不況下において、アドテクはどう変化(加速)したか?

アドテクのコストを下げ透明性を高めるといった新たな緊急性により、本来なら3年のあいだに起こることが、3~6カ月で起こるかもしれない。景気後退が、すでに起こっていることの多くを加速させ、パブリッシャーが同じアドテクベンダー経由で同じインプレッションを販売することを、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)が制限したことが転換点となった。

メディア不況がアドテクに圧力をかけている5つの分野には次のようなものがある。

激化するサプライパス最適化(SPO)

SPO(サプライパス最適化)が、バイヤーがアドテクの中間業者をできるだけ通さずに最高のインプレッションを最低価格で買う方法を表す包括的な用語であることを考えると、景気後退時にこれが激化するのは当然だ。

アドテクベンダーのパブマティック(PubMatic)で最高商業責任者(CCO)を務めるジェフ・ヒルシュ氏は、「現在、プログラマティック広告は、多くのバイヤーにとって限られたリソースでより効率的である必要があるため、エグゼキューションの異なる段階において、世界中にこれら2つの取引を行っている」と話す。

これらの取引は、広告主やエージェンシーが勝ち取ったもしくは失ったインプレッションについてパブマティックから情報を得るための効果的な方法になる。市場には買うべきインプレッションが豊富にあるなかで、資金繰りに苦労しているプログラマティックバイヤーにとって、これは貴重なインサイトを与えてくれるものだ。

「バイサイドはメリットを見たいので、そうした取引をもっと急いで進める必要がある」と、ヒルシュ氏はいう。しかしバイヤーは、ほとんどのアドテクベンダーが強いストレスにさらされている状況下において、間違った決定をしてしまうことを警戒している。「バイヤーは財政的安定を再確認したがっているのだ。これは、新型コロナウイルスの感染拡大前には聞かれなかったことである」。

SPOのおかげで成熟期に達したPrebid

ザ・トレード・デスクは、ラッパーを推し進めるパブリッシャーへの優先パスを選ぶようアドテクベンダーの背中を押した。このとき、テクノロジー系パブリッシャーは、SPOをめぐる議論にプログラマティックパートナーを巻きこんでいった。

Prebid(プレビッド)はラッパーのひとつで、ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)やザンドラ(Xandr)、ザ・トレード・デスクなどの大手アドテクベンダーのいくつかが採用していることから、そうした決断をすることで別の大きな代替策――Amazonの「トランスペアレント・アド・マーケットプレイス(Transparent Ad Marketplace)」やGoogleの「オープン・ビッディング(Open Bidding)」以上の恩恵を得ることができる。この動きに先駆け、Prebid サーバープラットフォームを通じてラッパーがサーバー間のヘッダー入札へとシフトしたことで、より多くのインプレッションを販売する能力をより良く管理する方法を探していたパブリッシャーの興味を掻き立てた。

「Prebidは、それを進んで採り入れるパブリッシャーベース全体で成熟期に達し、事実我々は、クライアントサイドのPrebidが原因で起こるレイテンシー(遅延)にさらなる焦点が当たったことで、クライアントサイドのPrebidからサーバーサイドへと移動しようとしている」と、インフォリンクス(Infolinks)最高経営責任者(CEO)のボブ・レギュラー氏は語る。

切り替えに関心を寄せるパブリッシャーも増えている。

ザンドラの製品管理担当ディレクター、トム・レベック氏はこう話す。「Prebidサーバーへの関心が高まっている。以前はSSP(サプライサイドプラットフォーム)やDSP(デマンドサイドプラットフォーム)などの仲介者がフォーカスされていたが、いまでは、PrebidのようなラッパーがSPOのストーリーの一部になった」。

多くのアドテクベンダーにとって、いまの焦点はキャッシュフロー

現在の不況を乗り切ろうとするアドテクベンダーができるだけ多くの現金を手元に残しておくために、サプライチェーン全体が躍起になっている。

「我が社の核であるDSPビジネスの管理以上に、キャッシュフローの管理がいまの私の仕事となった。延期された支払い期限への対応や、サプライチェーンの上流、下流のパートナーとの交渉が増えた」と語るのは、アドテクベンダーPXのCEO、フランス・バン・ヒュル氏だ。

