アドバイヤーやアドセラーが来るべきCookieの変更への備えを整えるなか、メディアのロングテールの上にビジネスを展開している企業は、いまやビジネスの中心に近づきつつある。広告管理プラットフォームはこの1年、広告主だけでなく、より多くのパブリッシャーを獲得するための働きかけを強化してきた。
アドバイヤーやアドセラーが来るべきCookieの変更への備えを整えるなか、メディアのロングテールの上にビジネスを展開している企業は、いまやビジネスの中心に近づきつつある。
フリースタ(Freesta)やメディアバイン(Mediavine)といった広告管理プラットフォームはこの1年、広告主だけでなく、より多くのパブリッシャーを獲得するための働きかけを強化し、大手DSP(デマンドサイドプラットフォーム)やほかのプラットフォームとともに識別子に関する提携を模索し、さらにはGoogleのプライバシーサンドボックス(privacy sandbox)からリリースされる製品の初期トライアルにも参加してきた。
メディアバインの最高経営責任者(CEO)、エリック・ホッチバーガー氏は、「3年前、トレード・デスク(The Trade Desk)が我々に接触してきたと言われても、信じられなかったと思う。通常はこちらからドアを叩くようなDSPが、今では我々に手を差し伸べている」。
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各収益化プラットフォームは、独立系パブリッシャーと同じ課題つまり、決定論的データと確率論的データのバランスをとることや、代替識別子を相互に比較検討すること、Googleの多種多様なプライバシーサンドボックスの取り組みを検討することなどに直面しているが、その規模の大きさから、広告バイヤーだけでなく、中規模や大手パブリッシャーとも新たな関連性を持つようになっている。そうしたバイヤーやパブリッシャーもまた自らのビジネスを大きく変えなければならないという厳しい現実に直面し、ロープから手を放し、広告から完全に手を引くか、他人に仕事を任せるようになった。
「我々は通常、ミッドテールのパブリッシャーと仕事をしている」と、カフェメディア(CafeMedia)の最高戦略責任者、ポール・バニスター氏は話す。「だが、状況はかなり厳しいので、より規模の大きいパブリッシャーが次々と我々の元へやって来るようになっている」。
広告管理会社のサービスと注目度
彼らが提供するサービスの詳細(およびサービスを提供しているサイトの種類)は若干異なるものの、大まかに言えば、広告管理会社はすべてのパブリッシャーに同じサービスを提供している。基本的には広告から入る収入と引き換えに、それらのサイトで展開される広告を管理する。ほとんどの場合、パブリッシャーは広告売上の大部分を得ることができる。
1年前を振り返ると、そのセールスピッチには説得力があったように思われる。特にカフェメディアとメディアバインは、この1年でオーディエンスの規模を大きくすることができた。カフェメディアのサイトは、2021年2月に1億6700万人のユニークユーザーを獲得し、前年比14%増となった。コムスコア(Comscore)によると、メディアバインのオーディエンスは前年比約8%増となり、ユニークユーザー数は1億2100万に達した。同じ期間、フリースタのオーディエンス数はほぼ横ばいで、前年同月のユニークユーザーが1億2200万人だったのに対し、1億1800万人となっている。
各プラットフォームの傘下に入ったサイト数の増加もかなり堅調だった。コムスコアのデータ解析によると、これら3つのプラットフォームは2020年に、新しいサイトを無数に吸収したという。メディアバインだけでも、2020年のうちに、コムスコアの辞書定義に1700以上のサイトドメインを追加した。これは前年比32%増となる。
「我々はビジネス開発チームを増強している」と、フリースタのCEO、カート・ドンネル氏はいう。「我々は少し熱心に活動するようになった。いままで広告管理に目も向けなかった企業が、我々を新たな視点で見直し始めている」
購入において都合の良い位置
各プラットフォームに追加されたサイトの実際の数はもっと多いかもしれない。コムスコアの辞書定義では、最低報告基準を満たしていないサイトは除外されているからだ。
この規模は、すでにコムスコアのデジタルプロパティのトップ50に3社すべてがランクインしているほどで、特に、広告バイヤーがサードパーティCookieを使用できたオープンマーケットでの購入に替わる、より直接的な関係を求めていることを考えると、プラットフォーム各社は購入において都合の良い位置にいる。
特にカフェメディアは、サードパーティCookieの廃止が同社にとってブランドやエージェンシーとより直接的な取引を作り出す好機になると期待して、2021年になってセラーを雇用している。
「バイヤーのリソースはすでに不足している」とバニスター氏はいう。「新たに20社と直接取引をすることはできない。彼らはより大きなパートナーを選ぶことになるだろう」
しかし、これらのプラットフォームが持つ規模は、Googleが策定している新ルールに準拠していなければ価値がない。そのため、各プラットフォームはさまざまな解決策を模索しているが、そのなかには、自分たちが代表するサイトからの、より直接的な参加を必要とするものもある。たとえば、メディアバインは2020年9月、シングルサインオンテクノロジー「グロー・ミー(grow.me)」を発表した。これは、同社のサイトのネットワーク上でファーストパーティデータを収集するためのものだ。
しかし、新しい広告ユニットとは異なり、グロー・ミーはパブリッシャーに対して、サイト体験を大きく損なう可能性のあることを要求している。すべては、まだ始まってもいない問題や、メディアバインの顧客の多くが気づいていない問題に対処するためだという。
「パブリッシャーの多くは、アドテクノロジー関連の業界情報に目を通していない。我々は彼らを教育する立場にある。彼らが本来持つべき関心を持っているとは思えない」と、ホッチバーガー氏は話す。
どこが勝つかはまだわからない
また、広告管理プラットフォームがサービスを提供しているサイトのなかでも特に注目度の高いサイトで、ファーストパーティデータがどれだけ役立つかという問題もある。「多くのパブリッシャーは、独自のファーストパーティデータを持っていない」とダンネル氏は説明する。「ログインしたソリティア(solitaire)のユーザーについて、何を学ぶのか? 本質的にユーティリティであって、(ログインすることを)正当化できないコンテンツサイトはかなりの数にのぼる」。
そのため、広告管理会社は、他の多くのパブリッシャーと同様に、さまざまなソリューションを検討している。カフェメディアは、独立系パブリッシャーを代表して、プライバシーサンドボックスだけでなく、インタラクティブ広告協議会、W3C、プレビッド(Prebid)が監督するイニシアティブにも参加している。プレビッドは識別子UID 2.0を扱っている
しかし、業界のほかの企業と同様に、どのソリューションが勝利を収めるかを規定する立場にある企業はない。パブリッシャーに広告運用ソリューションを提供するスタートアップ、ハッシュタグ・ラボ(Hashtag Labs)の共同設立者、ジョン・シャンクマン氏はこう述べる。「率直に言って、我々にはまだ解決策がない。業界のコンセンサスはまだ得られていないと思う」。
[原文:‘We’re out there hitting the pavement’: Ad management firms scoop up sites ahead of cookie changes]
MAX WILLENS(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)