6月に実施されることが決まっている、Facebookに対するメディア・レイティング・カウンシル(Media Rating Council:MRC)の監査。そこにはいったい何がともなうのか? これをめぐり、両者のあいだで誤解が生じている。
6月に実施されることが決まっている、Facebookに対するメディア・レイティング・カウンシル(Media Rating Council:MRC)の監査。そこにはいったい何がともなうのか? これをめぐり、両者のあいだで誤解が生じている。
測定データの検証で業界が頼りにするMRCは、Facebookのコンテンツ収益化とブランドセーフティコントロールに関する監査を6月末に開始することをすでに決めている。ところが、MRCのCEO、ジョージ・アイビー氏も、Facebookの広報担当者も、Facebookはまだ、同社がグローバル・アライアンス・フォー・レスポンシブル・メディア(Global Alliance for Responsible Media:GARM)に提出する透明性レポートを、MRCが監査することに同意していないと述べている。GARMはブランドセーフティに関する測定データのイニシアティブで、ソーシャルメディアプラットフォームや世界の大手広告業界団体によるパートナーシップだ。
Facebookは、MRCがGARMに提出する透明性レポートデータに関する独自監査をすることにコミットしていると、米DIGIDAYは今年5月に報告している。これに先立ち、Facebookは2020年7月、同社がGARMのブランド・スータビリティ・フレームワーク(Brand Suitability Framework)を順守しているかをMRCが評価することを許可すると発表した。Facebookはこの決定を「Facebookによる公民権監査を通して集められた、公民権団体からのフィードバックの直接的な結果」と表現した。しかし、「そこにあいまいさが生じている」と、アイビー氏は語る。
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そのあいまいさの中心にあるのは、GARMが認可するブランドセーフティの標準だ。Facebookをはじめとするプラットフォーム各社は、GARMの「アグリゲーテッド・メジャーメント・レポート(Aggregated Measurement Report)」のためのブランドセーフティに関する測定データを提供する際に、この標準を使用する。4月に発表されたその最初のレポートは、プラットフォーム各社が自己報告したデータのみに基づくものだった。ひとたびGARMによって正式に承認されれば、GARMに提供されるデータのフォーマットの標準は、MRCが実施するブランドセーフティ監査に取り入れられることになる。
だが、GARMはまだこの標準をまとめておらず、それが問題となっている。
アイビー氏によれば、この標準(FacebookがGARMに提出する透明性レポートにも適用される)が最終的にはMRCによる監査に取り入れられるということを、Facebookは認識していなかったという。GARMがまとめ上げれば、この標準が監査に取り入れられることをFacebookは認識している。そうMRCは思っていたと、同氏は述べる。この標準がいつまとめ上げられるのかは、定かではない。GARMの関係者数名にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
「この点をFacebookは認識していなかった」とアイビー氏は語る。「そして彼らは、自分たちは透明性レポートの監査には同意していないと回答してきた」。
対照的にFacebookは、この標準が最終的に取り入れられることは理解しているが、まだ非公式なものに同意するわけにはいかないと述べている。この標準が完成した際には、Facebookがすでに同意しているMRCの監査にそれを取り入れることは、さほど難しくなく、「むしろ容易だろう」と、アイビー氏は語る。今後、プラットフォーム各社がGARMに提供するデータの言語やフォーマットなどに変更が加えられる見込みだという。
MRCが行う透明性レポートの監査。その標準の部分に関しては、たしかにFacebookは同意していない。だが、その他の点については、同社はGARMにコミットしていると主張している。たとえば、Facebookの広報担当者は5月27日、コンテンツ収益化とブランドセーフティコントロールに関するMRCの監査は、「GARMに対するFacebookのコミットメントの一部」であると、米DIGIDAYに述べている。FacebookがMRCの監査に対するコミットメントを発表した際、インストリーム(In-stream)やインスタント記事(Instant Articles)、Facebookオーディエンスネットワーク(Facebook Audience Network)といったパブリッシャーコンテンツ内で表示される広告に対するブランドセーフティコントロールの評価などがそこには含まれるが、これに限定されるものではない、と同社は述べている。「コンテンツ収益化ポリシーの開発・実施、およびこれらのポリシーが、4A’s/GARMのブランド・スータビリティ・フレームワークをどのように実行しているのか、MRCのスタンダード・フォー・ブランドセーフティ(Standards for Brand Safety)に準拠しているのかといった評価」も含まれるという。
署名なき合意
それでもMRCは、Facebookのブランドセーフティコントロールに対する監査を6月末に実施する考えを変えていない。しかし、アイビー氏によれば、まだ両者のあいだで、この監査の実施に関する正式な合意書にサインは交わされていないという。現在、メールのやりとりのなかで合意が取りつけられており、まもなく正式な文書にする作業が完了するという。ただし、GARMが認可する標準がこの監査に取り入れられるか否かについては、依然として不明だ。
「FacebookがMRCの監査を望むのであれば、GARMが定める透明性レポートの標準に基づく監査を受けなければならない」と、アイビー氏は語る。「我々は経験から、プラットフォーム各社が監査について行う公式発表を差し引いて考えるようにしている。この監査に付随する事柄の詳細を明確にする正式な合意。それに対するコミットメントが文書化されるまでは、合意に達することはないと考えている。先走って合意を引き合いに出せば、そこにできるのは、プラットフォーム側の解釈や、その後のポジションの変化に左右される、あまりにも巨大なグレーゾーンだ」。
別の監査
Facebookはこの混沌とした状況をさらにわかりにくくするリスクを承知で、GARMのレポートに提供するデータの監査を別に実施する計画を立てている。
前述のFacebook広報担当者によれば、EY(アーンスト・アンド・ヤング)が、Facebookが独自に発表したコンテンツエンフォースメントと標準に関するレポートを監査することになっているという。そのデータは、FacebookがGARMのプラットフォーム測定レポートに提供するものと同じだという。
だがそこには、何十年にもわたって測定データを監視してきたMRC、あらゆるメディアと測定データの信頼できる権威者として、広告主やエージェンシーが頼りにしてきたMRCの姿はない。
[原文:Why Facebook actually has not agreed to everything MRC requires in its brand safety audit]
KATE KAYE(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)