リセールプラットフォームのビジネスは、セラーがいなければ成り立たない。リセールアプリのポッシュマーク(Poshmark)がセラーを支援するファンドを立ち上げ、インフラ構築を進めているのはそのためだ。
リセールプラットフォームのビジネスは、セラーがいなければ成り立たない。リセールアプリのポッシュマーク(Poshmark)がセラーを支援するファンドを立ち上げ、インフラ構築を進めているのはそのためだ。
ポッシュマークは7月1日、「ハート&ハッスル・コミュニティファンド(Heart & Hustle Community Fund)」と呼ばれる同ファンドの第2ラウンドを開始し、条件を満たすセラーからの応募受付を開始した。同社はこれを含む4回のラウンドで、合わせて50万ドル(約5500万円)の資金を提供する予定だ。具体的には、3カ月ごとに実施する各ラウンドで、12人のセラーに5000ドル(約55万円)、130人のセラーに500ドル(約5万5000円)の資金を提供する。また、支援金に加え、ほかのセラーとともに非公開のDiscordグループに参加する機会を提供したり、グループの関心に基づいて開催される、プレゼンテーションやポッシュマークチームとのワーキングセッションに招待したりしている。
このファンドには、新しいセラーも長年活動しているセラーも同様に応募できるが、5000ドルの資金提供を受けるには少なくとも125件の販売実績が、500ドル(約5万5000円)資金提供を受けるには少なくとも10件の販売実績が必要だ。また、評価が4.5ポイント以上あることや、平均出荷日数が3日未満であることも条件となる。
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ブランド各社がインフルエンサーをマーケティング戦略の柱に据えるなか、大手ソーシャルメディアプラットフォームはこの数カ月間、インフルエンサーの獲得と維持にしのぎを削ってきた。ピンタレスト(Pinterest)、Snapchat、YouTubeといった企業が独自のクリエイターファンドを立ち上げたのも、この流れに沿った動きだ。そして、かなり規模が小さいとはいえ、ポッシュマークも同様のアプローチを採っているようだ。パンデミックのあいだにリセールプラットフォームの人気が拡大し、セラーの選択肢が増えたことから、プラットフォーム各社はセラーのロイヤルティを維持する取り組みに乗り出している。
「マーケットプレイスを利用するセラーのほとんどは、複数のマーケットプレイスで販売を行っている」と、フォレスター(Forrester)でバイスプレジデント兼主席アナリストを務めるスチャリタ・コダリ氏はいう。「買い手の獲得も重要だが、売り手がいなければ購買を促すことができない」。
囲い込み戦略の一環
今回のポッシュマークの動きは、買い手と売り手の囲い込みを図る同社の取り組みの最新事例だ。1月の上場以来、同社はこうした活動を続けている。「我々の第1の戦略は、製品のイノベーションに注力し、ユーザー数の維持とGMV(総取引額)の拡大に欠かせないユーザーエンゲージメントを促進し続けることだ」と、ポッシュマークのCEOであるマニッシュ・チャンドラ氏は、5月に行われた第1四半期決算発表の場で語っていた。
その活動の一環として、ポッシュマークは動画出品や配送料割引といった機能を2021年第1四半期に導入している。広報担当者によれば、同社のアクティブセラー数は2020年9月の時点で450万人だった(ただし、その後の数字については明らかにしていない)。また、アクティブバイヤー数は2021年第1四半期に670万人となり、前年同期比で18%増加したと報告している。一方、中古衣料を手がけるスレッドアップ(thredUP)が第1四半期決算の発表時に報告したアクティブバイヤー数は、129万人だった。
なお、ポッシュマークがファンドの第2ラウンドをスタートしたのは、大手マーケットプレイスのエッツィ(Etsy)が、英国でファッション製品のリセールマーケットプレイスを手がけるデポップ(Depop)を買収すると発表してから間もないタイミングでもあった。「我々は、エッツィの経営陣と彼らが築き上げてきたものに対して大きな敬意を抱いており、同社によるデポップの買収は、リセール分野に巨大な潜在市場があることの証明だと捉えている」と、ポッシュマークの広報担当者は声明で述べている。「我々のリセール事業とソーシャルマーケットプレイスはまだ成長の初期段階だが、(市場には)複数の勝者が存在する余地があると確信している」。
「事業拡大の余地が生まれた」
ウィスコンシン州ミルウォーキーに住むペイジ・ウォルター氏は、最近になってポッシュマークの支援金を獲得したセラーのひとりだ。同氏はパンデミックに見舞われた昨年3月、自分と母親の衣類を処分して少しでもお金を稼ごうと、ポッシュマークで販売を開始した。当初の目標は、月に500ドル(約5万5000円)程度を稼いで家賃を賄うことだったという。
ところが、売上が「雪だるま式に増えた」結果、いまでは節約を続けつつ衣類の販売を行うことで、毎月平均1000ドル(約11万円)の利益を得ているとウォルター氏は話す。
ウォルター氏はこの支援金を、企業設立に向けた書類の作成、写真撮影用の新しい機材や環境に優しい梱包資材の購入、在庫の拡充などに当てている。また、配送用のラベル印刷機も購入する計画だ。
「この支援金のおかげで、事業を拡大する余地が生まれた」と、ウォルター氏は説明する。同氏は「社会的交流を保つために」バーテンダーもしているが、これは副業のようなものだという。いまではポッシュマークでの販売が、同氏のフルタイムの仕事になっている。
40の州から600件以上の応募
ポッシュマークでコミュニティ担当シニアバイスプレジデントを務めるリアン・チェイ氏によると、1回目のラウンドの募集には、40の州から600件以上の応募があったという。なお、応募者の年齢は18歳~70歳だった。
ポッシュマークは、今年の秋と冬にも資金提供ラウンドの開催を計画している。「ファンドを設立するにあたって、ポッシュマークは条件を満たすセラーに複数の応募機会を提供したいと考えている」と、チェイ氏は電子メールで述べている。「そうすれば、ある期間に条件を満たしていなかった販売者でも、別の期間に応募できる機会が常に得られる」。
[原文:Why Poshmark started its own seller fund to support loyal platform users]
ERIKA WHELESS(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:村上莞)