米国政府はなぜ、 Amazon の解体を望むのか?

小さなオンライン書店としてスタートしたAmazon。それがいまや世界有数の規模と影響力を有する大企業へと成長したことは、ご承知のとおりだ。そして現在、その強大な力を把握し、どうにかして抑える方法はないものか、米政府が真剣に探っている。

8月第3週前半、上院議員リチャード・ブルメンソールとボブ・メンデスがAmazonに対し、同社の不透明な商行為のひとつであるAmazon’s Choiceに関する質問状を送った。これは同社マーケットプレイスの特定商品を「Amazon’s Choice」というマーク付きで紹介し、顧客に購買を勧めるというもので、4年前に導入されたが、商品選択の過程について具体的な説明はいまだなされていない(実際、粗末な商品を消費者に勧めることも少なくない)。

質問状によれば、「当該マークは消費者のなかに、それが現在マーケットプレイス内で、もっとも優れた商品であるという誤解を生みかねない」。そこで、両議員は同社CEOジェフ・ベゾス氏にAmazon’s Choiceの選択過程について複数の疑問を投げかけた。質問は「セラーは『Amazon’s Choice』マークを申請あるいは購入できるのか?」から「Amazonは購入者の閲覧および購入履歴を考慮したうえで、当該購入者の検索結果内に『Amazon’s Choice』マーク付き商品を載せているのか?」まで多岐にわたる。

米立法府が知りたいのは、そこにどのようなメカニズムが存在しているのか、そしてそれが自由競争を妨げていないか、の2点に集約される。

米政府高官がこうした質問状を送ったのは、これがはじめてではない。1カ月前にも、ほかの上院議員2名がAmazonにフェイクレビューに関する質問状を送っている。民主党大統領候補を目指すエリザベス・ウォーレン上院議員はAmazonといった大企業の解体をスローガンのひとつに掲げている。エコノミスト/経済評論家リンダ・カーン氏――独占禁止法違反でAmazonを提訴する術を探る論文の執筆者――はFTC(米連邦取引委員会)に協力するとともに、政府の専門委員会である「独占禁止法、商法および行政法に関する下院小委員会(House Subcommittee on Antitrust, Commercial and Administrative Law)」の一員でもある。

このように政府の動きが頻繁かつ具体的になるなか、実際に何が問題なのかを把握することは、我々にとって非常に重要だ。Amazonの場合、解き明かすべき点がいくつか存在する。

疑問を最初に呈したのは?

トランプ米大統領は反Amazonをもっとも声高に訴えているひとりと言える。長年にわたって同社を威嚇する発言やツイートをくり返しており、Amazonは米国郵政公社や地方の小売業者に損害を与えていると公言している。2018年11月には、詳細については明かさなかったものの、政府は独禁法違反での提訴を「極めて真剣に」考えているとまで述べた。

かたや民主党側の急先鋒はウォーレン議員だ。巨大テック企業の解体をもっとも積極的かつ具体的に訴えており、今年前半にはAmazon、Google、Facebookを分割する法令制定の必要性を公言した。「米大手テック企業は有益な商品を提供しているが、我々のデジタル生活に対して巨大な影響力を行使している(中略)。半数近くのeコマースがAmazonを経由している」と、議員はMediumに書き、さらにこう述べている。「Amazonは、Amazonマーケットプレイス(Marketplace)で販売されている商品を模倣し、それを自社ブランド品として販売することで、小企業をまさに押しつぶしている」。

ただ、両党から声が上がっているとはいえ、独禁法違反の立証は大仕事だ。19世紀後半、一企業が自由競争を排除し、最終的に消費者に害を及ぼすほど巨大化することを防ぐため、米政府は独占禁止法を導入した。だが、Amazonのような企業に対しては、この法で縛りたくとも容易には縛れない事情がある。価格のつり上げに直接結びつく行為は、表面上、いまのところ見当たらない。eコマース界の巨人を目指す途上において、Amazonは間違いなく他企業に打撃を与えているが、消費者に対しては、この限りではない。つまり、独禁法違反での提訴は、少なくとも従来の論理では、極めて難しいということになる。現在の支配的企業――Amazon、Google、Facebook――は、たとえば1890年頃の(米独禁法制定のきっかけとなった)スタンダード・オイル社のそれとは異なる、新種の巨大な市場力を有しており、この点が独禁法専門家の頭を大いに悩ませている。

そのため、独禁法そのものの見直しを検討する者もいる。論文『Amazonのアンチトラスト・パラドクス(Amazon’s Antitrust Paradox)』の執筆者カーン氏は、独占的企業の分析に使用される既存の枠組みが現行の商慣行にはもはや適合しない点を指摘した。そのうえで氏は、独占的傾向を示すプラットフォーム――たとえば、Amazon――はこれまでとは異なる、目に見えないかたちで競合他社に打撃を与えていると論じる。独占企業は市場を支配し、それが短期的な価格高騰につながり、最終的に消費者に損害を与える、というのが従来の形だ。これに対し、テック企業は組織的にあらゆる関連産業の競合他社を凌ぎ、新規の手法で経済的支配力を行使している。

具体的な問題点は?

