ボーダフォン 、プログラマティック広告の「内製化」が後退

ボーダフォン(Vodafone)は、自社のマーケターによるプログラマティック広告の購入について再考を迫られている。

同社は3カ月前、オンライン広告の購入をインハウス化する発表したばかりだった。それ以来、ボーダフォンは自社で検索広告およびソーシャルメディア広告の購入を開始したが、ディスプレイ広告についてはまだ購入に踏み切っていない。同社が当初の目的を果たすためには、自社でトレーディングデスクを立ち上げる必要がある。これは検索エンジンやソーシャルネットワークから広告購入を行うダッシュボードを用意するよりはるかに複雑なタスクだ。

ボーダフォンに、いまでも自社のプログラマティックキャンペーンを購入するつもりがあるかを訊ねたところ、同社の広報担当から以下のような回答を得た。「ボーダフォングループは数カ月前に検索、ソーシャル、ディスプレイ広告についてインハウスで用意することを発表した。グループ各社は現在、実現に向けた方法と時期について検討しているところだ。世界でも最大規模かつ複雑な市場であるイギリスでは、段階的なアプローチで取り組むことが決定している。いままで、検索とソーシャルメディア広告をインハウスでの購入を実施した。購入について注意深く見守っており、今後のアプローチ方法やプログラマティック広告の提供方法については見直す可能性がある」。

インハウス化を阻むもの

だが、広告主とボーダフォンのこの計画について話したとあるメディアの役員によると、ボーダフォンのマーケターがプログラマティック広告を入札する兆しは見えないという。同役員によれば、ボーダフォン社内ではプログラマティック広告システムの所轄と、それに伴う資金についてマーケティング部門とデジタル部門のあいだで対立関係ができあがり、計画の進捗を遅らせているほか、アドテクや人材、パブリッシャーとの関係構築にかかる費用の高騰もまた大きな障害となっていると指摘する。

ボーダフォンのような広告主が、一律料金でエージェンシーに丸投げするかわりに自社でこうした問題に取り組むと、かかる時間やコストは膨大なものとなる。実際、エージェンシーのウェーブメーカー(Wavemaker)ではこれからも同社のプログラマティック広告の購入を続けていく予定だ。

同プロジェクトに携わる別の役員もまた「ボーダフォンは、同社が考えていたほど、インハウスでデジタルメディアを購入できるようにはならないだろう」と指摘しつつも、「大規模なものにはならないだろうが、それでも同社が実施したいと考える市場ごとに解決策を模索し、見つけ出すことは可能だ」と分析する。

他社のインハウス化事情

ボーダフォンのアドテク企業との契約や入ってくるデータを保持し、メディア戦略を自ら決定するという解決策は、デュラセル(Duracell)アディダス(Adidas)のようなハイブリッドモデルの広告主が取った手法を彷彿とさせる。こうした企業ではエージェンシーは基本的にプログラマティック広告の購入を続けているものの、クライアントが注意深く見守るなかで行っている。このような広告主のなかには自社でのプログラマティック広告の購入を試したものの、支援が必要となり結局エージェンシーを頼ることになった企業も存在する

「インハウスでのプログラマティック広告は、実施に際して考えるべき複雑な問題があまりにも多い。実際のところ、求められるタスクは需要側のプラットフォーム契約の取り付け以外にも膨大だ」と指摘するのが、メディアコンサルティング企業のアペルト・ワン(Aperto One)の創業者で、ピュブリシス(Publicis)やハバス(Havas)でメディアバイヤーを務めたスコット・ムーアヘッド氏だ。「こういったケースでは、考えていた以上に時間と労力を使うことになり、想定を上回るコストがかかることになる」と、同氏は語る。

いまのところ、ボーダフォンは主要な25の市場に重点を置き、これら市場すべてでマーケター各社が検索エンジンやソーシャルネットワーク上で広告を購入できるようにする狙いだ。

ボーダフォンの狙い

同社の広告予算は6億ポンド(880億円)とされている。このうち3分の1となる2億ポンド(294億円)がデジタル広告の予算だが、そのなかでも相当な金額が検索およびソーシャルに費やされることになる。ボーダフォンのCEO、ビットリオ・コラオ氏は今年5月に投資家に向けて「社内で購入する広告を増やせば、ボーダフォンはこうした広告の有効性についてより深く理解できるようになる」と説明している。GDPRを遵守しつつ、カスタマーデータを広告主に販売する広告ビジネスの構築を狙うコラオ氏にとって、オンラインでの広告のやりとりについて理解することは重要だ。

なお、ボーダフォンがオンライン広告の購入方法について学ぶために採用した、ウェーブメーカーやブレインラボス(Brainlabs)のエージェンシー2社からコメントは得られなかった。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)