Googleは2020年7月、動画ショッピングプラットフォーム「ショップループ(Shoploop)」を発表した。短尺動画を配信し、簡便な購入操作でサービスインする予定と伝えられた。ローンチから半年以上が経つが、米DIGIDAYが話を聞いた業界関係者の反応は、口々にショップループの問題点を指摘する。
Googleは2020年7月、動画ショッピングプラットフォーム「ショップループ(Shoploop)」を発表した。TikTokのような短い動画を配信し、Amazon Liveと同程度の簡便な購入操作でサービスインする予定と伝えられた。
ローンチから半年以上が経つが、米DIGIDAYが話を聞いた業界関係者の反応は、口々にショップループの問題点を指摘する。現在ショップループの動画はGoogleショッピングから利用できる設計になっているが、使い勝手の悪さやバランスを欠いたコンテンツ、単純な売上不足といった課題が山積しており、魅力的なプラットフォームになっていないという。にもかかわらず、Googleは主要取引先にすら改修予定などの情報をまったく伝えていないようだと発表当初からショップループを取材する記者はいう。
競争力のない、未完成なアプリ
バイラルネーション(Viral Nation)のインフルエンサーマーケティング部門の事業開発責任者、ゲイブ・フェルドマン氏は「未完成なアプリで、競争力を発揮できる状態にない」と指摘する。
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サードパーティのマーケットプレイスの普及が進まず、無料化という思い切った手段にまで出たGoogleだが、いまだ功を奏していない。この失敗から、「消費者はショッパブルなコンテンツしかないプラットフォームを求めているわけではない」という教訓が見て取れる。確かにインスタグラムやTikTokは、コロナ禍によるオンラインショッピングブームにより大きな成長を遂げた。だが、それはソーシャルコマースとそれ以外のコンテンツのバランスがあってこそ成し得たものだ。実際、Amazonがインスタグラムを真似て始めたスパーク(Spark)は、両者のバランスを取り損ねて失敗に陥った。
インフルエンサーマーケティングエージェンシー(Influencer Marketing Agency)の創業者兼CCOのマディー・レイツ氏は「ショップループは、『ショッピング』がメインで、『ソーシャル』は二の次になっている」と指摘する。
「ほかのプラットフォームの方が良い」
ショップループの制作を担当したのは、Googleの社内製品インキュベーターのエリア120(Area 120)だ。エリア120は、ショップループのローンチにあたりインスタグラムのインフルエンサーと提携して、ノンフライヤーなどの調理器具から、アイライナーをはじめとする化粧品など、さまざまな新商品の開封動画を制作した。動画は90秒間で、目立つ位置に商品リンクが配されている。このリンクを通じ、インフルエンサーにはアフィリエイト料金が入る仕組みになっている(Googleにショップループの売上やユーザー数、インフルエンサー数について情報提供を求めたものの、回答は得られなかった)。
レイツ氏は「インフルエンサーマーケティングが効果的なのは、クリエイターとフォロワーが密接な関係を築き、コミュニティを構築したためだ」と語る。
フェルドマン氏は「インフルエンサーのオーディエンスがインスタグラムやTikTokユーザーにいる場合、インフルエンサーもほかのプラットフォームにわざわざ移ろうと考えない」と指摘する。「だからショップループは、これまでにない体験を、まずはインフルエンサーに提供しなければならなかった」。
実際、ショップループの使い勝手はブランドやインフルエンサーの求める水準にない。たとえば「フォロー」ボタンがなかったり、ブログやほかのSNSへのリンクを張れなかったり、連絡先情報を掲載できなかったりと、不便な点が多い。商品の売上を重視しすぎるあまり、クリエイターがオーディエンスとの関係構築にあたり必要とする要素がことごとく欠如している。後で見るために動画を一時保存する機能や、インフルエンサーを検索するといった機能もついていない。「ショップループのコンテンツは、購入意欲の高いユーザー向けだ。TikTokのような気軽に楽しめる感じや、ピンタレスト(Pinterest)のような刺激的な雰囲気がない」とフェルドマン氏は語る。
インフルエンサーマーケティングのデータベース企業、HYPRの創業者のジル・エイアル氏も「単純に、ほかのプラットフォームのほうが良い体験を提供している」と手厳しい。
前向きに捉えるインフルエンサーも
ショップループは現在、モバイルブラウザのGoogleショッピングに導入されている。うまく組み合わせればショップループの商品動画のコンセプトには将来性がある、と考えるインフルエンサーもいる。
「life_with_cam」のアカウント名でインスタグラムに1万5100人、TikTokに1万3500人のフォロワーを持つキャロライン・マティス氏もそのひとりだ。同氏は2020年10月、Googleからインスタグラムでショップループの提携について話を持ちかけられた。
「十分に知られるようになれば、インスタグラムやTikTokより成功する可能性があると思う」とマティス氏は語る。「動画コンテンツとレビューはこれからさらなるトレンドになっていく。写真より商品の内容について伝わりやすく、消費者へ有益な情報提供ができている。さらに商品リンクが動画内にきちんと表示されているから、買い物客にはうってつけだ」。
ただ、「プラットフォームが初期段階ということもあり、いまだショップループの手数料収入は得られていない」と最後に付け添えた。
ERIKA WHELESS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)