Metaは、同社のメタバース・プラットフォーム「ホライズン」に数十億ドルを投資して、ロブロックスやフォートナイト・クリエイティブといったコミュニティのクリエイターエコノミーを自分たちのプラットフォームでも再現しようとしている。興味を持つブランドも存在するが、ユーザーはまだ少なくとも大量には訪れていない。
Metaは、同社のメタバース・プラットフォーム「ホライズン(Horizon)」に数十億ドルを投資して、ロブロックス(Roblox)やフォートナイト・クリエイティブ(Fortnite Creative)といったコミュニティのクリエイターエコノミーを自分たちのプラットフォームでも再現しようとしている。同社が掲げる夢に興味をそそられ、ブランドたちやホライズンのクリエイターたちはその世界での構築を続けているが、ユーザーはまだ少なくとも大量には訪れていない。
かつてFacebookとして知られていたMetaだが、同社にとってメタバース開発は最優先事項だ。しかし、その目標を達成するにはまだ初期段階にある。現在、前述のライバルたちは、内部で有機的に発展したクリエイターエコノミーのおかげで競争をリードしている。マーケターらはすでに、ロブロックスやフォートナイトのクリエイターに数万ドルを支払って、カスタムブランドの仮想体験を構築している。
トラフィックの少なさをいかに補うか
ロブロックスのようなプラットフォームたちは「子供向けゲーム」として何年も過ごした後にようやく、メタバースマーケティングチャネルとしての転身に成功した。しかしMetaはそのような成長ステージをスキップして、ホライズンに最初から同じようなブランドクリエイターエコシステムを構築する計画を立てている。
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「ロブロックスが偶然現状のモデルに到達したのか、それとも計画されていたのかはわからない」と語るのは、TPG企業ミラダ・スタジオス(Mirada Studios)でイノベーション部門を率いるメタバース・マーケティングの専門家のマーゴット・ロッド氏だ。「これがすべて計画されたものだとしたら、それは素晴らしい。彼らは絶対的な天才だったことになる。しかし、私はその一部は偶然に起こったことだと思うし、どうであったにせよいまではほかの企業が参入する際の参考になりつつある」。
ホライズンにとっての問題の1つは、同社のユーザートラフィックが競合他社よりもはるかに少ないことだ。ホライズン・ワールド(Horizon Worlds)のクリエイター向けスタジオ、ヴィドユー(Vidyuu)のファウンダーでクリエイティブディレクターのアレックス・チャンドラー氏は、「本当に成功した企画で、1万回のユーザー訪問がおおよその最大数になっている」と語る。「このプラットフォーム自体には30万から50万人の訪問者あるいはユーザーしかいない」。
逆にロブロックスにおいてチポトレ(Chipotle)が実施した「ブーリトー・メイズ(Boorito Maze)」アクティベーションの場合、昨年はわずか数分の間に3万人以上のユーザーがアクセスを試みて、サービスがクラッシュしそうになった。
ホライズンのトラフィックは少ないが、ブランドはホライズン・ワールズ・ウェンディバース(Horizon Worlds Wendyverse)などの派手なVRブランドのアクティベーションから、ツイートやインスタグラムの投稿、YouTubeのビデオなどで何百万ものインプレッションを得ることができる。ホライズンの体験は、メタのクエスト(Quest)ヘッドセットを使用している個人に限定されるが、これらの体験を宣伝するソーシャルコンテンツは、より広範にアクセス可能だ。
制作ツールはクリエイターから好評
「プラットフォーム全体で、我々の企画がもっともトラフィックの多いものに含まれたことは把握しており、それは非常に素晴らしいことだ」とウェンディーズ(Wendy’s)のメディア、ソーシャル、パートナーシップ担当バイスプレジデントのジミー・ベネット氏は語った。「私たちにとってはこのコンテンツを拡張し、バーチャルワールドでの画像を使って、ほかのプラットフォームにも提供することが重要だ。これによって、ホライズン・ワールズにまだ参加してすらいない人々の間で、非常に多くのエンゲージメントと関心をかき立てることができる」。
ホライズンのトラフィックが比較的少ないのは、メタがクリエイターのサポートをおざなりにしているからではない。2021年10月に同社は、クリエイターたちがこのプラットホームの使い方を学べるように、1000万ドルのファンドを立ち上げた。
経験豊富なホライズンのデベロッパーたちが米DIGIDAYに語ったところによると、同プラットホームの制作ツールは競合他社よりも優れており、その理由のひとつは、ホライズンのVRインターフェイスがアンリアルエンジン(Unreal Engine)のような複雑なプログラムよりも操作しやすいことだという。
メディアモンクス(Media.Monks)のバーチャルワールド担当プロデューサーのティム・ウォーカー氏は言う。「コミュニティの中で早い時期に出会った人が一人いて、この人物が作った世界に私は非常に感銘を受けた。私は『上司があなたの履歴書を見たがってる』と伝えた。それで、電話でこの人物と話したが、彼は『自分にはこの分野の経験はまったくない』と言ったんだ」。それでも、彼の仕事に感銘を受けた同社はこの人物を雇うことにしたという。
クリエイターを「買収」すれば問題解決?
ホライズンがメタバースの一角を占めるようになのであれば、その拡張の遅れは議論の余地があるかもしれない。結局のところ、2012年にインスタグラムを買収して以来、Metaの戦略の核は買収(オーガニックな成長ではない)にあった。現在のメタバースのクリエイターたちは、フォートナイトやロブロックスで有名になっているが、Metaなら簡単に彼らにお金を払ってホライズンに参加してもらうことができるだろう。これは昨年、Facebookゲーミング(Facebook Gaming)の視聴者数を、ツイッチ(Twitch)の人気ストリーマーたちを呼び込むことで爆発的に増やしたことにも見てとれる。
メタがホライズンの開発に何十億ドルもの資金を注ぎ込み続けるなら、ホライズンのトラフィック数がロブロックスやフォートナイトに並ぶのも時間の問題かもしれない。過去10年間、Metaと頻繁に提携してきたウェンディーズ(Wendy’s)のようなブランドは、間違いなくこの可能性を信じている。ホライズン・ワールズ・ウェンディバースの最新拡張であるスパイシー・ナグ・アイランド(Spicy Nugg Island)は先日ローンチした。
「Metaは私たちの大きなメディアパートナーだ。私たちはFacebookやインスタグラムで広告を出してきた。彼らとは長年の関係がある」とベネット氏。「私たちは常に、関係を拡大するための創造的で新しい方法を探している」。
[原文:Why Meta’s Horizon platform is taking cues from metaverse activations in Roblox and Fortnite]
Alexander Leeh(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)