Facebookは、ドイツ、フランス、スウェーデンにおいて 12のFacebook Watch新番組に資金を投入する。番組のカテゴリーはニュースが主となる。番組にはデイリーとマンスリーの両方がある。また、地元で人気のニュースパーソナリティを起用するものや、オーディエンスが参加できる生放送なども計画されている。
Facebookは、ドイツ、フランス、スウェーデンにおいて 12のFacebook Watch新番組に資金を投入する。番組のカテゴリーはニュースが主となる。
今回Facebookが組むのは、ドイツのアクセル・シュプリンガー(Axel Springer)、ブルダ(Burda)、グルナー+ヤール(Gruner + Jahr)、フランスのブルト(Brut)、ル・モンド(Le Monde)、BFMTV、スウェーデンのエクスプレッセン(Expressen)といった欧州パブリッシャー勢だ。番組にはデイリーとマンスリーの両方がある。また、ほかにも地元で人気のニュースパーソナリティを起用するものや、Facebookオーディエンスが助言を求めて参加できる生放送のパネルディスカッションなども計画されている。インタラクティブな要素がユーザーからのコメント増に効果的であることを知って以来、Facebookは「グループ」や「Watchパーティ」などを通じ、この点の強化を図っている。
Facebookとニュースパブリッシャーの緊張関係は続いており、Facebookをはじめとする米テックプラットフォームによる支配を警戒する欧州諸国、とりわけドイツでは、それが顕著となっている。だが、今回のニュース番組への投資を関係改善の兆しと見るパブリッシャーもいるようだ。
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「Facebookとの関係は変わりつつある。当初、我々はリーチを得るための手段として、自社コンテンツに固執していた」と、Facebook Watchの新パートナーの某パブリッシャー幹部は語る。「我々は彼らに文句ばかり言い、彼らはまったく理解していなかった。だがいまは、互いに理解し合おうと努めている」。
「いわばリスク分担」
今回の発表は、Facebookによる欧州ニュース番組への最大の投資となる。Facebookは2018年からチャンネル4やBBCといった英放送局のニュース番組に投資をはじめており、今年度の投資継続についても現在協議中だ。6月には、エンタテインメントやニュース、スポーツ分野にまたがる欧州勢とのパートナーシップ樹立も発表している。
アクセル・シュプリンガーのマティアス・ドップナー氏をはじめ、欧州パブリッシャー幹部らは長年、Facebookを含むプラットフォーム勢はパブリッシャーコンテンツを流すことに対して何らかの償いをするべきと公言してきた。欧パブリッシャーへの番組制作費の支払いは、この声に応える行動にほかならない。ただ、金額はさまざまだ。米国では、Facebookは番組のレギュラー度に応じて、100万ドルから1000万ドル(およそ1億円から10億円)を投資している。Facebook Watchの某欧州パートナーが匿名を条件に語ったところによると、Facebookはこのパブリッシャーに7桁の額を支払うという。資金援助を得て制作された番組はパブリッシャーが営む自社サイトとFacebookで同時に、サードパーティプラットフォームでも3カ月以内の配信が可能となる。
番組はCMを通じてマネタイズもできる。ただスウェーデンは例外で、エクスプレッセンが新たなWatchパートナーとなるが、スウェーデン語の動画はCMを受け付けていない。
もっとも、Facebook Liveといった他サービスの場合と同様、特定のチャンネルにおける番組の資金源としてFacebookに依存するのはサステナブルではない。あくまで、パブリッシャーが番組の広告収入に過度に依存していないことが成功の条件となる。また、FacebookはWatchのニュース番組に対し、パフォーマンスが芳しくない場合、視聴率が上がらない番組が直ちに打ち切られるテレビの世界と同じく、すぐさま投資を止める構えも見せている。Facebookがほかでは着実な戦略を展開しているなか、この大規模な計画は、番組の打ち切りがなければの話だが、今後さらに注目を集めることになるだろう。
「我々にとっては、コンテンツの受け止められ方を知り、Facebookにおいて新たな収入源を確立するための機会となる。他の分野にビジネスを拡大していけるのか? そこがポイントだ」と、前出のパブリッシャー幹部は語る。「いわばリスク分担だ。我々は新たなビジネスモデルが欲しいし、彼らはコンテンツが欲しい」。
「正しい方向に進んでいる」
一方、英パブリッシャー勢は懐疑的な姿勢を崩さず、Facebookの意図を疑問視している――有害なコンテンツを広めるという失態を演じた同社が、質の高いニュースを配信することで失地回復を狙う自己宣伝に留まらず、パブリッシャーのオーディエンス拡大まで本気で考えているのだろうか?
「これにはふたつの側面がある」と、前出のパブリッシャー幹部は語る。「Facebookは、我々への協力として、これをしているとも言えるが、我々もまた公の議論の場で彼らにプレッシャーをかけている。彼らは依然、製品中心の企業だ。だが、正しい方向に進んではいる。製品だけでなく、顧客とパートナーも必要だということを理解しはじめている」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)