Facebookでバイラル動画が復活を遂げている。YouTubeが10年近く前、奇抜な行動をする人々のクリップのライセンス販売というニッチ市場を生み出したように、Facebookが動画広告事業を立ち上げたことで、ユーザー生成コンテンツの第2期が幕を開けた。
Facebookでバイラル動画が復活を遂げている。
YouTubeが10年近く前、奇抜な行動をする人々のクリップのライセンス販売というニッチ市場を生み出したように、Facebookが動画広告事業を立ち上げたことで、ユーザー生成コンテンツの第2期が幕を開けた。個人ページの所有者やクリエイターが安価なクリップで稼ごうと殺到し、ジューキン・メディア(Jukin Media)、バイラルホッグ(ViralHog)、ニューズフレア(Newsflare)といった企業が恩恵を得ている。
バイラルホッグの創業者兼CEO、ライアン・バーソロミュー氏によれば、Facebookは今や、バイラルホッグのクリップの需要がYouTubeを上回っているという。ジューキン・メディアはもともと、放送局へのコンテンツのライセンス販売が主力事業だったが、2019年後半、誰でも49ドル(約5170円)でクリップをライセンス販売できるセルフサービスプラットフォームをひそかに始動した。2020年上半期、プラットフォームの顧客数は1200で、その半数近くが個人クリエイターだったと広報担当者は述べている。
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広告バイヤーとクリエイターは現在の状況として、供給は急増したが、広告のフィルレートやCPMに目立った影響はないと口をそろえる(これらは変数に大きく左右される)。一方、制作に多額を投じているメディア企業とクリエイターは、この動きによって不利な状況に置かれたと不満を漏らしている。
Facebookでの動画再生回数が100万回を超えているあるクリエイターは、「広告枠は非常に多く、皆が広告を奪い合っている」と話す。
コロナ禍で、UGCの需要が急増
2020年に入ってから、ユーザー生成コンテンツの需要があらゆるメディアで急上昇している。新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、広告エージェンシーと制作会社は上質なオリジナル番組やコマーシャルをつくることができなくなり、エージェンシー、制作会社、パブリッシャーがこぞって、代わりとなるものを探し始めた。
現在のところ、Facebookのオーディエンスは気に掛けていないようだ。チューブラー・ラボ(Tubular Labs)のデータによれば、Facebookに限らず、ブランドまたはメディア企業が制作していない動画の再生回数は着実に増えている。1月の時点では2230億回だったが、8月は4950億回まで増加した。
チューブラー・ラボの最高営業責任者ニール・パティル氏は、「インフルエンサーとユーザー生成コンテンツは何年も成長を続けているが、パンデミックの影響で、制作に制限が加わり、このような『手づくり』コンテンツが例外から標準に近づいた」と分析する。
ジューキン・メディアのライセンス担当シニアバイスプレジデント、ブレンドン・マルビヒル氏は、2020年に入ってからの新しい需要のほとんどが広告主によるもので、広告主は制作物の不足を補うため、動画コンテンツを必要としていると述べている。
ライセンス需要は長いクリップが中心
しかし、クリップの需要の多くは、第2のプラットフォームで手軽に稼ぐ機会をつかみたい個人クリエイターによって支えられている。
Facebookは2020年夏、インストリーム動画の収益化が可能なページを大幅に増やした。8月には、30%以上も増加し、10万9000ページに達した。Facebookが広告マネージャ内で定期更新している文書によれば、9月14日現在、この数は維持されている。
ジューキンの顧客のライセンス需要は長いクリップが中心で、なかでも3分以上のクリップが求められているとマルビヒル氏は話す。Facebookは3分以上のクリップを収益化の条件としており、キャプションやコメントを少し追加すれば、2年前に設けられた独自性の要件はたいてい満たされる。
ページの収益化を可能にするにはFacebookの承認が必要だ。ただし、複数の広告バイヤーが、何らかのブランドセーフティ対策を講じるためというより、供給を増やすことが目的に感じられると話している。ある広告バイヤーは、多数のオーディエンスを獲得することが絶対必要な場合を除き、インストリーム広告には「近づかない」と断言している。
しかし、こうした急増は価格にも、Facebook内での動画のパフォーマンスにもまったく影響していない。バーソロミュー氏によれば、バイラルホッグがライセンス販売している動画のほとんどは、それらの動画によって生み出された広告売上の一部を手数料として受け取る形になっており、「その割合について、下方圧力はまったく生じていない」という。「むしろ、全体的に需要が増加している」。
「上質なコンテンツの方が有利」
大手メディア企業は長年、ユーザー生成コンテンツと広告予算を巡って競合しなければならないことへの不満を口にしていた。しかし、一部の企業はFacebookのインストリーム広告プログラムを高く評価している。より上質なコンテンツが広告売上を得られると感じているためだ。
ブロッサム(Blossom)、ソー・ヤミー(So Yummy)などのメディアブランドを持つファースト・メディア(First Media)のプレジデント、シャロン・レヒター氏は「すべてのコンテンツが同じようにつくられているとは思わない」と話す。
レヒター氏によれば、分散型の動画戦略を採用するメディア企業ほぼすべてがそうだったように、新型コロナウイルスが到来したとき、Facebook動画のインストリーム広告のフィルレートは悪化したが、再生回数が増加したおかげで、損失を出すことはなかったという。ファースト・メディアはインベントリー(在庫)を販売する直販チームを持っていない。
収益化が可能なページは増加し続けているが、それによるフィルレートの悪化はないとレヒター氏は述べている。
「上質なコンテンツの方がコンバートしやすいようだ。アルゴリズムが認識しているのだと思う」。
[原文:‘We have seen increasing demand’: Facebook video powers a user-generated content surge]
Max Willens(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:長田真)