Roblox(ロブロックス)は、若い層を取り込みたい伝統的な美容ブランドの注目を集めている。
メイベリン・ニューヨーク(Maybelline New York)は9月末、Robloxでバーチャル体験を開始し、ゲーム、バーチャルメイクアップルック、没入型スペースなどを提供した。6月には、フェンティビューティー(Fenty Beauty)がRobloxとコラボし、プレイヤーが製品を作ることができるバーチャル体験を同プラットフォーム上でリリースした。同月、エッセンス・メイクアップ(Essence Makeup)はRobloxで初のゲーム「Color Dare by Essence」をデビューさせた。
Robloxは13歳以下の子供に人気のメタバース・プラットフォームであり、利用者は、典型的な化粧品購入者層ではないかもしれない。しかし、多くの美容ブランドにとって、Robloxの魅力に抗うのは難しい。なぜなら、そのアクティブな利用者層と若年消費者との関連性があるからだ。Roblox創業者が5月に投稿したブログ記事によると、現在、ユーザーの55%以上が13歳以上だという。第2四半期決算では、Robloxのデイリーアクティブユーザー数は、前年同期比25%増の6550万人と報告した。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Roblox(ロブロックス)は、若い層を取り込みたい伝統的な美容ブランドの注目を集めている。
メイベリン・ニューヨーク(Maybelline New York)は9月末、Robloxでバーチャル体験を開始し、ゲーム、バーチャルメイクアップルック、没入型スペースなどを提供した。6月には、フェンティビューティー(Fenty Beauty)がRobloxとコラボし、プレイヤーが製品を作ることができるバーチャル体験を同プラットフォーム上でリリースした。同月、エッセンス・メイクアップ(Essence Makeup)はRobloxで初のゲーム「Color Dare by Essence」をデビューさせた。
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Robloxは13歳以下の子供に人気のメタバース・プラットフォームであり、利用者は、典型的な化粧品購入者層ではないかもしれない。しかし、多くの美容ブランドにとって、Robloxの魅力に抗うのは難しい。なぜなら、そのアクティブな利用者層と若年消費者との関連性があるからだ。Roblox創業者が5月に投稿したブログ記事によると、現在、ユーザーの55%以上が13歳以上だという。第2四半期決算では、Robloxのデイリーアクティブユーザー数が前年同期比25%増の6550万人だと報告した。
「将来の消費者」への投資
「このプラットフォームは、若い消費者の共感を呼んでいる」と話すのは、デジタル・コンサルタント会社CI&Tのリテール戦略ディレクター、メリッサ・ミンコウ氏。「そのような若い消費者は今、消費力を持ち、美容領域に対する認識と関心を持つようになりつつある」。
厳しい広告規制によって、ブランドが子どもたちにアピールするのは難しいことが多い。しかし、Robloxに参加することで、ブランドは、あからさまに自社製品を宣伝することなく、若年層に自社を紹介することができるのだ。
ミンコウ氏は、「将来の消費者への投資といえる。そして、そのような若い年齢層にアプローチすることで、購買の早い段階で彼らのロイヤルティを獲得することができるのだ」と話す。
Robloxのコミュニティもまた、高い関心を集めている。アクセサリー小売店クレアーズ(Claire’s)のRobloxゲームであるシマービル(Shimmerville)は、2月の月間訪問者数が29万人で、8月は6万7000人だった。このゲームのユーザー満足度は92%だという。
コミュニティの活用が進む
メイベリンのようなブランドは、Robloxを活用してプラットフォーム上のさまざまなコミュニティと関わっている。Robloxでの最新のブランドキャンペーンでは、バーチャルDJのカイ(Kai)と提携し、同プラットフォームの「活気ある音楽コミュニティ」を特にターゲットにしたという。ユーザーはカイの最新曲をリミックスしたり、彼女のリスニング・パーティーに参加することができる。さらにこのキャンペーンは、Robloxの「メイベリン・ニューヨーク・ラウンジ」で、メイベリンの「ファルシス・シュールリアル・マスカラ」を使って落書きをするなど、Robloxユーザーに仮想空間でユニークな方法でメイベリンの製品を試すことを奨励している。
メイベリン・ニューヨークのデジタル担当副社長であるエミリー・アーケルズ氏はプレスリリースNで、「メイベリンは、デジタル空間をリードするメイクアップブランドとして、自己表現を促進する新しくエキサイティングな体験を消費者に提供することを約束します」と述べている。
また、ブランドの価値や理念を強調するために、同プラットフォームを利用しているユーザーもいる。たとえば、Roblox上でエッセンス・メイクアップのゲーム「カラー・デア・バイ・エッセンス(Color Dare by Essence)」の目的を達成したユーザーは、エッセンスとLGBTQIA+エージェンシーであるザ・ミックス(The Mixx)が選んだ2つの慈善団体への寄付金を獲得できる。エッセンス・メイクアップと同様、ニックス・プロフェッショナル・メイクアップ(Nyx Professional Makeup)も今年のプライド月間中にRobloxでキャンペーンを開始し、LGBTQIA+ゲーマーへのいじめ撲滅に焦点を当てた。
カスタマー・エクスペリエンス・プラットフォーム、Emplifi(エンプリファイ)のチーフ・グロース・オフィサーであるビジャヤンタ・グプタ氏は、ブランドはこのプラットフォームを、ユーザーとのつながりに利用できるだけでなく、商品開発のためのデータ収集にも利用できると述べた。同プラットフォーム上のフェンティビューティーの体験を訪れたRobloxユーザーは、そこでバーチャル製品を作成できるだけでなく、気に入った作品に投票することもできる。その後、ブランド創設者のリアーナが最終選考に残った作品を検討し、物理的に生産する作品を1つ選ぶ。
グプタ氏は、バーチャルな場では、実際に会うよりもブランドと関わってもらいやすいと語った。「Robloxに毎日1時間から3時間費やす若い層もいる。「美容に限らず、どんなブランドにとっても、ショッピングモールやポップアップストアのような場所で、1時間から3時間も費やす人を獲得するのは非常に難しい。
メタバースを導入しやすいプラットフォーム
プラットフォーム自体には潜在的なチャンスがあるにもかかわらず、メタバース的な試みはブランドにとって厄介なままだ。今年初め、ウォルトディズニー(Walt Disney)は、同社のメタバース戦略を担当していた次世代ストーリーテリング・消費者エクスペリエンス部門を廃止した。ソーシャルメディア大手のMeta(メタ)は、メタバース部門で損失が膨らんでいる。2022年、メタのフェイスブック・リアリティ・ラボ部門の損失は137億ドル(約2兆500億円)で、前年の102億ドル(約1兆5200億円)から増加した。ほかのメタバースプラットフォームに比べ、Robloxはオリジナルコンテンツシリーズやハードウェアに投資する必要がないため、ブランドにとって費用対効果の高い方法となる。
グプタ氏は、Robloxのように多くのユーザーが子どもであるプラットフォームでマーケティング・キャンペーンを展開する場合、ブランドは責任を持つように促した。「Robloxで視聴者と関わっているブランドは、交流している視聴者の感受性の強さを認識する責任があると思う」と同氏。「ブランドが思慮深くこれ[プラットフォーム]に取り組めば、潜在的なリスクよりもメリットの方がはるかに大きい」。
[原文:Why beauty brands are experimenting with Roblox]
Maria Monteros(翻訳・編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu