YouTubeでは、この1カ月で新型コロナウイルス関連のニュース動画のオーディエンスが急速に増えている。だが、実に驚くべきことに、その動画を作成しているパブリッシャーの広告収益は増えていないようだ。
YouTubeでは、この1カ月で新型コロナウイルス関連のニュース動画のオーディエンスが急速に増えている。だが、実に驚くべきことに、その動画を作成しているパブリッシャーの広告収益は増えていないようだ。
2つの異なるパブリッシャーの情報筋によると、YouTubeのインプレッション単価(CPM)は、2020年はじめに記録した最高値から20%以上下落したという。また、今後ますます下落する可能性があり、そうした事態に備えていると、この2名の情報筋は述べている。
さらに別のパブリッシャーの情報筋によれば、CPMの下落だけでなく、新型コロナウイルス関連のコンテンツの広告フィルレートが下がっていることがより大きな問題だという。「フィルレートは本来あり得る値とはほど遠い状況だ」と、自社の新型コロナウイルス関連動画のフィルレートを明かすことは避けつつ、この情報筋は語った。「インベントリー(在庫)が埋まるペースよりインベントリーを作るペースのほうが速い」。
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FacebookやTwitterも同様
こうした状況はYouTubeに限った話ではない。さまざまなパブリッシャーが語ったところによれば、プログラマティック広告の価格は30%以上落ち込んでいる。キーワードブロックの影響に加え、世界経済がほぼ停止している状況では、広告需要はそれほど多くならないのだ。GoogleとFacebookでさえ広告料金の深刻な下落に直面している。パブリッシャーが同じような下落に直面することは避けようがない。
「YouTubeで起こっている状況は、FacebookやTwitterなどほかの場所で見られている状況と同じだ」と、先述の2人目のパブリッシャーは述べている。「エンゲージメントは記録的な高さだが、入ってくる広告収入には結びつかない」。
米国において新型コロナウイルスの感染拡大がはじまる前の2月はじめ、YouTubeは自社プラットフォームで新型コロナウイルス関連のコンテンツを収益化の対象外とするポリシーを制定していた。
しかし3月、YouTubeはこのポリシーを撤回したことを明らかにした。ただし、例外はある。たとえば、誤った情報を広めるような動画や、感染を広げかねないチャレンジを取り上げた動画は、引き続き対象外となる。
急激に伸びたエンゲージメント
ある面では、YouTubeの方針転換は適切なタイミングで行われた。この1カ月間、デジタル動画の視聴数は多くのカテゴリーで伸びているが、特にニュースとエンターテインメントのカテゴリーでは、エンゲージメントがさまざまなデジタル動画プラットフォームで急増したと、チューブラー・ラボ(Tubular Labs)でCEOを務めるロブ・フィッシュマン氏はいう。
同社のデータによれば、3月11日から4月14日にかけて、ニュースパブリッシャーがYouTubeにアップロードした動画の30%が新型コロナウイルス関連のものだったが、それらの動画の視聴数は同社が集計したパブリッシャーの全動画の40%以上を占めていたという。
とりわけ、大手ニュースパブリッシャーは多くの視聴数を獲得した。たとえば、NBCニュース(NBC News)が過去14年間にYouTubeで獲得した視聴数は14億件だが、その15%近くがこの1カ月間に獲得されたものであることが、チューブラー・ラボのデータから読み取れる。
「我々が現在目にしている数字は、何年ものあいだ見られなかったほどの大きさだ」と、2人目のパブリッシャーは語った。
反応は冷ややかな広告主たち
ただし、そのエンゲージメントの高さが広告主の関心を引き寄せるには至っていない。YouTubeでの収益の減少は、新型コロナウイルス関連のテキストコンテンツでパブリッシャーが直面している状況とほぼ同じだ。先週の時点で、新型コロナウイルス関連のテキストコンテンツから得られる収益は、ほかの話題を取り上げたコンテンツより30%ほど少なかったと、複数のメディア企業が米DIGIDAYに述べている。
また、ニュースで起こっている問題は、デジタルメディア全体で広範囲に見られる広告収入の減少のひとつでもある。インタラクティブ広告協議会(IAB)の報告によれば、3月には広告支出がおよそ33%減少し、FacebookやGoogleなどのプラットフォームは広告料金の下落を想定していたという。
YouTubeは最近、需要を刺激するための取り組みを相次いではじめている。4月第3週には、YouTubeプラットフォーム向け動画広告を作成する中小企業を支援するツールを発表した。
「これは長期戦になる」と2人目の情報筋は述べたうえで、次のように語った。「我々がオーディエンスにとって信頼できるニュースソースであり続ける限り、彼らも我々とともにいてくれるはずだ」。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)