カーン氏の論は重大なものであり、今後間違いなく法整備に何らかの影響を及ぼすと思われる。Amazonの市場支配力は同社の市場占有率をも上回ると、氏は指摘する。Amazonはただのマーケットプレイスではなく、データブローカーでもあるため、ますます多くの企業が顧客発見のためにAmazonに依存している。同様に、同社はAWS――独自のクラウドストレージサービス――を開発・提供する別種のサービスプロバイダーでもあり、私企業だけでなく政府もこれに依存している。さらに、同社は他のインハウスサービス――たとえば、物流――も構築しており、フェデックス(FedEx)やUPSといった物流大手が早晩、Amazonの存在自体を脅威と見なすことも十二分に考えられる。

「多くの中小企業が、成功するにはこうした巨大プラットフォームに頼る以外にないと考えている」と、デジタル市場における知的財産権や競争に取り組むNPOパブリック・ナリッジ(Public Knowledge)の独禁法専門家シャーロット・スレイマン氏は説明する。「つまり、そうした中小企業が巨大プラットフォームを離れることは非現実的な話であり、彼らはほかに選択肢がないと感じている」。

もっとも対応が急がれる懸案事項のひとつが、いわゆる「最恵国(most favored nation)」プライシングだ。これは簡単に言うと、ある企業が顧客に対し、自らに優遇価格を与えることを契約的に強いる状態を指す。2018年、米立法府はAmazonに対し、サードパーティーセラーにほかのプラットフォームで同様の商品をAmazonよりも低価格で販売することを禁ずる契約締結の強要に関して、質問状を送った。

「同様の商品をAmazonよりもウォルマート(Walmart)で安く販売するベンダーに対するAmazonの懲罰は、独禁法違反の事例になりうる」と、経済関連の訴訟/コンサルティングに精通するイーコン・ワン・リサーチ(Econ One Research)のマネージングディレクターにして、ジョージ・ワシントン大学インスティトュート・オブ・パブリック・ポリシーのシニアフェロー、ハル・シンガー氏は、eメールでの質問に答えた。

この反競争的と疑わしき部分をAmazonは自覚したと思われ、今年3月にサードパーティーセラーとの契約を改訂した。ただし、姿勢自体を改めたわけではなく、強大な価格決定力を別の方法で行使しようとしている。たとえば、8月第2週のブルームバーグ(Bloomberg)の報道によれば、Amazonはほかのプラットフォームに名を連ねるセラーを精査し、価格を上げなければ、検索順位といった恩恵を受けられなくなる恐れがある旨を、彼らに通告している。

独禁法違反以外に手はないのか?

Amazonへの苦情の多くはしかし、独禁法違反の立証には不十分だと見る学者もいる。たとえばシンガー氏は「簡潔に言えば、独禁法とは一企業が門戸を閉ざすことを嫌い、自社が提供するもの(この場合は商品)の利益のための差別行為を禁じるものである」と書き、Amazonの場合は自身の商品を自身のプラットフォームで優遇しているため、反競争的行為防止を訴える者にしてみれば、悪夢のような存在だと指摘している。

独禁法に詳しい学者ダイナ・スリニヴァサーン氏もこれに同意する。「Amazonの行為が現行の経済理論において実質的に不適切か否かは、私にも定かでない。それよりも、Googleがデジタル広告市場で行なっていることや、Facebookがソーシャルメディア市場で行なっていることのほうが、独禁法違反の調査対象となる可能性が高い」。

スレイマン氏が指摘するとおり、Amazonの反競争的行為はひとつに絞れない。つまり、翻ってみれば、採るべき道は多数あるとも考えられる。価格統制以外にも、フェイクレビューやAmazon’s Choiceの不透明性に関するさまざまな問題があり、これらは同社が特定商品を優遇している可能性を示唆している。「きわめて深刻な問題が複数存在する」と、スレイマン氏。「これらの問題をすべて独禁法違反論だけで解決できるか否かは定かでない」。

その代わり、パブリック・ナリッジ――および米立法府――はこれら巨大テック企業を標的にする新たな法令制定の必要性を訴えている。たとえば、プラットフォームも所有する企業が自社商品を優遇することを禁ずる被差別的基準の制定を求める者もいる。Amazonの場合、これはつまり、マーケットプレイスで自社アイテムを優遇できなくなることを意味する。また、Googleも自社商品を優遇する検索結果を出せなくなる。「これはたんにプラットフォーム上の競争の確保に留まらない」と、スレイマン氏は続ける。「プラットフォーム上の競争が可能な状態の確保も意味する」。

シンガー氏も考えを同じくし、「差別云々という切り口で独禁法違反を訴えても、負け戦の可能性が高い。より優れた対処法には、独禁法とは別の非差別的法令の利用が有効と考える」と書いている。これはつまり、反独禁法的論理でAmazonに勝利するには、他プラットフォームのセラーに対する彼らの価格統制術に焦点を合わせるのが有効な手段であり、逆に言えば、Amazonのプラットフォームそのものを打ち砕くには、それとはまた別の有効な法令を探すしかない、ということになる。

まとめると、Amazonがベンダー、小売競合他社、消費者を潜在的に締めつけ、苦しめるあらゆる手法が次々に明るみに出ていることに疑いの余地はない。批評家勢も根本的なレベルでの対処が必要な複数の問題が存在すると述べている。「前進のための最善策を採るには、我々に使えるあらゆるツールを利用するしかないと考える」と、スレイマン氏は述べている。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)