Googleがユニファイド・オークションをアドサーバーに導入するというニュースは、業界人たちの話題となった。デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、ユニファイド・アド・オークションについて理解を深めるために、簡単にまとめた。
プログラマティック広告のベテランたちにとって、ユニファイド・アド・オークション(unified ad auctions:統合された広告オークション)は、新しいものではありません。しかし今回、2019年に至って、ようやくそれがデフォルトとなります。Googleの参入に感謝するしかありません。
Googleがユニファイド・オークションをアドサーバーに導入するというニュースは、セカンドプライスからファーストプライスオークションへと切り替えるというニュースと合わせて、業界人たちの話題となりました。これが、どのような影響を与えるかについて、注目が集まっています。
しかし、この発表を理解するためには、用語について、若干の知識が必要です。デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、ユニファイド・アド・オークションについて、簡単にまとめました。
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――ユニファイド・アド・オークションとは何ですか?
従来のウォーターフォール・モデルに取って代わったのがユニファイド・オークションです。ユニファイド・オークションにおいては、複数のアドエクスチェンジが同一のパブリッシャー在庫に同時にアクセスをし、それぞれ入札をすることができます。以前のウォーターフォール形式は、Googleが最初の(そしてしばしば最後の)入札権利を持ち、売れ残ったものは次のエクスチェンジへ手渡される、という階層構造に近いものでした。Googleと次のエクスチェンジでも入札されなかったものは、さらに次のSSPへ、というふうに最終的に在庫が売られるまで続きます。ユニファイド・オークションは、在庫に対して入札をするSSPやエクスチェンジの数が増えるため、価格が上がります。そのため、パブリッシャーたちが広告収益を伸ばす助けとなっているのです。
――ユニファイド・オークションはウォーターフォールと比べて、どれくらい普及しているの?
とても普及しています。過去2年のあいだに急激に広まりました。たとえば、アメリカとヨーロッパのパブリッシャーの90%は、デスクトップ在庫に関してユニファイド・オークションを運営。残りの10%は、まだウォーターフォールを使っています、というのはルビコン・プロジェクト(Rubicon Project)のデータによるものです。世界規模では、すべてのパブリッシャーの70%がユニファイド・オークションを使い、30%がウォーターフォールを使っているということです。
――ユニファイド・オークションはヘッダー入札のように聞こえますね
確かに、ヘッダー入札はユニファイド・オークションの道を切り開きました。パブリッシャーたちは javaScript のコードをヘッダーやブラウザに入れ、ラッパータグを使って、広告請求を複数のエクスチェンジやSSPに同時に送ることができます。しかし、この方法にはページ読み込みが遅くなり、ユーザー体験に悪影響を及ぼすといった欠点もありました。そして、そもそもパスバックのようなウォーターフォール構造が抱えていた非効率性を回避するためのハックが、ヘッダー入札だったのです。ウォーターフォールにおいてトップのポジションにいない独立系アドテクベンダーたちにとっても公平になるように、という具合です。そのプロセスにおいて、パブリッシャーたちは広告収益を伸ばしました。Googleがのちほど、ヘッダー入札プロダクトであるエクスチェンジ入札(Exchange Bidding)を導入しています。しかし、この発表とともに、Googleはエクスチェンジではなくアドサーバー、Googleアドマネージャー(Google Ad Manager)で運営するユニファイド・オークションを導入しました。
――Googleがアドサーバーにユニファイド・オークションを設置することが、どのような変化をもたらすのでしょう?
ほとんどのパブリッシャーたちがGoogleアドマネージャーを彼らのデフォルトのアドサーバーとして使っています。アドサーバーにユニファイド・オークションを作ることで、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)はエクスチェンジではなく、パブリッシャーのアドサーバー(このアドサーバーはGoogleによって所有されている)に直接入札をすることができます。理論上はこれによってプロセスが単純化されるのです。
――それはなぜ?
ヘッダー入札においては、エクスチェンジがインプレッションを確認し、入札を求め、広告が読み込まれる前にオークションを行います。一度に4つもしくは5つの異なるオークションを発生させることが可能です。それからこれらはラッパーに入れられ、もっとも良い入札が選ばれ、アドサーバーにそれを送ります。それから同じアドサーバーにある他のソースと競争をするといった具合です。
「これらはGoogleが、アドサーバーが判断ができるように作っているものだ。リアルタイムのプログラマティックやダイレクト契約も含めた、すべてのパブリッシャーの需要を見ることができる。これがアドサーバーに判断をさせる理由だ」と、エッセンス(Essence)、EMEAプログラマティック部門責任者のマット・マックインター氏は言います。
――オークションの数は少なくなっているの?
それが狙いです。誰が広告を見せることができ、それにどれだけの料金が支払われるかに関するオークションは1度しか起きません、それもアドサーバーのなかでです。
――バイヤーにとっては何か変化はあるのでしょう?
Googleがファーストプライスオークションにシフトすることは、これまで何年もユニファイド・オークションで入札をしてきたバイヤーにとっての影響の方が大きいです。過剰支払いを避けるためにバイヤーたちは、彼らの入札戦略を大幅に変更する必要が出てくるはずです。セカンドプライスオークションの世界では、バイヤーは異常なほど高い金額を在庫に対して入札することができました。その価格を支払うことはないと分かっていたからです。入札を勝ち取ることはできても、セカンドプライスよりもほんの少しだけ高い値段を払うだけでいい。これは最初に入札した価格よりももっと低い金額になります。
でも、これからは入札したものは払わなくてはいけなくなります。それによってプランニングにより賢さが求められてきます。すでに高度な入札戦略を持っているバイヤーたちは、Googleのユニファイド・オークション計画を歓迎するでしょう。「我々の場合異なるヘッダー入札オークションを理解する必要がなくなるだろう。我々にとっては状況がいっそうシンプルになる」と、マックインター氏は語っています。
――なるほど、では欠点はありますか?
ユニファイド・オークションに欠点はありません。これはパブリッシャーたちがすでに広く採用している方法です。サードパーティのエクスチェンジたちは、すでにGoogleのEB(エクスチェンジ入札)ツールを導入してますが、ほとんどのパブリッシャーたちはすでにGoogleアドマネージャーを彼らのアドサーバーとして使っていることを考えると、Googleアドマネージャーを通してオークションを運営し、プロセスをシンプル化すれば、ヘッダー入札のラッパーを分ける必要はないと考えるところも多いかもしれません。
「Googleのサーバー・トゥ・サーバー・プラットフォームであるEBをすべて(のサードパーティーのアドテクパートナーたち)が導入しているのであれば、こちら側でヘッダー入札がなぜ必要となるのか」と、デジタルパブリッシャーのエグゼクティブのひとりは語りました。「EBはサーバーサイドなので非常に早い。それはまた、Googleのサーバーである我々のサーバーに直接導入されている。これらのほかのエクスチェンジは、Googleと協働しはじめた。そのためいつかは、クライアントサイドにおけるヘッダー入札が我々にとって重要でなくなるだろう」。
Googleによるツールに頼りすぎることに懸念を感じているパブリッシャーのなかには、自分たちでサーバー・トゥ・サーバーのサービスを構築しようと試みる、もしくは独立型による類似サービスを使用しようとするところも出てくるでしょう。
Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)