ついにインスタグラムのフィード上で買い物ができるようになった。ユーザーからも、ブランドからも長らく期待されてきた機能だ。ソーシャルは商品の購買意欲を喚起しやすいことから考えても自然な流れといえる。この新機能導入によって、インフルエンサーマーケティングがどう変化し、どんな影響を受けるのかを考えた。
インスタグラムのユーザーは、ついにフィード上で買い物ができるようになる。
11月初旬、インスタグラム投稿のなかで、商品にタグ付けをできる機能が発表された。それをクリックすることで、アプリを飛び出し、プロダクトの詳細ページへ遷移できる。そこで直接、商品を購入できるのだ。インスタグラムのユーザーからも、またブランドからも、長らく期待されてきた、この機能。ソーシャルは商品の購買意欲を喚起しやすいことから考えても、自然の流れといえるだろう。
インスタグラムの調べによると、同ユーザーの60%はインスタグラム上で新しい商品やサービスを発見したことがあると回答。この新しい機能は、現時点ではケイト・スペード、ジャック・スレッズ、J・クルー、そしてワービー・パーカーといった20のブランドに限定されている。しかし、これがすべてのアカウントにオープンになったとき、これまでインスタグラム上で構築されてきた、ブランドとインフルエンサー間の関係が大きく変わることは間違いない。
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今回はインスタグラムが生み出したスターたち、そしてユーザーがコンテンツを生み出すプラットフォームとしてのインスタグラムが、この変化でどんな影響を受けるのかを考えた。
中間業者は転換を求められる
プラットフォームとそのユーザーのあいだのギャップを埋めることで収益を上げる、サードパーティーのサービスが存在する。しかし、そういったサービスはプラットフォームが何かひとつ新しい機能を追加するだけで立ち行かなくなってしまうことがあるようだ。インスタグラムの買い物機能の追加によって、サービスの転換を迫られる企業は多い。
インスタグラム上の投稿と商品のページをつなげるショッピングサービスを、ブロガーやブランドに提供する「中間業者」はすでに多く登場している。ライク・トゥー・バイ(Like2Buy)やオラピック(Olapic)、そしてライク・トゥー・ノウ・イット(LiketoKnowIt)といった企業は、媒介者としてインスタグラムフィードを提供し、画像の投稿を通じて商品を購入できるようにしている。それは、プロフィール欄のリンクを経由したサービスだ。
しかし、それは完璧なシステムとはいえず、ユーザーたちはまずブランドのプロフィールに飛んでリンクを探し、そこからインスタグラムを離れ、買い物ができるフィードに行く。そこからさらに、プロダクトを購入するWebサイトに行かねばならないのである。このシステムは、今回のインスタグラム新機能以前まで、インスタグラムユーザーを購買へとつなげる最善の方法として広まっていた。
その次に何をするかに注目
ところが、今回の新機能が将来的に全ユーザーに利用可能になった暁には、こういったサービスを提供してきた企業は、新しいサービスを提案しなくてはならなくなる。媒介者としてのショッピングフィードに加えて、ユーザーが作るコンテンツフィードの提供もしているオラピックの場合、今後はクライアントにアナリティクスやインスタグラムの正しい使い方などを提供することに集中する予定だ。
「インスタグラムが広く一般的に使えるアプリ内サービスのツールを提供したら、そっちの方が便利なのは明らかだ。そうしたら全員がそのツールに適応することになる」とオラピックの共同ファウンダーであるルイス・サンズ氏はいう。
新しい機能が全体で使用可能になったときには、二次的なショッピングフィードは停止するだろうともサンズ氏は予言する。「これはインスタグラムがeコマースに入り込む第一歩に過ぎない。注目なのはその次に何をするかだ」。
UGCはより価値を高める
ブランドはインスタグラム上のユーザーのコンテンツを通して、商品が顧客にどう使用されているのかを知ることができる。そして、ユーザーの商品に対する投稿は、ブランドの商品ページやブランドのインスタグラムフィード上にも再投稿される。
今回の新機能を通じて、こういった類のコンテンツは、さらに重要になることは間違いない。ブランドはアプリを通じてユーザーの購買意欲を刺激したいからだ。
「消費者は商品がどのようなライフスタイルを表すのか、どんなステータスシンボルとなっているのか知りたがっている」と語るのは、eマーケター(eMarketer)の小売アナリストのヨリー・ワームザー氏だ。「ユーザー発信のコンテンツはそれを送り出す素晴らしい方法のひとつだ。ブランドイメージだけでは伝わらないようなリアリティーをもつことができる」。
いまだ謎が残された部分
プロダクトやショップのページにとって、ユーザー発信のコンテンツのパワーは巨大である。その点は変わらない。しかし、プロダクトやショップのフィードでユーザーコンテンツを引用してポストする際に、プロダクトのタグを付けることができるのかどうかはまだ不明である。ワームザー氏はそこがポイントだと述べる。
試験運用中である現時点では、ブランドが投稿した画像で紹介されるプロダクトにタグをするのは、インスタグラム側の作業となっている。もしもその作業がブランド側の手に渡れば、より効率的な投稿作業がインスタグラム上で可能になるだろう。
ユーザー発信のコンテンツに、買い物が可能なリンクを張れるようになるかもしれない。そうすることで、ユーザーたちはブランドの助けを借りて、より多くの人たちに発信することができる。しかし、コミッションや報酬体系がどうなるのかは、いずれ議論されなくてはいけないだろう。
インフルエンサーとの関係は?
インフルエンサーたちがもつ力が変わることはないだろう。しかし、彼らとのパートナーシップをブランドがどう扱うかは、変わらざるを得ない。
アフィリエイト・マーケティング・プラットフォームのフルボトル(Fullbottle)CEOであるリード・バーグランド(Reed Berglund)氏はいう。「インスタグラム上のエンゲージメントはブランドではなくてクリエーターによって作り出される。オーディエンスからアクションを導き出すために、彼らは重要な手段であることは依然として変わることはない」。
ソーシャルメディア上でのアフィリエイトマーケティングは大成功を収めてきた。ひとつポストをするだけで何万ドルも受け取る、こういったインフルエンサーたちに対して、連邦取引委員会は厳しく取り締りを続けてきている。今回の新機能によってエンゲージメントだけでなく、直接、購買へと結びつくことになったことで、有料パートナーシップの開示について、ブランドはこれまで以上に気をつけなくてはいけない。
広告表記はさらに重要に
マイアミ法律事務所でファッション法に従事するダニエラ・ガーノ弁護士は「本当のリスクはブランド側にある」という。「インスタグラムがショッピングアプリへと移行しつつあるいま、インフルエンサーがブランドとの関係を開示することが、さらに重要となっている」。
ガーノ弁護士は、#adや#sponsoredといったよく使われるハッシュタグも、ほかのハッシュタグに埋もれてしまうことがあり、十分ではないと考えている(#sponも#sponsoredの代わりによく使われるが、実際は連邦取引委員会の決めたルールに違反している)。「(開示を知らせるサインは)はっきりと見えて、明確でないといけない。連邦取引委員会はルール施行に真剣に取り組んでいる」。
Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)