にしたんクリニックといえば、郷ひろみ、錦野旦、船越英一郎、黒木瞳といった豪華キャスティングと「にしたん」を連呼するユニークな広告が毎回話題を呼ぶ。 TVCMやOOHを使った大規模プロモーションとともに強烈なインパクトを残 […]
にしたんクリニックといえば、郷ひろみ、錦野旦、船越英一郎、黒木瞳といった豪華キャスティングと「にしたん」を連呼するユニークな広告が毎回話題を呼ぶ。
TVCMやOOHを使った大規模プロモーションとともに強烈なインパクトを残すが、そこには、知名度向上に特化するという一貫した狙いがある。シンプルかつわかりやすさを追求したクリエイティブも、こうした効果を見据えてのことだという。
あらゆるメディアに一斉に出稿し、まずは知ってもらう。タクシー広告の活用もそのひとつだ。利用者の属性や視聴スタイルにおいて他メディアとは異なる特性を持つタクシー広告に着目し、なかでも、タクシー広告メディアGROWTH*には、継続的に広告を出しているという。ターゲットとする顧客層に対して費用対効果が高く、副次的効果も期待できるというのがその理由だ。
では、独自のクリエイティブの価値を最大化するため、GROWTHをどのように活用し、どのような効果を上げているのか。にしたんクリニックの運営支援を行うエクスコムグローバル代表の西村誠司氏に、にしたんクリニックのマーケティング戦略と、そのなかにおけるタクシー広告やGROWTHの魅力について聞いた。
*ニューステクノロジー社が運営する東京都内最大級のタクシーサイネージメディア。都内でサイネージメディアを導入する法人タクシー2万7576台(平成30年3月末時点関東運輸局調べ)の約45%をカバー。東京23区内では月間770万人のタクシー利用者に広告や情報コンテンツなどを配信している。2022年10月にはサイズや機能性を向上した新型サイネージも導入した。
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――「にしたんクリニック」の広告といえば、著名人を起用し「にしたん」を連呼するユニークなクリエイティブが印象的です。にしたんクリニックの広告の狙いは?
まずは「にしたんクリニック」という名前だけを覚えてもらうということが、一連のCMの目的です。人はどれほどいい商品であれ「名前を聞いたことがない商品」を簡単には選びません。しかし、名前を知っていれば、選択肢のひとつにしてもらえます。マーケティングで大事なのはとにかく知ってもらうこと。1に知名度、2に知名度、3も4も5も全部知名度。「にしたんクリニック」のCMは単純に見えるかもしれませんが、知名度向上に特化したマーケティング戦略なのです。
――コロナ禍が始まってすぐにPCR検査事業を立ち上げ、CMの放送が始まりました。どのようなきっかけだったのでしょうか?
2020年のコロナ禍により、当社は大きな危機に直面しました。世界各国で入国制限や移動の制限をかける動きが広がり、日本の海外旅行客がほぼゼロになってしまったのです。その影響で、当社の主力事業であった海外用Wi-Fiルーターレンタルサービス「イモトのWi-Fi」の需要が激減し、会社の売上が98%減まで落ち込みました。その危機を脱するために立ち上げたのが、にしたんクリニックのPCR検査事業でした。2020年7月20日にPCR事業を思いつき、8月24日にサービス開始、9月28日にはテレビCMの放送を開始しました。テレビCMの効果により、当社は最短で最大の収益を上げることができました。
――独自のクリエイティブには、どういったこだわりがあり、どういった効果を期待しているのでしょうか?
私が基本的に大切にしているのは、かっこよさよりインパクトです。インパクトを強めるには、わかりやすくて印象に残るキーワードが必要です。幼児からお年寄りまでに伝わる「わかりやすさ」を追求しています。
にしたんクリニックのCM「サスペンスドラマ篇」。船越英一郎や黒木瞳など豪華キャストと、「にしたん」という言葉の連呼が強烈なインパクトを残す
「にしたん」という名前も、わかりやすさとインパクト重視で考えました。小さな子どもでも「にしたん」であれば、恐らくすぐに口にしてもらえます。「たん」というのは幼児言葉であるため、滑舌的にも言いやすいからです。「にしたんクリニック」と聞くと、多くの人は「えっ、何?」と疑問を感じます。一方、「西村クリニック」には何のひっかかりも感じないでしょう。ギャップを感じさせる手法は、当社のマーケティング戦略上、重要なテクニックです。「えっ、何?」と思わせられれば、マーケティング的にはほぼ成功だと言えます。
同様に「言いやすい」「覚えやすい」ことも大事です。「♪たんたん、た~ん、にしたん、た~ん」というのはリズムがいいでしょう? テレビCMを見た子どもはきっと真似したくなる。子どもが家で何度も真似していれば、親もそのうち自然と覚えて、知名度向上につながるというわけです。
――マーケティングのKPIは知名度だけですか?
