サイトに掲載される広告についてサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)がパブリッシャーに課す料金は、広告バイヤーが突き止めようとしても動く標的でなかなか定まらない。なぜなら、同じSSPの同じパブリッシャーでも、インプレッションによって料金が変わる場合があるのだ。
サイトに掲載される広告についてサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)がパブリッシャーに課す料金は、広告バイヤーが突き止めようとしても動く標的でなかなか定まらない。SSPによって、あるいはSSP内のパブリッシャーによって料金が違うというだけではない。同じSSPの同じパブリッシャーでも、インプレッションによって料金が変わる場合があるのだ。
可変料金の捉え方
GoogleのSSPとオープンX(OpenX)にはいわゆる可変料金がある。この件に詳しいパブリッシャー幹部3人によると、可変料金の場合、広告主の入札価格からSSPが差し引くパーセンテージが、SSPとパブリッシャーが合意しているものから上下することがある。GoogleとオープンXが可変料金をいつ実装したのかや、パブリッシャーにどれくらい普及しているのかは明らかではない。両社とも、可変料金はパブリッシャーのオプションだという話だ。また、パブリッシャー幹部らによると、個々のインプレッションごとに料金が変わることはあるが、全体を平均すると合意しているパーセンテージになるのだという。GoogleとオープンXにコメントを求めたが、返事はなかった。
こうしたオプションの可変料金は、それ自体が問題だと考えられているわけではない。パブリッシャーのインベントリー(在庫)と広告主の需要をやりくりするSSPにさらなる柔軟性をもたらすものなのだろうと、パブリッシャーも広告バイヤーも推測していた。ただ、こうした可変料金がいつ、何を目的に実施されているのかが、パブリッシャーや広告バイヤーには見えないということは言える。結果、広告バイヤーとパブリッシャーの双方がプログラマティックのサプライチェーン全体のお金の動きにもっと光をあてようとしているなか、可変料金はブラックボックスだと見られている。
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SSPがパブリッシャーと広告主に可変料金の価値を正当化することができ、料金の上下が数ポイントしかないとなれば、問題は小さくなるだろう。デジタス(Digitas)のVPでプログラマティックのディレクターであるリアン・ナドー氏は、「買う側で問題が大きくなる場面は、CPMについて我々にはわからないなかで、ゲームがなされているときだ」と語った。
SSPにおける競争戦術
匿名を希望したあるパブリッシャーは、「パブリッシャー側ではたくさんの人が懸念しているはずだ。(SSPは)できるとわかっているのだから自分たちのマージンを増やしているケースがあるのではないか、マーケットプレイスから得られるはずである最大の価値を我々は得ているのだろうか、といった疑問からだ。この理由がわからないと、たくさんの問いに答えが出ない」と語った。
パブリッシャーや広告バイヤーにコモディティ化していると見られているSSP。可変料金はそんなSSPの競争戦術だと考えられている。多くのパブリッシャーは複数のSSPを通じてインベントリーを販売しており、パブリッシャーにもたらす価格や広告主に提供できるインベントリーの量が、SSPの差別化要因になっていることが少なくない。料金の動的な調節ができれば、勝率を上げてパブリッシャーと広告主にもたらす価値を高めるために一部のインプレッションについて料金を下げ、その埋め合わせとして別のときに料金を上げてマージンを確保するということをSSPができるようになる。ある元アドテク幹部は「私が見たのはそうした使われ方だ」と語った。
たとえば、パブリッシャーが可変料金を有効にしているSSPが、決まった日までに埋めなければならないキャンペーンについて一部広告の料金を抑えるということがあり得るだろう。料金を下げればその広告主の入札額が高いままになりインプレッションを得られるかもしれないからだ。別のケースで、予定より早く進んでいるキャンペーンがあるかもしれない。その場合、SSPの料金を上げることで、そのキャンペーンを抑制してスケジュールにあわせ、開放されたインベントリーにほかの広告主が入ることでパブリッシャーの収益が上がるということがあるかもしれない。
困難と利点のバランス
可変料金に利点はあれど、個々のインプレッションに料金がどう適用されているのかをパブリッシャーや広告バイヤーに伝えることの難しさが、利点を凌駕する可能性がある。それに伴う透明性の欠如、あるいは透明性の制限から、プログラマティック広告の隠れている料金に敏感になっている広告主たちは可変料金を敬遠するのではないか。こうした透明性を巡る懸念から、アップネクサス(AppNexus)、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)、パブマティック(PubMatic)、ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)は、各社とも可変料金は提供していないとしている。
SSP料金を広告バイヤーに共有しにくくなるという理由で、パブリッシャーはSSPの可変料金を有効化するのは難しいと考えるのではないか。たとえば、ドットダッシュ(Dotdash)はGoogleのSSPとオープンXを通じてインベントリーを販売しているが、どのSSPについても均一料金を貫いている。こうすればSSPの料金を広告バイヤーに明らかにできると、ドットダッシュでプログラマティックの収益と戦略の責任者を務めるサラ・バドラー氏は語った。
Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)