ウォルマート 、1兆円を投資して500店舗をリニューアル:すべては「 顧客体験 」のため

ウォルマート(Walmart)が旧来の店舗の大規模な刷新を試みている。オンライン注文のフルフィルメントや配達を行うハブとして最適化された店舗へと生まれ変わらせる試みだ。

4月第2週、ウォルマートは技術面の改善に重点を置いた店舗の再設計を発表した。なかでも自動化による店舗業務の効率化が強調されており、自律型のフロア用掃除機1500台、陳列棚の商品を確認する自律型ロボット300台、トラックから荷降ろしされた商品をスキャンして分類する機械1200台、オンライン注文の商品を受け取るピックアップタワーや店舗内でオンライン注文を受け付ける自販機900台の導入が発表されている。さらに同社は年度末までにピックアップタワー1700台、注文した日用品を受け取る拠点3100箇所、日用品の配達拠点1600箇所の実現を目指している。

こうした取り組みは同社が今年予定している500店舗改造計画の一環だ。このオンライン販売と技術、サプライチェーンの改善を主眼とした改造計画には、今年中に総額で110億ドル(約1.2兆円)の投入が見込まれている。ウォルマートだけでなく、ターゲット(Target)やCVS、クローガー(Kroger)をはじめとする小売大手も実店舗の強化に取り組むことでAmazonに対抗しようとしている。

ウォルマートは実店舗の改造によって、最終的にカスタマーの多様なニーズに応えられるようになるだろうとしている。

顧客の期待に応えるため

ウォルマートの広報担当であるダリア・ガルシア氏は次のように述べている。「当社にとって店舗とは、カスタマーが好きな方法でいつでも商品を手に入れられるための、当社とカスタマーをつなぐ存在だ。オンラインで注文を行い(店舗内の)ピックアップタワーで商品を受け取ることもできるし、実際に商品を手にとって見たいカスタマーのニーズにも応えられる。どのような形であれ、カスタマーに便利で快適な体験を提供したいと考えている」。

ウォルマートは店舗の再設計に関する取り組みとして、無人レジの導入や新しい看板の追加、在庫の更新、電化製品やハードウェア分野の強化、日用品分野のテコ入れ、カスタマーの相談窓口をはじめとする薬局機能の大幅な作り直しなどを掲げている。同社は、スーパーセンターから中規模店舗、ネイバーフッドマーケット(ウォルマートが1998年から米国で展開している食品を中心とした比較的小規模な総合小売店)まで、あらゆる種類の店舗を取り組みの対象としている。さらにフロリダ州とカリフォルニア州に新しい店舗を作ることも計画している。

ガートナーL2(Gartner L2)のアソシエイトディレクターを務めるビル・ダッフィー氏は、同社がこうした取り組みを行っているのはカスタマーの期待に応えるためであり、オンライン販売の拡大が背景にあると指摘する。さらに同氏はあらゆる小売大手企業がオンラインショッピングの体験を広げて、店舗に付加価値を与えるために、店舗の刷新を進めていると指摘し、次のように述べた。

「これはウォルマートに限った話ではない。実店舗型の小売企業は、オンライン販売専門の小売企業に対抗するための資産として店舗を活用している」。

店舗刷新の投資効果

たとえばターゲットもウォルマートと同様に店舗の改革を進めており、2020年までに1000店舗の刷新を予定している。だがウォルマートの投資規模はとりわけ大きく、対象となるのは実に5000店舗以上だ。ウォルマートによると、米国人の90%がウォルマート店舗から16km圏内に住んでいるという。同社の規模は、ほかの小売店やAmazonとの競争上の強みだ。

ウォルマートは数千台のロボットの導入を試みているが、ダッフィー氏はこれについて、従来の小売店舗としてだけでなく、いまやオンライン注文のフルフィルメントや商品受け取り拠点ともなっている同社の店舗機能のバランスを取るためだろうと指摘する。店舗の刷新は事業のために必要コストとも呼べる状態だが、課題はその効果を測ることだ。

フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の主席アナリスト、サチャリタ・コダリ氏は「店舗刷新の投資効果を測定するのは非常に難しい」と指摘する。「古いタイプの大規模店舗におけるリテンションの悪化は、比較的簡単に測定できる。店舗刷新は、そうした悪化を防ぐための試みだ」。

疎外感を感じない設計

さらに大手量販店を展開している各社が実店舗を作り変える際に考えるべきなのは、店舗をただの商品陳列の場所ではなく、カスタマーがリラックスして商品を手に取り、オンラインでの購入以上の価値を得られる場所にすることだ。オンラインで注文して店舗で受取るという形態が一般化するなかで、店舗はショッピングと、オンライン注文のフルフィルメントというふたつの機能を備えるようになった。小売企業には実店舗におけるこの2つの役割のバランスを取ることが求められている。その結果、小売各社は店舗をカスタマーがこれまで以上にリラックスして楽しめるような場所にしなければならないというプレッシャーにさらされている。

ニューヨークに拠点を置くクリエイティブデザイン企業のオーナーで小売店デザイナーのセルジオ・マニーノ氏は次のように指摘する。「Amazonで買い物をするのはあまりにも簡単だ。だからこそ、実店舗はカスタマーが来店したときに疎外感を感じないような設計にしなければならない。確かな存在感を与える必要がある。なにか新しいことを店舗内で行うとか、毎月新商品をローテーションしていくといった取り組みだ。ウォルマートでもこうした取り組みは可能だろう」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)