はい。知名度だけです。「知っているか、知らないか」という、これ以上わかりやすい指標があるでしょうか。今の時代、ニーズが多様化しているため、すべての人の支持を集めることはほぼ不可能です。100%のうちの5%でも10%でもいい。熱烈なファンになってもらえれば、そのほかの人から嫌われても構わないと割り切っています。
西村 誠司/エクスコムグローバル株式会社代表取締役社長。1970年愛知県生まれ。名古屋市立大卒。93年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。95年インターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立し、社長に就任。97年海外用レンタル携帯電話事業をスタート。2012年海外用Wi-Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」ブランドの提供を開始。19年メディカル支援事業をスタートし「にしたんクリニック」開院を支援。20年、コロナ禍での市場ニーズを察知し、わずか数カ月でPCR検査サービスを実現した。22年には不妊治療専門クリニック「にしたんARTクリニック」を開院、不妊治療領域に参入。
――KPIの捉え方が非常にシンプルです。その理由があれば教えてください。
複数のKPIを用意しても、結局どれを追えばいいのかわからなくなり、非効率です。マーケティングを単純化すると、認知数とコンバージョン率の掛け合わせが購買(コンバージョン)数になります。もちろん両方高められれば一番いいですが、コンバージョン率がゼロということはありませんし、認知度を向上させていけば、おのずとコンバージョン率も増えます。それならば、認知度だけに注力すればいい。
シンプルなKPIは、社内の戦略設計においても重要です。部下に対する仕事の指示にしても、極めてわかりやすい。すべてのゴールを知名度にしておけば、戦略と戦術が明確化され、効率的に動けるようになります。
私にとって、マーケティングとは「知名度を高めること」に尽きます。商品や情報が溢れている現在、「知ってもらう」ことこそが最重要。一度やると決めたら「知ってもらう」ことに特化したわかりやすいクリエイティブを使い、あらゆるメディアに一斉に広告を出稿します。当社では、売上の20%を知名度向上のための広告費に使っています。
――タクシー広告に出稿する目的も、知名度向上なのでしょうか?
その一環です。当社は、テレビ、ラジオ、電車、OOH、ネット、X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、YouTube、そしてタクシーと、全方位で広告を出しています。
タクシー広告は、数あるタッチポイントのなかでも特徴のあるメディアです。CMキャンペーンを実施した前後に必ず接触者レポート(ブランドリフト調査)を行います。調査結果を見た限りでは、タクシー広告がほかの媒体に比べて、知名度をリフトアップする効率が特段にいいというわけではありませんが、タクシーに乗る人、タクシー広告を見る人は、ほかの広告の場合とは異なります。
私がタクシー広告を出稿する理由は、利用者の属性にあります。メディア関係者、特にテレビ関係者や芸能界のタレントの方々、そして高所得者層の人たちが、移動の手段としてタクシーをよく使っているからです。
タクシーCMが評判になると、CMがバラエティー番組で取り上げられたり、タレントさんのネタとして使われたりすることで、PRの二次効果、三次効果が発生します。実は8月3日、テレビ朝日の「テレビ千鳥」という番組で、「にしたんクリニック事件・犯人を捜すんじゃ!!」という企画が放送されました。通常、一般企業のテレビCMが番組1本分の企画になることはありません。全国ネットの30分番組を広告費に換算すると、マーケティング的に大変大きな価値があります。
番組の企画やお笑いのネタとして、CMを取り上げてもらうためには、番組の企画を担当するプロデューサーやディレクター、もしくはタレントの方たちに、CMの存在を知ってもらわないといけない。忙しい彼らにCMを見てもらい、強く印象づけるには、タクシー広告に繰り返し出稿することがもっとも効率がいいのです。
――番組で取り上げてもらうなど副次的効果を見据えて、クリエイティブの作り方に何か工夫をされていますか?
