ワーナーメディア、デジタルメディア支援の投資部門を閉鎖:マイクやマッシャブルへの投資企業

ワーナーメディア(WarnerMedia)に改名される以前、タイム・ワーナー(Time Warner)はデジタルメディアやテクノロジー企業に対する最大の投資会社として知られていた。だが大きく揺らぐデジタルパブリッシャー業界のなかで新たに親会社を迎えた同社は投資部門からの撤退を進めており、投資を受けていた企業は不安定な状況に置かれている。

タイム・ワーナー・インベストメンツ(Time Warner Investments)は、ワーナーメディア・インベストメンツ(WarnerMedia Investments)に名称を変えており、6の関係筋が2018年末をもって独立企業ではなくなったことを確認している。タイム・ワーナー・インベストメンツのトップだったアリソン・ゴールドバーグ氏は同社を去った。同グループのポートフォリオは現在、戦略および企業成長部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるプリヤ・ドグラ氏が管理しているが、前述の関係者はこのポートフォリオもまたほかの投資グループに売却されるのではないかと推測している。

昨年末の数カ月間、タイム・ワーナー・インベストメンツはすでにベンチャー部門として機能していなかったという情報もある。同ファンドが最後に行った公開投資は、職場におけるコミュニケーションサービスのスタートアップであるダイナミック・シグナル(Dynamic Signal)で、発表されたのは2018年2月にさかのぼる

この記事の執筆時点でワーナーメディアからのコメントは得られていない。

成功していた投資企業

過去数十年にわたり、タイム・ワーナー・インベストメンツはデジタルパブリッシャーや動画、広告、テクノロジー企業への主要な投資企業であり続けた。その投資対象にはニュースメディア企業のマイク(Mic)やマッシャブル(Mashable)、メーカースタジオ(Maker Studios)、バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)、ファンデュエル(FanDuel)、ディスコード(Discord)、トレマービデオ(Tremor Video)など錚々たる企業が並ぶ。タイム・ワーナー・インベストメンツのポートフォリオに含まれるある企業の情報筋によると、同社は長年にわたり年間で推定5000万ドル(約55億円)から1億ドル(約110億円)の投資を行ってきた。

それだけでなく、タイム・ワーナー・インベストメンツはファンドとして成功を収めてきたと関係者は口を揃える。同社による最大のエグジットには、ディズニー(Disney)に5億ドル(約550億円)で売却し、最終的に6億7500万ドル(約740億円)が支払われたメーカースタジオや、アクセンチュア(Accenture)に売却したアダプトリー(Adaptly)などがある。なかには失敗したケースももちろん存在する。マイクに対し、タイム・ワーナー・インベストメンツをはじめとする投資会社は6000万ドル(約66億円)近い投資を行ったが、最終的にバッスル・デジタル・グループへ500万ドル(約5億5000万円)未満で売却することになった。ほかにもマッシャブルはジフ・デービス(Ziff Davis)に対して格安の5000万ドル(約55億円)で売却されている。

タイム・ワーナー・インベストメンツの投資歴に詳しい関係者は、同社について次のように指摘する。「経験豊富なベンチャーキャピタル人材が牽引する企業だった。財政面で見て、一貫して優れた成果を上げていた。それはデジタルパブリッシャーについても同様で、ほかの投資会社と比較してもトップ集団に位置していた」。

支援者を失うメディア業界

だが、AT&Tが850億ドル(約9.3兆円)でタイム・ワーナーを買収したことにより、優先順位に変化が生じたと関係者は指摘する。電話会社であるAT&TはHBOやターナー(Turner)、ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)など、タイム・ワーナーのメディア資産を最重要視しており、同社のそれ以外の分野の縮小を進めている。AT&Tとワーナーメディアが停止した事業にはドラマフィーバー(DramaFever)やスーパー・デラックス(Super Deluxe)、フィルムストラック(FilmStruck)などがあり、ワーナーメディア・インベストメンツもそういった流れのなかで縮小が決定したのだ。

