オンラインのライブイベントを開催する新たな方法をブランドが見つけようとするなかで、Amazon傘下のストリーミングサービスTwitch(ツイッチ)がますます見直されている。 缶入りハードセルツァー(フレーバー付きのアルコ […]
オンラインのライブイベントを開催する新たな方法をブランドが見つけようとするなかで、Amazon傘下のストリーミングサービスTwitch(ツイッチ)がますます見直されている。
缶入りハードセルツァー(フレーバー付きのアルコール入り炭酸飲料)のブランド、ホワイトクロー(White Claw)と、配送プラットフォームのゴーパフ(goPuff)による最新のデジタルアクティべーションを例に取ろう。2社は最近パートナーシップを結び、Twitchで一連の双方向ゲームを公開した。このイベント「ホワイトクロー・ウインター・ゲームズ(White Claw Winter Games)」では、参加者が賞品獲得を目指して、アーケードゲーム風のクレーン「claw(クロー)」をデジタル操作する。
イベントは2020年12月21日~23日にフィラデルフィア、ボストン、マイアミ首都圏で開催された。毎晩、ゴーパフが、30分以内に勝者の自宅に豪華な賞品(有名ブランドの商品やPlayStation 5の本体)を届けた。
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新規顧客をオンプレミスでの販売−−つまりバーやレストランでの販売−−に依存していた多くのブランドが、家庭でエンゲージさせる方法を模索する事例が増えている。Twitchはeスポーツとゲーマー向けのプラットフォームとして知られているが、ホワイトクローにとっては自社のコンテンツと関わってくれる新たなオーディエンスを発見し、オンライン販売をテコ入れするひとつの手段となっている。
家庭での消費拡大を図るマーケティング
ホワイトクローによると、3日間にわたるナイトイベントは、「合計数千人の視聴者」を引き付け、数百人のTwitchユーザーが賞品を獲得したという。オンラインのライブイベントでTwitchを利用するのは初めてだったので、今回の事例はホワイトクローのマーケティングにおける新たな最前線になったと、ホワイトクローやマイクズ・ハード・レモネード(Mike’s Hard Lemonade)を所有するマーク・アンソニー・ブランズ(Mark Anthony Brands)のCMO、ジョン・シェア氏は語る。
ホワイトクローのeコマースチャネルにとって、この1年は重要な年だった。シェア氏によれば、2017年以降は毎年、売上成長率が倍増しており、新型コロナウイルスのパンデミックがさらに追い風になり、eコマースやデリバリーサービスなど、オフプレミス・マーケティングの試行につながったという。おかげで、2020年には、ゴーパフでのホワイトクローの配送だけで、前年比340%の成長を達成した。
ホワイトクローにとって、Twitchは、ターゲットとなるオーディエンスにリーチする新たな手段となった。通常、ビールブランドの売り上げの約3分の1は、オンプレミスでの販売によるものだ、とシェア氏はいう。しかし、米国でのロックダウンを受け、小売りと家庭での消費拡大を図るべく、ハードセルツァーを含むマーク・アンソニー・ブランズの製品群は新しいタイプのマーケティングを試す機会を得たと同氏は指摘する。「当社の顧客とTwitchのコアオーディエンスは、かなり重複している」。
広がるゲーム文脈の取り組み
ゴーパフで、ビジネス開発及び試験的マーケティング担当責任者を務めるマーシャル・オズボーン氏によれば、同社はゲーミフィケーションを、たとえ「スナックとドリンク満載の詰め合わせ」であっても「典型的な消費財(CPG)ブランドのバナー広告のように感じさせずに」宣伝する、クリエイティブな手段と見なしているという。このタイプの広告には別の利点もあり、ほかのデリバリーサービスを利用できない時間帯にアクティブになるゲーマー層を取り込めるという。「我々が興味を持っているのは、いわゆる『営業時間外』での振る舞いに力を入れることだ。大半の配送プラットフォームは、午前2時に顧客とチャットをしていない」。
ホワイトクロー以前にも、Twitchを試した飲料ブランドはある。レッドブル(Red Bull)やマウンテンデュー(Mountain Dew)のようなブランドは、この数年間、ゲーマー重視のプラットフォームを試して、若いオーディエンスへのリーチに力を注いだ。
12月には、ペプシコ(PepsiCo)傘下のマウンテンデューが、ピザチェーンのパパジョンズ(Papa John’s)との提携を発表した。両ブランドによるコラボレーションゲーム用コントローラーが発表され、マウンテンデューカラーのコントローラーにはゲーマーがピザを注文するためのボタンが付いていた。また先月は、キャンベル(Campbell)のスープブランドである「チャンキー(Chunky)」が、小売大手のターゲット(Target)と提携し、Twitchでeスポーツのバーチャルトーナメントのスポンサーを務めることになった。
新たな消費者の開拓に
調査会社eマーケター(eMarketer)のeコマースアナリスト、アンドリュー・リップスマン氏によれば、多くのマーケターはまだTwitchにチャンスを見出してはいないという。それは、インスタグラムやFacebookと比べると、Twitchはまだかなり新しい広告チャネルだからだ。「しかし、Twitchのオーディエンスはeコマースでの購入に慣れ親しんでいる。これから活用されるべきだ」と同氏は語る。ホワイトクローが実施したキャンペーンのオンデマンド配送(この場合は、ゴーパフの賞品の配送)は、「こうした層にうってつけ」だ、とリップスマン氏は指摘する。若い男性に偏っているTwitchのオーディエンスは、「CPGブランドにとても関心が高い」という。
ホワイトクローにとってTwitchのような新しいプラットフォームは、オンライン売上高を伸ばし、新規顧客にリーチする手段となる。「CPGやアルコールといったカテゴリー向けのeコマースチャネルが出現しつつある。(こうした新規顧客は)このタイプの体験を受け入れやすい、異なるタイプの消費者だ」とホワイトクローのシェア氏は述べた。
[原文:Why White Claw used Twitch for its latest campaign]
GABRIELA BARKHO(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島 翔平)
Photo from The Boston Calendar