謎をちりばめて、考えたくなるような仕掛けを入れています。今回の「サスペンスドラマ篇」のCMは船越英一郎さんと黒木瞳さんが共演し、まるで本物のサスペンスドラマのように、福田麻貴さん(3時のヒロイン)が毒殺されたような演出になっていますが、犯人が誰なのかはまだわかりません。犯人は黒木さんなのか、かなでさん(3時のヒロイン)なのか、はたまた巡査としてカメオ出演している私・西村誠司なのか。考察する余地を残していることで、見た人がSNSで語りたくなったり、テレビ番組の企画として取り上げたくなるのです。
また、CMを作るときは、その時その時の単発ではなく、つながりを作り、次のCMが見たくなるような仕掛けも考えています。現在、次のCMとして「取り調べ篇」を制作しているのですが、そこで初めて犯人が明らかになります。野球のピッチングに例えるなら、毎回160キロのストレートを投げていると、相手の目が慣れてきて打たれてしまいます。何球か先まで配球を考え、緩急やコースの変化をつけることで、毎回見る人を驚かせることができるのです。
――タクシー広告を出稿するにあたって、GROWTHの魅力は何ですか?
タクシー広告のディスプレイは座席の目の前にあることから、つい見てしまいます。視認性も高い。それが一番大きな魅力です。GROWTHは昨年から画面のサイズが一回り大きくなったのもいいですね。最近、芸能関係の方とお話しする機会が増えているのですが、多くの方が「テレビCMと同様に、タクシーCMに出たい」というのです。先ほどお話ししたように、テレビ関係者の認知度が高いということではないでしょうか。
――GROWTHには継続的に出稿されているとのことですが、効果はいかがですか?
当社が狙っているターゲットに対しての知名度向上という点で、費用対効果が非常に高い。あらゆる媒体に全方位に出稿していますが、「タクシーでCM見たよ」と言っていただくことが頻繁にあります。
――ちなみにGROWTHのタクシー広告はどのような業種業界に向いていると思いますか?
ハイブランドやラグジュアリー、高級車、不動産の広告には向いているんじゃないでしょうか。富裕層向けの高単価の商品やサービスで、予算が潤沢な業界の広告はよさそうです。たとえば今、都心のとある場所に、大規模な高級シニアレジデンスが建設中です。タクシーでGROWTHを視聴している層の多くは、親の老後や介護についても検討し始めているでしょうから、そういった施設の広告はタクシー広告に向いていると思います。
――タクシー広告のクリエイティブでも、大事なポイントはテレビCMと同じでしょうか?
全く同じです。見る人は毎日数えきれないほどのCMに触れているため、何となくカッコいいCMを作っても、記憶には残らない。人間は皆、複雑なことを短い時間で記憶することはできません。シンプルでインパクトがあるCMであれば、誰でもわかるし、すぐに覚えられる。
メッセージをひとつに絞るのは、勇気がいることです。予算を多くかけているからと、訴求項目をたくさん盛り込んでしまう。しかし、テレビCMはわずか15秒です。企業名や商品・サービス名だけを繰り返し伝え、「えっ、何?」と気になった人に対しては、検索したときのために、詳しい説明内容を掲載したランディングページを用意しておくという二段構えにしておけばいいでしょう。マス広告、特にテレビCMやタクシー広告は、よりシンプルに、ブランドの刷り込みに特化した方がいいと思います。広告を作っている人は意識した方がいいでしょう。
――今後、にしたんクリニックで新たに試してみたいプロモーションはありますか?
今後も広告を出すごとに、見ている人を「えっ、何?」と驚かせるようなクリエイティブを作っていきたいです。にしたんクリニックの秋冬用CMは「音符編」です。「音符」とは何なのか、見ていただければわかりますが、非常に面白く仕上がりました。
――タクシー広告の活用方法として考えていることはありますか?
今までと変わりません。GROWTHでは、ECONOMY VIEW(10枠各30秒、掲載順8番目以降ランダム放映)で継続的に出稿し、新CMの公開タイミングなどでFIRST VIEW(1枠60秒、掲載順1位)で露出を強化するという方針です。
――タクシー広告を出稿したい、あるいはGROWTHを使ってみたい、と考えている広告主の方々に、タクシー広告の可能性、あるいは心得があれば教えていただけますか?
最速で最⼤の成果を上げたいなら、知名度に注⼒すべきです。知名度向上が最強のマーケティング戦略です。タクシーは利用する人たちの層が絞り込めていますし、視認性も高く、知名度を効率的に向上させられるという点で、私は強くおすすめします。今回お話ししたようなことをしっかり意識してクリエイティブを作れば、直接の視聴効果だけでなく、ほかのメディアで取り上げられるといった、二次的、三次的な波及効果があります。そこまでの広がりを考えると、非常に費用対効果が高く、出稿しない理由はないですね。教えなければよかったかな(笑)。
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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(内藤貴志)
Photo by 渡部幸和