YouTubeが新たにショッパブル広告を導入する。親会社であるGoogleが1月第4週、新しいショッピング機能をYouTubeに試験導入することを正式発表した。この新機能は、この春に一部のクリエイターおよびブランドアフィリエート向けにローンチされるという。
YouTubeが新たにショッパブル広告を導入する。
親会社であるGoogleが1月第4週、新しいショッピング機能をYouTubeに試験導入することを正式発表した。この春に一部のクリエイターおよびブランドアフィリエート向けにローンチされるこの新機能は、人目を引くデザインのショッピングカートが特徴で、モバイルユーザーやウェブユーザーがカートをクリックすると視聴中の動画に関連した商品リストに誘導され、そこで商品を直接購入できるというもの。
動画上でブランドが直接広告を打てるショッパブル広告は2015年に誕生しており、YouTubeでもかねてから導入が期待されていた。今回、ついに導入が決まった背景には、YouTubeにおけるツール開発の進展がある。同社は2020年10月にShopify(ショッピファイ)との新たな統合に試験的に着手したほか、動画上の商品ブランドにタグ付けすることを1年がかりでインフルエンサーに推奨してきた。
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Googleは、eコマース市場で存在感を強めてきたFacebookと傘下のインスタグラム、そしてTikTokへの対抗策として、こうしたアクションを講じている。たとえばインスタグラムが先頃導入したIGTVやリール(Reels)といった機能は、やはりユーザーが動画をタップして商品を直接購入できるもので、これによりインスタグラムはオンラインショッピングサイトとしてのポジションを確立しつつある。TikTokも先だって、独自のeコマース広告機能を導入。Snapchatも2020年に、小売業者向けの新たな広告ツールの構築に着手している。動画サイトはこれまで、ユーザーエンゲージメントに焦点を当ててきた。しかし今や、ソーシャルeコマースマーケットへと進化を遂げようとしているのだ。YouTubeの新たなツール開発も、広告主とIT企業の双方にとってソーシャルeコマースが優先課題のひとつになろうとしている証だと言えるだろう。
エージェンシー各社の動き
デジタルエージェンシー各社では、YouTubeの新しいショッパブル広告を試行していく構えだ。ローン(Rhone)やコトパクシ(Cotopaxi)やといったD2Cブランドをクライアントに抱えるワラルー・メディア(Wallaroo Media)の創業者であるブランドン・ドイル氏は、YouTubeでのプレゼンスを高めたいブランドにとって新機能は刺激的なチャンスだと指摘。「第1もしくは第2四半期中に、クライアント数社で試してみるつもりだ。かなりうまくいくと思う」と期待感をにじませた。
デジショップガール・メディア(Digishopgirl Media)の創業者であるカティア・コンスタンティン氏も、YouTubeがかつて一時的にショッパブル広告を導入していた事実を踏まえ、今回の新機能はクリエイターと広告主の双方にとって、コンバージョンをより適切に管理/評価する効果的なツールになると分析。「クリエイターがデータに基づいて商品に簡単にタグ付けできるようになるなら、大歓迎だ」と述べた。
Facebookは近年、商品のプロモーションと販促にフォーカスした堅牢なeコマースツールの開発を推し進めてきた。とはいえ、多くのマーケターにとってYouTubeがパーチェスファネルの最上位にあるチャネルであることに変わりはないと、コンスタンティン氏は指摘する。「だからこそYouTubeは、コンテンツを第1に、販売ツールを第2に考えているのだろう」というのが同氏の見方だ。
YouTubeがファネルの中層や下層におけるキャンペーンにも力を発揮するには、動画キャプション中の商品リンクに代わる見栄えの良いリンクを採用するなど、スポンサードコンテンツにより適したアプローチを取る必要がありそうだ。デジショップガール・メディアでは、少数の消費財ブランドと近々YouTubeキャンペーンを展開する計画を進めているという。その1社として、同社はすでにFacebookで積極的な広告キャンペーンを張っているブルーランド(Blueland)の名を上げた。
YouTubeの魅力はさらに増す
eコマースの評価とレビューをホスティングするバザールボイス(Bazaarvoice)の製品担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるルーカス・ティールマン氏は、消費者の多くが在宅を強いられ、動画ポスト経由でショッピングを楽しむ傾向が高まっている今、YouTubeの新機能追加は良いタイミングだと分析。同氏は、「動画シェアサイトの元祖とも呼ぶべきYouTubeがショッパブル広告に参入するのは当然だろう」と述べ、クリエイターとブランドがショッピングにフォーカスした長尺のYouTube動画を制作する契機にもなると付け加えた。
長尺動画が制作できる点はYouTubeの大きな差別化要因だとコンスタンティン氏も同意する。長尺動画でユーザーエンゲージメントを高められるYouTubeは、尺の短い動画が主体のほかのプラットフォームと一線を画していると言えるだろう。長尺動画へのショッパブル広告機能の追加により、ブランドにとってのYouTubeの魅力はさらに増すはずだ。「新機能が適切に運用されれば、ロイヤルティの高いユーザーの維持と拡大につながるだろう」と、コンスタンティン氏は期待を寄せた。
[原文:With YouTube’s new shoppable tools, the video platform wars are heating up]
Gabriela Barkho(翻訳:SI Japan、編集:長田真)