【一問一答】Appleの「 ITP2.1 」で何が変わる?:最新アンチトラッキングポリシー

Appleが新たなアンチトラッキング策を発表しました。今回は、サードパーティだけでなく、ファーストパーティのcookieにも影響が及ぶ内容になっています。

Appleは、2017年にはじめて「インテリジェント・トラッキング・プリベンション(Intelligent Tracking Prevention:以下、ITP)」をリリース。その目的は、アドテク企業によるネット上の行動の追跡を制限し、ユーザーのプライバシーを保護することでした。そして、今年2月末、Appleはそのアップデート版である「ITP2.1」のリリース計画を発表しました。こちらはまだテスト段階ですが、3月中にその全容が明かされるとみられています。いまのところ、アップデートが取り沙汰されているのは、アナリティクスやデベロッパー界隈に限られています。しかし、パブリッシャーやマーケターも注目する必要があるでしょう。

テック界のアップデートにはありがちですが、ITP2.1も専門用語だらけで、全体像が見えにくいものになっています。デジタルマーケティングにおける新語をわかりやすく解説する一問一答シリーズ。今回は、ITP2.1の要点を解説します。

――そもそも、AppleのITPって何ですか?

ITPはインテリジェント・トラッキング・プリベンションの略で、Appleが同社のブラウザSafari上の広告トラッキングを制限する試みの名称です。最初のバージョンは、Safari上のサードパーティデータのトラッキングを遮断しました。これにより、ニッチオーディエンスへのターゲティングを大規模に行う際に広告主が利用するデータをサードパーティに依存していたアドテク企業、マーケター、パブリッシャーが打撃を受けました。

――最新のITP2.1は、ITP2.0とどう違うのでしょうか?

端的にいうと、2.0はサードパーティcookieに関するものですが、2.1はファーストパーティcookieにも影響します。ファーストパーティcookieは、一般に穏当なタイプのcookieだと考えられています。典型的な用途として、パブリッシャーが自社のウェブサイトの読者の利用状況を調査するなど、サイトアナリティクス目的があげられます。一方、サードパーティcookieは、見込み顧客やリターゲティングの特徴の抽出など、広告目的で利用されます。一般的なウェブアナリティクスに利用されるcookieは認められるはずで、規制対象になるのはクロスサイトトラッキングに使われるものになるとみられています。

――なぜアップデートされたのでしょうか?

アドテクベンダーのせいです。Appleが最初にITP導入を発表したとき、サードパーティデータに依存するアドテクベンダーはパニックに陥り、実際彼らの売上は打撃を受けました。しかし、こうした企業は徐々に適応し、規制を回避するさまざまな抜け穴が作られたのです。そのひとつが、サードパーティcookieをファーストパーティcookieとして保存するというものです。こうした抜け穴を塞ぐべく、AppleはITP2.1を発表しました。「(ITP2.1は)AppleのブラウザであるSafariのデベロッパーとアドテク企業のいたちごっこの産物だ」と、アイクロッシング(iCrossing)でデータおよびコンサルタント業務担当責任者を務める、サム・バイニング氏は言います。「(ITP2.1は、ITP2.0への)反応に対する反応なのです」。

――ITP2.1が抜け穴を埋めた方法はどのようなものですか?

ファーストパーティcookieのアクセス権限と保存期間を規制することで、これらをトラッキングに転用する便利な方法を抑制しました。たとえば、サイト訪問者の行動のトラッキングに使われる、いまある恒久的ファーストパーティcookieは、今後は7日間しか保存が認められなくなります。なお、セッションcookieについては、すでにサイト訪問の24時間後には消去されるようになっているので、ITP2.1の対象外です。

――想定外の影響が出ることはありますか?

可能性はあります。ひとつはユニークユーザーの水増しです。ウェブサイト所有者が7日以上あけて再訪したサイト訪問者を、実際は同一人物であるのに別人とカウントすることにより、こうした事態が起きる可能性があります。「以前は、Googleアナリティクスのcookieは理論上2年間保存されました。今後はSafariにより7日後には削除されてしまう」と、バイニング氏は言います。「これにより、ブランドや広告主が参照するユニークビジター数が大幅に水増しされる可能性がある」。

マーケターは、一部のオーディエンスデータにはアクセスできないといいます。新たな現実に適応するしかありません。「最新アップデートは、デジタルマーケティングのパフォーマンスの可視性という根本的な問題を、マーケターに突きつける」と、エッセンス(Essence)で欧州・中東・アフリカ地域メディアアクティベーション担当シニアバイスプレジデントを務める、ライアン・ストーラー氏は言います。「ITP2.1は、このトレンドにおける最新展開にすぎません。短期的には、影響を最小限に抑えるためにすべきことがいくつかあります。しかし、広い視野で見ると、ポストcookieの世界が近い将来やってくるのは確実で、マーケターはそれに備える必要があります」。

――どのくらい大きな問題でしょうか?

アドテクエコシステムにいるすべての人に影響が及びます。ベンダーにも、マーケターにも、パブリッシャーにもです。ある意味、そのおかげで心配事は減ります。誰もが同じ課題に対処を迫られており、公平な条件でプレーできるからです。もうひとつ忘れてはいけないのは、cookieをブロックするのはSafariブラウザだけだということです(ただし、Firefoxにもアンチトラッキング版はあります)。それでも、Safariのシェアは大きく、データ管理プラットフォーム(DMP)のパーミューティブ(Permutibe)のデータによれば、英国でパブリッシャーサイトを訪問する月間4億人のユニークユーザーのうち、38%がSafariを、7%がFirefoxを使っています。つまり、ユニークユーザーの約45%を、パブリッシャーは把握できなくなります。cookieを使って彼らを特定し、リターゲティングを行うことが禁止されるからです。「大騒ぎするほどの問題ではないと、パブリッシャーは思っているようだが、彼らは焦るべきだ」と、パーミューティブのマーケティングディレクター、アミット・コテチャ氏は言います。

――今後も規制は進むのでしょうか?

おそらくそうなるでしょう。デジタルではたいてい何でもそうですが、今回のアップデートに対しても抜け穴が見つかり、いたちごっこが繰り返されるでしょう。「この問題に対するAppleの積極姿勢を考えれば、クロスサイトトラッキング目的のSafariの恒久的cookieという概念そのものが、いずれは過去のものになるでしょう」と、アドテクコンサルタント企業のアドプロフス(AdProfs)の創業者、ラトコ・ビダコビッチ氏は言います。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)