関係者は、ワーナーメディアが新たに投資や買収を行う場合もAT&Tが直接行う可能性が高いと分析する。AT&Tにはテック系のインキュベーターであるAT&Tファンドリー(AT&T Foundry)もあるし、企業グループ内のほかのメディアグループを通じて行うことも可能だからだ。そしてAT&Tとワーナーメディアの優先順位は、それまでは独立した投資組織としての性質が強かったタイム・ワーナー・インベストメンツとは異なっている。

メディア業界からすれば、タイム・ワーナー・インベストメンツの喪失は、過去数十年にわたってデジタルメディア企業への最大の支援者を失うということだ。

投資先の幹部たちの意見

タイム・ワーナー・インベストメンツの投資を受けていた企業の元幹部は次のように語る。「パブリッシャーやコンテンツ企業、アドテク企業のなかで、いまどのような動きがあるか? 何も起きていないよ。それが現実だ」。

また、タイム・ワーナー・インベストメンツの投資を受けた企業の創設者も次のように語っている。「タイム・ワーナー(インベストメンツ)は、業界における最重要勢力であり、戦略的な目的から積極的な投資を行っていた。それも賢明な投資だ。業界から彼らがいなくなったことで、新しい資金を必要とするメディア企業の居場所がまたひとつ失われた」。

関係者によると、タイム・ワーナー・インベストメンツの既存のポートフォリオは売却される可能性が高いという。

前述の企業の創設者も「キャッシュの獲得と資金の精算に重点が置かれており、ポートフォリオも売却されるのではないかと感じている」と指摘している。一方、ワーナーメディア・インベストメンツの支援を受けた別の企業の創設者は「負債を支払うつもりなのだろう」と分析している。

同創設者は「ポートフォリオのうちいくつかの企業は売却しないはずだ。AT&Tとワーナーメディアにとって、いまだ戦略的価値を有している企業があるからだ」と語る。

デジタルパブリッシャーの憂鬱

ワーナーメディアがベンチャー部門の縮小を決定したのは、デジタルパブリッシャーに対する投資家の過熱が収束したのとときを同じくしている。ワーナーメディアが保有し、2016年にリファイナリー29(Refinery29)とマッシャブルに対して戦略的投資を行ったターナーの幹部ですら、デジタルメディアへの投資について再考が必要だろうと個人的見解を述べ、次のように指摘している。

「ニューフロンツ(NewFronts:デジタルメディア広告枠の販売イベント)で虚勢を張っていた企業のなかには、倒産したものもある。多くのデジタルメディアは当時よりもずっと謙虚な姿勢で、会社の存続のために戦っている状態だ」。

ターナーの広報担当は、同社がリファイナリー29への投資を続けると回答している。

いま、デジタルパブリッシャーは不安定な状態にある。1月第4週にBuzzFeedは同社の事業を強化するため、従業員の15%を一時解雇すると発表した。これは200人以上にあたる。BuzzFeedのCEOのジョナ・ペレッティ氏は、昨年同社は10%以上の収益増を達成したものの、いまだ不十分だと語っている。リファイナリー29やVox Media、ベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)、オース(Oath)といった大手デジタルパブリッシャー各社もまた、昨年に一時解雇を実施している。

合併や統合が進むのか?

BuzzFeedの発表を受けて、メディアの観察筋のあいだではデジタルメディアのトップ企業のあいだで合併や統合が進むのではないかとの憶測が新たに広がった。このアイデアは昨年に行われたニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のインタビューでペレッティ氏が披露したものだ。BuzzFeedやリファイナリー29、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)の幹部もまたこうした団結について話を進めている。

だが、各企業の経営幹部が繰り返し述べているように、こうした話し合いは酒の席などで絶えず行われているもの、近い将来に実現しそうな取り決めはない。デジタルパブリッシャーのある経営幹部は次のように語っている。「しょうもない考えというわけではない。だがこれほど多くの投資会社や自負心の渦巻く業界で、実現するのはほぼ不可能だろう」。

Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)