「プロ」のリーチ獲得に、LinkedIn活用するツールベンダー : デザイナーやエンジニアが狙い

ウェブサイト作成サービスのWix.com(以下Wix)は、使いやすさを売りとして小規模な企業へサービスを提供することで確立したブランドだ。そんな同社は現在、オーディエンス層の拡大を目指しており、その裾野をデザイナーやエンジニア、そしてクライアント向けにウェブサイトを制作するエージェンシーまで広げようとしている。この目標を達成するため、同社はプロ向けの新商品を開発するとともに、こうしたオーディエンスにリーチするためマーケティング予算の配分を増やしている。

WixのCMOを務めるオマー・シャイ氏によると、プロやオピニオンリーダーに注目してもらうため、LinkedIn(リンクトイン)やTwitterへのデジタル広告支出を増やしているという。こうした変化とともに同社は、テレビへの予算を減らしている。同社は毎年スーパーボウルのキャンペーンを行っているが、それを除けばここ2年でテレビへの支出はほとんどなく、デジタルへの支出がマーケティング予算の大半を占めている。

「もともと当社は非常に小規模な企業だけを対象としていた」と、シャイ氏は振り返り、次のように述べている。「だが現在では、それ以外にも中規模企業やエージェンシー、マーケター、SEO専門家をはじめ、たくさんの方々が当社のプラットフォームを訪れ、当社のソリューションを利用するようになっている。こうした新しいビジネスチャンスに対応するため、マーケティングを多様化させている」。

マーケティング戦略

2019年第1四半期、Wixのマーケティング支出は5500万ドル(約60.5億円)だった。同社にとって第1四半期は、もっとも多くのユーザーを獲得できる時期で、サイトの訪問者も多い。そのため、第1四半期のマーケティング支出は、その他の時期よりもはるかに多くなるのが普通だと、Wixの米国ゼネラルマネージャーを務めるジョー・ポラーロ氏は語る。また、同社が支出を行ったオンラインチャネルは検索エンジンやソーシャルネットワーク、ストリーミング、ブランディングなど多岐に渡るという。ただし競争上の理由から、同社の具体的な支出額や各分野の割合については明かせないとのことだった。カンター(Kantar)によると、Wixの2018年のマーケティング支出は7400万ドル(約80億円)で、2017年の7000万ドル(約78億円)から増加している。

また、エンジニアへのリーチを確保するため、同社はデモやハッカソン、開発者向けカンファレンスといった体験型のマーケティング予算も増やしている。さらに同社は5月にテルアビブに拠点を置くゲーフェン・チーム(Gefen Team)を買収し、同社のマーケティングすべてを司るインハウスのマーケティングチームを強化した。

Wixは2018年12月に「アセンド(Ascend)」、2019年4月に「コービッド(Corvid)」というふたつの新製品をリリースした。アセンドは20以上の製品が入ったパッケージで、起業家がカスタマーとより強固なつながりを築く製品となっている。コービッドはWixが現在ターゲットとしているデザイナーやエンジニア、エージェンシー向けの、より高度なウェブサイトを開発するための開発プラットフォームだ。

ソーシャルの活用方法

Wixのマーケティングはこの2製品にとどまらず、TwitterやLinkedInにおけるプレゼンスを高めるためペイドメディアとアーンドメディアを活用している。同社は以前からLinkedInを利用していたが、いまほど積極的な活用ではなかった。現在、同社はLinkedInのエンゲージメントを増やすため、支出を増やすとともに製品アップデートについてブログで投稿し、マーケティングツールや質問に関するスライドショーを提供している。

シャイ氏によると、同社はLinkedInであらかじめテストを行い、具体的な内容は明かせないものの結果が良かったことから積極活用を決めたという。Wixは社内でマーケティング投資に関するTROIという指標を用いている。これは「マーケティング投資のリターンを確保するまでにかかる時間」をはかる指標で、マーケティング支出をWixの有料会員からの料金で7から9カ月以内に回収することを目的としている。Wixのパワーポイント資料によると、第1四半期の同社のマーケティング支出5500万ドル(約60.5億円)に対し、2019年3月時点で2700万ドル(約29.7億円)を回収している。

Wixはエージェンシー向けの電子書籍やエージェンシーとのパートナープログラム、ウェブサイトの作り方のデモといったコンテンツへの宣伝を行っている。同社は広告媒体を移すことで、YouTubeの30秒広告よりもオーディエンスへより関連性の高い広告を届けようとしている。2019年6月、第1四半期終了時点でWixの登録ユーザー数は前年度より増えて1億4800万人に達した。有料会員も21%増加し、420万人となっている。

LinkedInの優位点

以前に米DIGIDAYが報じた通り、WixがLinkedInをより重視するようになったのは、LinkedInが広告ターゲティングを強化するとともに、広告主によるLinkedInユーザーへのリターゲティングを可能にするツールのリリース計画を発表したことが発端だ。

コンサルティング企業メタフォース(Metaforce.co)の共同創設者でブランドコンサルタントのアレン・アダムソン氏「中小企業へのターゲティングという意味ではLinkedInは理にかなっている」と語る。「Wixの狙うオーディエンスが集まる場所であり、マーケティングにおけるターゲティング戦略としては賢い選択だ」。

Kristina Monllos(原文 / 訳:SI Japan)