FacebookとGoogleに代わるデジタル広告媒体を求めるブランドが増えるなか、 ピンタレスト (Pinterest)はD2Cブランド勢獲得に引き続き注力している。6月第2週より、同社は2週間にわたるキャンペーン、ザ・グッズ・バイ・ピンタレスト(The Goods by Pinterest)を開始した。
FacebookとGoogleに代わるデジタル広告媒体を求める声がブランドのあいだで高まるなか、ピンタレスト(Pinterest)はD2Cブランド勢獲得に引き続き注力している。
6月第2週より、ピンタレストは2週間にわたるデジタルショッピングキャンペーン、ザ・グッズ・バイ・ピンタレスト(The Goods by Pinterest)を開始。これは、ピンタレストが2020年5月に開始した取り組み、ショッピング・スポットライト(Shopping Spotlight)の一環で、同プラットフォームと提携しているファッション/ライフスタイルインフルエンサー、およびパブリッシャーのお薦め商品を紹介する内容だ。今回は、高級ベッド用品のブルックリネン(Brooklinen)、シェービング用品のビリー(Billie)、アウトドア用品のアウトドア・ヴォイシズ(Outdoor Voices)、セクシャルウェルネスブランドのモード(Maude)、主にミレニアル世代にホームペイントを販売するクレア(Clare)といったブランドの商品がラインナップされており、いずれもピンタレストでのみ購入可能となっている。
この数年間、ピンタレストは自社プラットフォームでのショッピングを簡便にする機能を次々に導入し、D2Cブランドを惹きつけようとしてきた。6月7日に発表したばかりの新機能、ショッピング・リスト(Shopping List)も然りで、同社によると、ユーザーはこの新機能の実装により、プロダクトピンを管理しやすくなるという。なおユーザーは、保存された商品の価格やレビュー、配送情報だけでなく、最新の値引き情報など、リスト上の商品に関するあらゆる変更も即時に知ることができるという。ピンタレストがこうした新機能を投入する目的はひとつ。ピンタレストは商品の認知だけでなく、購買にも貢献するプラットフォームであると、ブランド勢に念を押すことにある。
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ブランドたちの思惑
ザ・グッズ・バイ・ピンタレストに参加中のビリーは、現在ピンタレストで限定シェービングセットを、割引価格の17ドル(約1900円)で販売中だ。また、オリーブオイルブランドのブライトランド(Brightland)は、売れ筋商品のアウェイク(Awake)とアライヴ(Alive)の2本に専用の注ぎ口を付けた特別セット「ゴールデン・デュオ(The Golden Duo)」を80ドル(約8800円)で販売している。
一方、モードのCEOエヴァ・ゴイコチア氏は、幅広いオーディエンスを見つけたいとの思いから、このキャンペーンに参加。「キャンペーンを通じ、ピンタレストのオーディエンスに我々の商品を知ってもらうとともに、親近感も醸成できたらと考えている」。モードは現在、マッサージキャンドルを3本揃えた限定セットを販売しているという。
実際モードにとって、同イベントへの参加は幅広いオーディエンスを見つける好機にほかならない。というのも、セクシャル/ウェルネスブランドであるモードは、ゴイコチア氏も認めているとおりFacebookに広告を打ちづらいからだ。Facebookは「アダルトコンテンツを含む」広告を広く禁じており、同社の定義によればその規制対象は、裸体から「過度に暗示的/性的に挑発的な言動」まで、その類のすべてが含まれる。
かたやピンタレストは、セックスにフォーカスしたモードのコンテンツに「一貫して好意的」だと氏は語る。事実、同社のコンテンツはロックダウン中にピンタレストで大変好評を博し、「リビングルームでデート」と題した投稿は、モードによる投稿史上、最高の「ピン」数を獲得したという。
時宜を得た取り組み
ピンタレストのD2Cブランドを獲得するための戦略は、時宜を得たものでもある。iOS 14の更新に伴うATT(App Tracking Transparency)の実装を受け、D2Cブランド勢は現在、FacebookとGoogleに代わる広告出稿先を探しているからだ。「いま多くのブランドが、ファンにリーチできるほかのプラットフォームを見つけようとしている。FacebookとiOS 14のさらなるアップデートが今後も予想されるなか、その重要度はますます高まっている」と、ゴイコチア氏は語る。
モードはさらに、クリックひとつで、ピンタレスト上での決済を可能にする、ピンタレストのショッパブルピンを半年ほど前から利用しており、ピンタレストでの売上向上を図っている。ゴイコチア氏いわく、「ピンタレストのショッパブルコンテンツと有料広告が、今後も我々の成長を後押ししてくれることを期待している」。
ピンタレストの狙い
ピンタレストが実施するこうした機能改善と追加、そしてキャンペーンの背景には、独自プログラムであるベリファイド・マーチャント(Verified Merchant)を通して、ブランド勢を引き付けたいという同社の狙いがある。実際ピンタレストは、約2年前にD2Cブランド専門のセールスチームを立ち上げているほか、この2年間にマーチャント(販売業者)にフォーカスしたショッピングツールを複数導入している。
ピンタレストのショッピングプロダクト部門でトップを務める、ダン・ルーリー氏は米DIGIDAYの姉妹メディア、モダンリテール(Modern Retail)の取材に対し、究極の目標は「ユーザーが、ピンタレストで目にするすべての商品を購入可能にすることだ」と語った。つまり、ザ・グッズ・バイ・ピンタレストは、今後の展開が予定されているリテールにフォーカスしたキャンペーンともども、ピンタレストが2020年導入したマーチャントツールの利用を促進するための方策なのだ。
エンゲージ率は200%以上成長
ピンタレストがこれらツール群を導入したのは、2020年5月。まさにロックダウンの真っ最中だった。そのなかには、ユーザーに対し、利用履歴に基づいてパーソナライズされたショップタブを表示する、ショップ・フロム・ア・ボード(shop from a board)や、検索経由で在庫がある商品の購入を可能にする、ショップフロムサーチ(shop from search)といった機能がある。また、商品ページでの即時決済を可能にするショップフロムピンズ(shop from Pins)や、ピンタレストのカメラで撮影したインテリアやファッションアイテムに類似する在庫商品を画像で検索できる、ショップ・ウィズ・レンズ(Shop with Lens)も、同時期に展開されたものだ。
なお、データプロバイダーのダイナタ(Dynata)が最近実施した調査によれば、現在ピンタレストでは、ほかのプラットフォームに比べて、ユーザーの購入意識が高まっているという。「ピンタレストユーザー月間平均支出は、非ユーザーの2倍で、1回の購入額も85%高い」。またピンタレストによると、同社ユーザーのショッピング機能に対するエンゲージメント率は、2020年5月以降、前年同期比で200%以上のペースで伸長しているという。
「これまでピンタレストは、発見に特化したチャネルとして知られていた」とルーリー氏。「今後は、ピンタレストでの購買をより簡単なものにしていきたい。そうすることで、ブランドやリテーラーのビジネスに貢献することができると考えている」。
[原文:With new commerce features, Pinterest is continuing to court DTC brands]
Gabriela Barkho(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)