ほとんどのアドテクベンダーは、期限通りに支払いを受けられるように、パートナーがもっとも高い信頼と信用の対象になるかを見極めようとしている。通常、広告主からのサプライチェーンの最上部でデフォルトが起きたら、それはシステム全体に影響して、誰も支払いを受けられなくなる。

支払いの遅れがドミノ倒し的に影響を及ぼし、多くのアドテクベンダーのキャッシュフローに打撃を与えている。PXのようなDSPは、広告主のために広告を配置することでエージェンシーから支払いを受けるため締め付けられ、SSPも同様に、支払いを受けるかなり前にパブリッシャーに支払わなければならないため、苦境に立たされる。その結果アドテクベンダーは、支払い期間の差を埋めるために巨額の負債を抱えることになる。

カーゴ(Kargo)のオペレーションおよびパートナーシップ担当シニアバイスプレジデント、マイケル・ショネシー氏は、「組織は、エコシステムにいるプレイヤーを強く意識し、プレイヤーBやプレイヤーCが関わってくることを警戒している。支払いへの恐怖――支払ってもらえないこと――はとても現実的だ。誰もがそう言っているのを聞くし、新型コロナウイルスはその恐怖を加速させただけだ」。

自社のファーストパーティデータに(再び)回帰するパブリッシャー

広告主が支出を増やすのではなく控えたがるときにプレミアムパブリッシャーが利益をあげられるというのは直感に反するように聞こえるが、それは魅力的なデータを販売する試みが止められていないことによるものだ。

たとえばニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、インベントリー(在庫)の購入に使っていたサードパーティデータをすべて段階的に廃止しようとしているし、コンデナスト(Conde Nast)は、サイト上での広告をターゲット化するために、広告主に新しいプロプライエタリなファーストパーティのオーディエンスセグメントを提供しはじめた。過去にはこうした動きがパブリッシャーの成功の程度に差を生んだが、いまはそうではなく、広告主はパブリッシャーに喜んで支払うように見える。多くの広告主が金(カネ)の価値に焦点を絞っており、以前の景気後退時より質に注目するようになった。ニューヨーク・タイムズやコンデナストのようなパブリッシャーから広告を買うコストのほうが安いときに、こうした軸足の変更は簡単にできる。

「ストーリーを正しく伝える、特に方程式の価値の部分を説明できれば、プレミアムパブリッシャーにとってこれはうまく機能するだろう」と、イービクイティ(Ebiquity)のグループ最高戦略責任者であるクリスチャン・ポールマン氏は述べる。「彼らには、低価格化したCPM(クリック単価)の結果、『プレミアム』に手が出るようになったメリットがある」。

依然としてスケールに問題があるコネクティッドTV

コネクティッドTVは、長期に渡るメディアコミットメントから離れ、より柔軟性のあるオンラインチャネルへと移行していくメディアバイヤーの支持を得て、成長していくと思われていた。

家にいる人々がコネクティッドTVでより多くのコンテンツを視聴するようになった結果、入手できるインベントリーが急増し、そうした決断がしやすくなった。そういうことでサムスン(Samsung)は、アドテクベンダーのスポットX(SpotX)を通じて自社製コネクティッドTV上でインプレッションを売るときだと判断した。しかし、ここには、手に入るインプレッションの数が限られ、その結果、放送局へのメディア予算の流れも限られるというインフラの問題がある。

アドテクベンダー、ビーチフロント(Beachfront)のCEO、クリス・マッカロ氏は次のように述べる。「この空間での最大の問題は、サーバー間統合もしくはより多くのデマンドを通じて50%のフィルレートを実現できると業界が考えていることにある。より多くの注目を集めるという問題があるが、我々に本当に必要なのは、パブリッシャーとの共同作業によりセルサイドで破壊的イノベーションを起こし、常にバイサイドに対応を求めるのでなく、問題を修正していくことだ」。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)