ヘイトスピーチ 対策、欧州諸国の最新動向:要点まとめ

2019年、ヨーロッパの規制当局たちによるアメリカのテックプラットフォームに対する監視の目が激しくなっている。次の照準は、ヘイトスピーチの取り締まりだ。

それを先導してきたのがドイツだ。2018年1月、ドイツは、違法な疑いのあるコンテンツは、嫌疑の内容に応じて24時間以内または1週間以内に取り下げなければならない、という法律を導入したはじめての国となった。違反すれば罰則金は5000万ユーロ(約60億8016万円)に及ぶこともある。この法律は「ネットワーク執行法」(The Network Enforcement Act)、またはNetzDG と名付けられ、プラットフォームには半年に1度、調査結果を報告する義務が課される。

データ違反や独占禁止法違反、著作権侵害と同様に、プラットフォームに課すヘイトスピーチ違反の罰則に関して、2019年はヨーロッパの規定がますます厳しくなった年になっているのは明らかだ。ドイツがNetzDGを導入して18カ月だが、諸各国も同様の措置をとりはじめている。以下、ヘイトスピーチ禁止法に関する最新の動向を見てみよう。

Facebookの罰則金は200万ユーロ(約2億4328万円)

2019年7月初旬、ドイツ連邦法務局(the Bundesamt für Justiz, 以下BfJ)は、NetzDGの法律で定められた義務の一部となっている、受けた苦情数の報告の仕方が基準に沿っていなかったとして、Facebookに200万ユーロ(約2億4328万円)の罰金の支払いを命じる予定だと発表した。

2018年夏、Facebookに続いてTwitterやGoogleも初回の報告を行った。Facebookが報告した苦情はわずか1704件だったが、これはTwitterの26万4000件、YouTubeの21万5000件と比べる極めて少ない。BfJによると、その理由は、FacebookがNetzDGへレポートするのフォームを極めて見つけにくくしているからだという。Facebookは、常にコミュニティのガイドラインに反した書き込みを報告する確かな手段を持っていたが、NetzDGへのフォームに書かれた苦情がどれだけあったのかを確認しなかったたとして、BfJはFacebookを「違法コンテンツに対する実際の状況やそれに対する対処を歪めている」と非難した。

Facebookの広報はeメールでの声明で、この法律が策定される前の「建設的な議論」の場で、BfJからは何の反論もなかったと語った。「我々が公表したNetzDGの報告書は法に従っていると信じているが、指摘された多くの批判のように、この法律が明確さに欠けている部分は多い。この罰則金の支払いの通告を精査するとともに、上訴する権利を留保する」。

BfJはFacebookに対し、苦情を取り扱う人材の訓練のレベルやその苦情への対応方法など、さらに3つの別の違反行為についても強く主張した。Facebookによると、NetzDGに関わる苦情の確認のために63名を雇用しているという

NetzDGまわりの苦情は減少傾向

2019年7月、プラットフォーム各社はドイツのNetzDGにもとづいた3つ目の報告書を公開する予定だ。1月には、Facebook、Google、そしてTwitterも、その直近の6カ月での進捗の詳細について報告している。

2018年の7月から12月までの期間で、Facebookは1048件の苦情を受けている。その前の6カ月では1704件だった。これらのうち、削除またはブロックされた割合は35%だったが、そのさらに前の6カ月では21%であった。

同じ期間内で、YouTubeは16万8000件の苦情を受けており、その前の6カ月間では21万5000件だった。そのうちの95%以上は24時間以内にブロックされた。

各国もヘイトスピーチ法に対応する動き

2019年7月、フランスもドイツに続き、アメリカのテックプラトフォームに対して、125万ユーロ(約1.5億円)の罰金の支払いを命じられる前に「悪意に満ちた」コンテンツを削除するよう、期限を課しはじめている。

この規模の罰則金であれば、プラットフォームの存在自体が揺らいでしまうということはないだろう。たとえば、Googleが3月に直面した独占禁止法違反の罰則金の15億ユーロ(約1821億円)ほどの額ではない。だが、これらは象徴的だ。「(罰則金は)それでも非常に重大だ」と、法律事務所のルイス・シルキン(Lewis Silkin)でシニア・アソシエイトを務めるオリバー・フェアハースト氏は語る。これらのプラットフォームは進んで法律に従う意思を示しており、また、これは自身のプラットフォーム上にヘイトスピーチがあることを望んでいないという事実の表れだと、シルキン氏は付け加えた。

イギリス政府も、オンライン上のコンテンツの取り締まりには意欲的であり、少しずつその歩みを進めている。2019年4月、政府は「オンライン上の危害」に取り組む方針を発表した。ドイツは懐疑的な視点でテックプラットフォームに対処しているが、これがどのような効果を奏するのか。ヘイトスピーチに関する規制策を自国にどのように導入するかの検討材料として、アメリカもドイツの動向をかなり注視している

まだ不完全なままの法律

フランスとドイツの立法機関は、プラットフォームが言論の自由を保ちながら、「悪意に満ちた」「違法な」コンテンツを押さえつけていくことがかなり難しいことを知った。2019年7月中旬に、フランスの政治家たちは夜遅くまでその定義について議論を交わし、人道に反する犯罪の容認も(ヘイトスピーチのうちに)含まれるという認識で合意した。例として反ユダヤ主義やイスラエルの現状に対する怒りなどは挙げられたが、最終版にそれらについての言及を含めることは却下された。

もうひとつの論点は期間だ。ソーシャルプラットフォームでのコンテンツの拡散スピードは早い。だが、フランス国内で、Facebookはこうした類のコンテンツはより詳細な検証が必要となるため、24時間以内に削除というのは短すぎる、と主張した。

結局のところ、コンテンツの取り締まりをプラットフォームに義務づけるということは、複雑になることが多い法的な問題の判断を彼らにさせるということだ。特定の発言に対して「名誉毀損」のような発想を持ち込むには、詳細な法的知識や経験、さらにはそれを取り巻く背景の情報へのアクセスが必要だ。プラットフォームは、必ずしもこうした問題に取り組むための法的なノウハウを持っているわけではない。

「問題は、Facebookのようなプラットフォームがそのような立場に立つべきなのか、それとも、明らかに違法なコンテンツ以外のものの削除に関しては、法廷が単独で責任を負うのか、ということだ」と、フェアハースト氏は語る。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac