「謎の差額はどこへ消えた?」: プログラマティック広告の透明性、再度求める広告主たち

広告主が支出を減らすなか、広告購入のサプライチェーンの透明性を向上させようとする動きが再び活発化している。

イギリスの広告業界団体ISBAの調査によれば、広告費用の半分近く(49%)が、パブリッシャーに届く前に消えるとされる。同調査によれば広告費用のうち3分の1以上(34%)は、エージェンシーやアドテクベンダーがインプレッションに応じて得る公開手数料となっている一方で、15%はアトリビューション不明の「謎の差額」となっている。また、同調査ではアドフラウドやビューアビリティを考慮していないため、パブリッシャーに届く費用はさらに低くなると思われる。

プログラマティック広告でパブリッシャーに渡らない資金はかなり多く、資金の行方の追跡も難しさを増している。ISBAは報告書のなかで、このデータを入手するのに苦戦し、アドテクベンダーからデータを入手するのに9カ月もかかったと記述している。また、そうして入手したデータの大半は利用できない形式のものだったという。

ISBAは広告主15社、エージェンシー8社、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)5社、サプライサイドプラットフォーム(SSP)6社、英国広告主協会(ISBA)に所属するパブリッシャー12社から1月1日から20日にかけての合計2億6700万インプレッションのデータを取得した。またPwCがこの調査のために3月のインプレッションデータを取得している。こうして集められたインプレッションは290のサプライチェーンを介していたが、そのうちログと集計データを照合して実際に分析されていたのは、3100万件(12%)にとどまっていた。

PwCでマーケティング保証担当パートナーを務めるサム・トムリンソン氏は、特に各インプレッションデータへのアクセスは予想より難しく面倒な作業だったと述べている。広範囲にわたる機密保持契約があるため、同氏のチームはアドテクベンダーのデータ入手に苦労することが多かったという。PwCが得たデータも形式が異なるものが多く、広告主の資金を多数のパブリッシャー間で追跡するのが難しい場合も少なくないという。調査に参加した広告主は平均で4万525のサイトに広告を出しており、大半はプレミアムコンテンツではなかった。

「謎の差額」の正体は不明

入札を通じてこういったサイトに広告を出すのはシンプルな考え方に思えるが、実施プロセスは複雑だ

広告主やエージェンシーはDSPを活用し、購入すべきインプレッションと購入金額を決定する。一方パブリッシャーはSSPを使って広告主にインベントリーを販売している。PwCは、この2種類のプラットフォームのインプレッションデータをなるべくすりあわせる作業を行った。それでも広告主にとってもパブリッシャーにとっても満足の行くような財務的透明性を備えたデータは得られなかったという。たとえば報告書でも「謎の差額」がどんなものかは解明されていないと指摘している。こういった謎の費用として、アドテクベンダーの追加手数料、オークション後のビッドシェーディング取引契約といった表にあらわれない要素が考えられる。

「プログラマティックのエコシステムは昔ながらのプロセスの上に構築されており、滅茶苦茶な様相を呈している」とトムリンソン氏は語る。

同調査に参加したBTグループ(BT Group)のメディア部長を務めるグレイム・アダムズ氏は「費用を余さず追跡できるようにする必要がある。そのために基準となるものを業界に浸透させ、そして透明性を向上させねばならない」と語る。「それが達成されれば、チャネルへの投資を増やせるだろう。もし実現できないのであれば、予算を減らして取引の方法を見直さなければならない」。

透明性を確保するのは困難

費用も障害のひとつとなっている。たとえばISBAの研究でさまざまなソースからデータを収集、標準化し処理するのにかかった費用は100万ポンド(約1.3億円)にのぼる。ほかにも問題となるのが、ログファイルデータを獲得したところで、透明性の確保は容易ではないとマーケターが考えている点だ。ISBAの調査でわかるのは、ログファイルデータによってプログラマティックの透明性を完全に確保できる可能性もある一方で、まったく明らかにならない場合もあるということだ。

デジタルメディアコンサル企業のデジタル・デシジョンズ(Digital Decisions)でマネージングパートナーを務めるルーベン・シュルアー氏は「ログファイルデータをリアルタイムで一致させるというやり方は過剰といえる。まるで1+1の計算をさせるためにIBMワトソン(IBM Watson)のスーパーコンピューターを買うようなものだ」と語る。

そして広告主はより「分別のある効率的な」方法を採用できるという。それは主要パートナーとなっているパブリッシャーに対する支出を定期的に確認し、パブリッシャーの合計データとすり合わせる手法だと同氏は指摘する。

これにより「サプライチェーンの最適化と、十分なデータをもとにした適切な決定とアウトプットが可能になる」と,シュルアー氏は語る。「単純な問題を解決するのに、業界全体で無駄に複雑な技術的ソリューションを推進するのはやめるべきだ」。

透明性を改善する一助となる

いずれにせよ、規制が入ることも考えられるなか、今回の調査はアドテク業界がインプレッションに関する財務とデータの透明性を改善する一助となるはずだ。

ISBAのメディアおよび広告担当ディレクターを務めるスティーブ・チェスター氏は次のように述べている。「もし広告業界がこれを実施すれば、よりオープンで透明な市場が実現する。そうすれば規制が入る必要もなくなるだろう」。

SEB JOSEPH(原文 / 訳:SI Japan)