日々進化する商品宅配システムだが、その未来は消費者のガレージにあるかもしれない。先週Amazonは、イン・ガレージ・デリバリー(In-Garage Delivery)ネットワークを全米4000都市に拡大すると発表した。2019年に開始したこのプログラムだが、これによって全国規模に拡大したことになる。
日々進化する商品宅配システムだが、その未来は消費者のガレージにあるかもしれない。
先週Amazonは、イン・ガレージ・デリバリー(In-Garage Delivery)ネットワークを全米4000都市に拡大すると発表した。2019年に開始したこのプログラムだが、これによって全国規模に拡大したことになる。
イン・ガレージ・デリバリーは、より大規模なPrimeメンバー向けのサービス、キー・バイ・アマゾン(Key by Amazon)の一部である。キー・バイ・アマゾンは事前に承認された配達人が顧客の車や玄関、ガレージのドアを開け、荷物をなかに入れることができるというものだ。しかし、Amazonが「家庭内配達」を先導している一方で、ウォルマート(Walmart)も遅れを取っていない。昨年以来、ウォルマートは自社のインホーム・デリバリー(InHome Delivery)システムをテストしてきたが、これにはいくつかの追加サービスが含まれている。配達人が食料品を冷蔵庫に入れ、薬を常備薬の棚に入れ、自宅内に置かれた返品アイテムを回収するところまでしてくれる。またAmazonと同じように、ウォルマートはガレージへの配送にも対応している。
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ウォルマートとAmazonが家庭内配達システムの拡大を競い合っているのは、オンラインでの買い物をよりシンプルにするためだ。両社とも、家庭内やガレージへの配送オプションを提供することが、消費者にとっての総合的な価値を高めることになると考えている。消費者が楽になれば楽になるほど、Amazonプライムやウォルマート+(Walmart+)といった有料サービスがより魅力的に感じられるからだ。しかし、もっと目立たないメリットもある。家庭内配達プログラムは、両社がスマートホーム市場での存在感を拡大する、あるいはローンチする道を開くかもしれない。
スマート・ロックにおける現状とは
パークス・アソシエイツ(Parks Associates)でスマートホーム製品を研究しているブラッド・ラッセル氏によると、スマート・ロック、スマート・ガレージドア・オープナー、スマート・ビデオドアベルなど、家庭内やガレージへの配送に必要なスマートホーム製品はまだ比較的ニッチな存在だという。これらの製品購入はまだ、スマートホームに熱心なファンのあいだに集中している。「(家庭玄関の)スマート・ロックはまだ劇的な増加を見せていない」と、彼は述べた。しかし、家庭内配達ネットワークが拡大するにつれ、状況は変わり始めているかもしれない。ラッセル氏によると、家庭内やガレージへの配送は「ビデオカメラ、屋外カメラ、スマート・ロックの普及を促進する大きな流れだ」という。
通常の鍵を使った玄関やガレージのままでは、家庭内またはガレージ配達を利用することができないのが、その主な理由となっている。Amazonとウォルマートはどちらも、顧客がサービスを利用するためにスマート・ロックやガレージ扉の開閉を行うスマート製品(スマート・ガレージドア・オープナー)を購入するよう求めている。
ウォルマートもAmazonも、特定のスマートホーム・ブランドを顧客に勧めている。ほとんどの場合、Amazonはチャンバーレイン・グループ(Chamberlain Group)によるチャンバーレイン(Chamberlain)とリフトマスター(LiftMaster)のスマート・ガレージドア・オープナーとスマート・ロックを購入するように顧客に勧めている。Amazonはチャンバーレイン・グループに出資していないが、同社の製品はAmazonクラウドカム(Cloud Cam)のようなAmazonのスマート製品と統合することができる。ほかにも、Amazonは家庭内配達に併せてリング(Ring)カメラを宣伝している。Amazonのリング・カメラは、家庭内に入る配達人を監視するひとつの手段として使える、と同社は述べる。
Amazonが先行するスマートホーム
ウォルマートと比較すると、Amazonはスマートホーム技術の世界では、はるかに大きな存在となっている。Amazonは、ファイヤーTVキューブ(Fire TV Cube)やアレクサ(Alexa)搭載のスマートスピーカーなどスマートホーム製品を次々とリリースしており、今のところ市場でもっとも継続的に取り組む企業となっている。これらの製品はAmazonでのショッピングや配送とシームレスに統合できるように設計されている。一方のウォルマートは今のところ、Amazonと同じ機能を導入するために主に他企業プロダクトとのパートナーシップに頼っている。同社はGoogleと協力して、顧客がGoogleアシスタント(Google Assistant)を通じてウォルマートの食料品を注文できるようにした。
しかしウォルマートも、スマートホーム市場参入への小さな一歩を踏み出している。昨年10月、ピッツバーグ(ペンシルバニア州)、ベロビーチ(フロリダ州)、カンザスシティ(ミズーリ州)の3箇所でインホーム・デリバリープログラムのテストを開始すると同時に、スマートホーム企業でありレベル・ホーム(Level Home)への大規模な投資を発表した。レベル・ホームはウォルマートと協力してスマートロック製品「レベル・ロック(Level Lock)」を開発した会社だ。ウォルマートのインホーム・デリバリーを利用するためには、レベルロックを50ドルの割引価格で購入することが必須となっている。それに加えて利用者はインホーム・デリバリーの通常月額料金20ドルを支払う。
この投資は、必ずしもウォルマートによるスマートホーム分野へのより大きな参入を意味するわけではないが、業界の注目を集めている。「これは、ウォルマートが配送ビジネスのハードウェア面に進出する最初の一歩かもしれない」とラッセル氏は述べたが、現時点ではあくまでその可能性があるだけだ、と付け加えた。
スマートホーム技術への関心を高める
より多くの小売業者がオンライン配送インフラを構築するにつれ、家庭内配達やガレージ配達の人気は爆発的に高まるだろう。そして、特定の配送サービスを特定のスマート・ガレージドア・オープナーと抱き合わせることは一般的になるかもしれない。同様の取り組みをしているのはAmazonとウォルマートだけではない。メイシーズ(Macy’s)、ベストバイ(Best Buy)、ブルーミングデール(Bloomingdale)、ペットスマート(Pet Smart)はいずれもスマート・ロックのメーカーであるオーガスト(August)と提携して、一定の範囲で家庭内配達を提供している。
Amazonのパートナーであるチェンバーレイン・グループで配送サービスを統括するタイラー・レンザック氏は、これらの提携がスマートホーム技術への関心を高めることになると期待している。「スマートホーム分野は長い間、本格的な普及に苦戦してきた」と、彼は述べる。「全体としては、宅配における(スマートホーム技術の)使用例は今後増える一方だと私は考えており、将来、より多くの企業が(スマートホーム分野の)企業と提携するだろうと期待している」。
これらの小売業者のなかから、スマートホーム製品の自社開発に手を出す企業が出てきてもおかしくはない。自社スマートホーム製品開発が、消費者に対してさらに差別化を図るための手段として捉えられるかもしれない。「ウォルマートがより手頃な価格のスマート製品の開発販売に参入すれば面白くなるだろう。もし私がウォルマートなら、ハイエンドではなくローエンド市場に参入するだろう」とラッセル氏は語った。
[原文:Why Walmart and Amazon are battling over your garage door]
Michael Waters(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)