Foursquareは最近、現実世界の動きをデータとして記録していく、新しい技術をローンチ。ユーザーの動きに広告がどのような影響を与えているのかという、広告主が知りたい疑問に答えてくれるシステムになっている。そこで、トランプ氏が経営する施設の客数分析を行うことで、この新しいサービスを広めるためのマーケティングを行った。
もともとFoursquareは、ユーザーが出かけた場所で「チェックイン」し、バッジやポイントを集め、競い合うことで、拡張されたゲームのように楽しめるSNSだ。設立当初のビジネスを考えると、今回の位置情報をリアルデータ化するというサービスは野心的なものだが、ニッチかつ大きな収益の可能性も秘めてもいる。
2016年8月の初旬、CNBC、「ポリティコ(Politico)」、そして「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」の下に届いた非常に魅力的なニュースがあった。それはドナルド・トランプ氏が大統領選挙に立候補することを告知して以降、彼のホテルやカジノ、そしてゴルフ場の客数が減っているというニュースだ。このおいしいニュースの情報源はどこかというと、Foursquare(フォースクエア)だった。
Foursquareは最近、現実世界の動きをデータとして記録していく、新しい技術をローンチ。ユーザーの動きに広告がどのような影響を与えているのかという、広告主が知りたい疑問に答えてくれるシステムになっている。そこで、トランプ氏が経営する施設の客数分析を行うことで、この新しいサービスを広めるためのマーケティングを行った。
もともとFoursquareは、ユーザーが出かけた場所で「チェックイン」し、バッジやポイントを集め、競い合うことで、拡張されたゲームのように楽しめるSNSだ。設立当初のビジネスを考えると、今回の位置情報をリアルデータ化するというサービスは野心的なものだが、ニッチかつ大きな収益の可能性も秘めてもいる。
Advertisement
FoursquareのBtoBビジネス
「私たちはFacebookやTwitterのように何十億人のユーザーを得たいわけではない。私たちが提供したいのは、消費者ベースの人々の移動測定データだ」と、Foursquareのプレジデント、スティーブン・ローゼンブラット氏は語る。
多くの人々にとってFoursquareは、過去の流行のように思われるかもしれない。だが、地道にユーザーから集めた消費者データを利用し、企業向けのビジネスを創りあげてきた。チェックインアプリとしてのFoursquareには、まだ疑問をもっている人もいる一方で、彼らが持っている大量のデータに価値があることはエージェンシーのエグゼクティブも認めている。
Foursquareのビジネス戦略の根本にあるのは、世界中に存在する1億500万のロケーションと8500万もの商業施設のデータベースをもっていること。「チェックイン」用のアプリ「スウォーム(Swarm)」と、チェックインしなくてもオススメのレストランなどを知らせてくれるアプリなどを合計すると、現在のユーザー数は5000万人を超える。ここから集まるデータは膨大な量だ。「ユーザーがチェックインする度に、Wi-Fi、Bluetooth、ビーコンといったすべてのセンサーを捉えている」と、ローゼンブラット氏。
他社連携でデータを蓄積
Foursquareはユーザーの位置を正確に特定することができ、TwitterやApple、Uber(ウーバー)、そしてサムスン(Samsung)などのテック企業にAPIを公開している。エージェンシー、マクサス(Maxus)のクリエイティブテクノロジーディレクター、トム・ケルショー氏は、「ユーザーがUberやインスタグラムを使うたびに、彼らの位置情報シグナルがFoursquareに送られる。これは賢い戦略だ。これによってFoursquareのデータ会社という地位もより補強される」と語った。
ほかにもFoursquareは、データを使って高級ホテルに頻繁に行く消費者、ファーストフードレストランに頻繁に行く消費者などを、マーケターたちが分析するサポートを行う。また、オンライン広告が実際の店舗に集客できているのかをヘッジファンドが分析し、効果検証ができる定期購入型のソフトウェアも提供している。
とあるマーケターは、同社事業の連続的な変化について、次のように考察している。「Foursquareは、調達した資金を正当化できるような、ビジネスモデルを模索し続けているようだ。過去4年間、毎年のように事業を修正してきた。一番はじめはソーシャルアプリで、2015年はソーシャルアプリからデータ会社になった。そして、現在では、素晴らしいロケーション情報プラットフォームとなっている。もし、会社が毎年、事業の方向転換をしていたら、何かが起きているのだろう」。
広告主を魅了できるか?
先述のエージェンシー、マクサスのケルショー氏は、アトリビューション分析というパズルの難題を解くことが可能な潜在的能力を、Foursquareは擁していると評価したうえで、その「企業方針の転換」には問題があると考えている。ケルショー氏によるとFoursquareが現在直面している課題のひとつは、自社プロダクトを使ってもらうためにエージェンシーをどうやって説得するか、という点だ。
ケルショー氏いわく、「Foursquareが選んだ新しいビジネス領域はそれほど魅力的とはいえない。結局のところ、クライアントはレポートやグラフィックを買うということになる。広告主が大枚をはたいて、そういったサービスを購入する意欲があるかは定かではない。アトリビューション分析はキャンペーンベースというよりも戦略プロダクトであり、実体のないものだ。FacebookやSnapchatの広告は実際に見ることができる。しかし、広告主にとってFoursquareのプロダクトは、Snapchatのレンズほど魅力的なプロダクトには思えないかもしれない」と考えている。
また、先述のとあるマーケターは、Foursquareは米国、トルコ、ブラジルにおいて大規模なユーザー数を抱えているが、この3つのマーケット外では、その基盤は停滞しているか、減少していると指摘する。「私が知っている人でFoursquareをいまも使っている人は、Foursquareに勤めている者か、Foursquareで昔働いていた者のどっちかだ。アプリが使われなくなってしまうと、データの収集源がとたんに枯れてしまうだろう」。
組織自体は順調に成長か
Foursquareの2つのソーシャルアプリのパフォーマンスは平凡なものだ。米国ではiOSの「フード&ドリンク」カテゴリーではトップ40に入っており、Androidでは「トラベル&ローカル」カテゴリーのトップ60にランクインしている。アップアニー(App Annie)によると、「スウォーム」はローンチされてからiOSの「ソーシャル・ネットワーキング」カテゴリーのダウンロード数トップ250、Androidのトップ200圏内に常に入っているといった状態だ。
Foursquareは2016年の新規ベンチャー資金調達において、4500万ドル(約45億円)を調達。この額は2013年の資金調達時のFoursquareの企業価値と比べると、半分に相当する。しかし、現在では200人のフルタイム従業員を抱え、2016年には40人以上の重要役職を新たに雇う予定だ。2016年1月の段階で、シニアマネジメントレベルで大きな変革を実行している。
過去1年半に渡りCOOであったジェフ・グルエック氏は、CEO兼ファウンダーであったデニス・クローリー氏のポストを引き継ぐ形となった。ローゼンブラット氏はCRO(最高販売責任者)からプレジデントに昇格した。
「我々は事業として確たるものを擁している。話題に取り上げられながらも、ビジネスとして成り立っている会社なんて、数えきれるほどだ。Snapchatが人々の話題になっているのと同じくらい、我々にも注目が集まっていると思う。人々は我々が過去4年間に行ってきたことを完全に見落としているだけだろう」と、ローゼンブラット氏は今後の自信をのぞかせた。
Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)