部の専門家は、ジェネレーティブAIが未来の働き方を完全に変えてしまう可能性があるというが、新しく登場しているツールはどれも完璧には程遠い。

ChatGPTのような言語モデルではアルゴリズムを使用して大量のデータ処理を行い、プロンプトの質問に対する回答を出力するが、的外れであったり間違っていたりする回答を返すハルシネーション（幻覚）に陥る傾向が見られる。

AIを日常業務に組み込む企業が増えるなか、適切な回答を得るためにツールを正しく使うのはなかなかトリッキーだという認識も広がっている。そこで登場したのが、プロンプトエンジニアリングだ。

――プロンプトエンジニアとは？

プロンプトエンジニアとは、求める回答を得るためにAIプラットフォームにどのような質問を投げればよいのかが正確にわかる人たちだ。

事実に基づいた理路整然とした結果を引き出し、AIという新しいテクノロジーを最大限活用するには、具体的で詳細な質問をプロンプトとしてAIに入力できるかが鍵を握る。

「ほしい検索結果を得るためにGoogleに何をどう入力すべきかがわかるまで、しばらく時間がかかったのを皆覚えているだろう？」と話すのはジェネレーティブAIのSaaSプラットフォームであるプロフェット（PRophet）の創業者でCEOを務めるアーロン・クイットケン氏だ。

クイットケン氏によると「それは数字ではなくて、言葉を計算するようなもの」だという。

プロンプトエンジニアリングは新しいスキルであり、企業がAIツールの採用を増やすなかで求めているスキルでもある。

だが、言語ベースのAI技術に対しては、裏の仕組みとその活用を正確に理解している、特殊な人材が必要になる。AIツールが最も正しい事実に基づいた最高の回答を返せるように導くための、十分に詳細で漏れのない質問をうまく作り上げるには、時間も忍耐も必要だ。練習も必要である。今や研修コースすらある。

「ある意味彼らは幻のユニコーンのようなものだ。コーディングもできなければならないし、言語スキルもコミュニケーションスキルも非常に高くなければならない」とクイットケン氏は話す。

「このように左脳と右脳のどちらにも長けている人はあまりいないものだ」。

LinkedInのメールによる公式コメントによると、同プラットフォームでは、ChatGPT、プロンプトエンジニアリング、プロンプト作成、ジェネレーティブAI関連のスキルを載せたメンバープロフィールが、1月から2月に55％、2月から3月に71％増えたそうだ。

「新興テクノロジーのまだ初期の段階ではあるが、この分析は数千人、数万人のプロフィール変更に基づいて行われている」とLinkedInは述べている。

プロンプトエンジニアリングの必要性は、今日のAIができることと、まだ人間がやらなくてはならないことを示すもので、この新しいテクノロジーが近い将来人々の仕事を奪ってしまうのではないかという一部の不安を解消してくれる。

人事ソフトウェア企業のペイコア（Paycor）の最高人事責任者であるパーラス・パーカー氏は「企業を動かす心臓部は今も人だ」という。

やがてプロンプトエンジニアリングは、事実確認や偏った視点の特定など、AIには任せられない他のスキルとともに、さまざまな種類の仕事で広く見られるスキルとなるだろう。

「一部は人間が担って、それを補うようにAIが一部を行うというこのようなワークフローは今もある」と共同作業管理プラットフォームのライク（Wrike）のCEOを務める創業者のアンドリュー・フィレヴ氏は話す。

Microsoft Officeが最初に登場したときには、それが使いこなせることを履歴書に書けることが重要だったが、今ではできてあたりまえと企業側も想定している。

「AIでも同じことが起きるだろう」とフィレヴ氏はいう。

仕事でもプライベートでも、求める結果を得るためにAIへのプロンプト入力を練習する人が増えていけば、「これはとても普通のスキルになる」とフィレヴ氏は話す。

したがって、企業が社内で大規模な言語モデルのトレーニングを進め、働く人たちがツールをもっと使いこなせるようになれば、プロンプトエンジニアという専門職は比較的短命で終わるかもしれない。

いったんそうなってしまうと、「平凡な調べもの作業をやる若手の数はそれほどいらないということになる」とクイットケン氏は語る。

「人の数は同じだけ必要かもしれないが、仕事のやり方は変わってくる。信じられないかもしれないが、人々は考えたり、実際に物を書いたりするほうに時間を使うことになるだろう」。

Hailey Mensik（翻訳：SI Japan、編集：分島翔平）

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