「ビッドシェーディング(bid shading)」は、プログラマティック広告におけるセカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへのシフトにより、使用頻度がかなり増えている用語。デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズで解説します。
「ビッドシェーディング(bid shading:ビッドキャッシングではない)」は、プログラマティック広告におけるセカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへのシフトにより、使用頻度がかなり増えている用語。プログラマティック広告のあらゆるものと同様に、どんなチャンスもモノにするために、専門用語に注目する価値はあります。
デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、ビッドシェーディングについて手ほどきしていきます。
以下、いつものように、一問一答形式でお伝えします。
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――ビッドシェーディングとは、なんですか?
プログラマティック広告には、ファーストプライスオークションとセカンドプライスオークションという主にふたつのタイプのオークションがあります。ファーストプライスオークションでは、最高入札者によって、インプレッションの販売価格が決定します。これに対して、セカンドプライスオークションでは、2番目に高い値を付けた入札者によって、インプレッションの販売価格が決まります。だから、セカンドプライスオークションで、2人のバイヤーがそれぞれ10ドルと15ドルで入札したら、15ドルで入札したバイヤーは、落札しても10.01ドルしか支払いません。
ビッドシェーディングは、ファーストプライスオークションとセカンドプライスオークションの折衷案として登場しました。ビッドシェーディングでは、アドテクパートナーの算定に基づいて、セカンドプライスとファーストプライスの中間の価格をバイヤーが支払います。
――ビッドシェーディングの仕組みは?
ビッドシェーディングは、主にサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)で無料サービスとして提供されており、ファーストプライスオークションへのシフトが理由で、デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)での利用も増えつつあります。ベンダーは、たとえば特定サイトや特定の広告掲載位置での一般的な落札価格や、落札失敗時の入札価格など、入札履歴情報を分析し、最高額の入札と次点の入札の中間にあたる入札価格を計算します。
――ビッドシェーディングが登場した理由は?
ビッドシェーディングは、ファーストプライスオークションでの落札時に突然、いつもよりかなり高い価格を支払わなければならないことについて、不満を抱くバイヤーのご機嫌取りのために開発されました。「これは、バイヤー、それも特に、まだファーストプライスの世界で営業するように作られていないDSPへのダメージを和らげるための製品だ。バイヤーにとって、ビッドシェーディングがどういうものか知ることが非常に大事になる。ビッドシェーディングは、ファーストプライスの世界でインプレッションに対して料金を払いすぎるリスクを減らしてくれるのだ」と、グループ・エム(GroupM)傘下のエージェンシー、エッセンス(Essence)で欧州・中東・アフリカ向けプログラマティックの責任者を務めるマット・マッキンタイア氏はいいます。
――パブリッシャーにメリットはある?
パブリッシャーよりもバイヤーに役立つツールキットですが、中間価格が依然として、セカンドプライスオークションで支払われるよりもかなり高くなりがちなので、理屈のうえでは、パブリッシャーはまだ十分な支払いを受けられます。
――バイヤーはビッドシェーディングのために余分に金を支払う必要はあるのでしょうか?
いままでは支払っていないですが、今後は変わる可能性があります。Googleには独自バージョンがあり、違った形でパッケージ化やブランド化されていますが、ほかの独立系ベンダーも独自バージョンを用意しています。ビッドシェーディングの利用を望んだ場合に、特定のベンダーがバイヤーに料金を請求し始める徴候があります。これは、すべてのバイヤーが喜ぶ話ではありません。
――マイナス面は?
ビッドシェーディングは特に透明性があるわけではないので、バイヤーは、ベンダーが適正価格だというものは何でも鵜呑みにしなければなりません。「SSPができるだけ多くの価値を引き出しているかどうか監査できるという点では、ほとんど説明責任がない。金の節約になっているように見えるが、どうすればそれを証明できるのか? どうしてその数字になったのかDSPが示すのは容易かもしれないが、SSPはそれをバイヤーに証明できない」と、マッキンタイア氏は話します。
――なぜSSPではそうなって、DSPレベルではそうならないのですか?
ニューズUK(News UK)傘下の動画ネットワーク、アンルーリー(Unruly)でプログラマ ティック責任者を務めるポール・ギブンズ氏によると、すべてのDSPが一夜にしてファーストプライスアルゴリズムへの切り替えに成功したわけではないといいます。「我々はこの10年間、セカンドプライスオークションが標準的なプログラマティック売買に携わってきた。だから、バイヤーが方針転換して、最高額のファーストプライスで支払いを行うオークションに入札するようDSPに求めても、DSPはシフトできない。DSPが、不必要な費用や非効率性をバイヤーに示さずに、ファーストプライスオークションとセカンドプライスオークション間のリアルタイムな切り替えの態勢を完全に整えるまで、多くのSSPがこうしたサービスを提供すると予想している」。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)