ヘッダー入札は、Googleによるプログラマティック広告の支配を断ち切りたいというパブリッシャーの要求から生まれた。そしていま、GoogleのライバルであるAmazonが、ヘッダー入札の進化系といわれるサーバーサイド入札でトップを走っている。
ヘッダー入札は、Googleによるプログラマティック広告の支配を断ち切りたいというパブリッシャーの要求から生まれた。そしていま、GoogleのライバルであるAmazonが、ヘッダー入札の進化系といわれるサーバーサイド入札でトップを走っている。
サーバーサイドのヘッダー入札ツールを手がけるサーバービッド(ServerBid)が10月4日(米国時間)に発表した調査レポートによると、広告業界でもっとも人気の高いサーバー・トゥ・サーバーのラッパーは、Amazonの「トランスパレント・アド・マーケットプレイス(Transparent Ad Marketplace)」だ。
パブリッシャーがこの製品を採用している理由は、独自の需要をもたらしてくれることと、異なる複数のプラットフォームにまたがってユーザーをマッチングできることにある。また、多くのパブリッシャーと、そのテクノロジースタックをコントロールしているGoogleに対抗できる機会を提供してくれることも理由のひとつだ。アドテクツールのほとんどは似たり寄ったりだが、Amazonのツールはほかにはないものがある。独自の購買データと行動データだ。
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Amazonならではの魅力
Amazonの広告マーケットプレイスには独自の需要があるため、プログラマティックのCPM(インプレッション単価)を高めたいと考えるパブリッシャーにとって、Amazonのラッパーは魅力的なオプションになっている。そう語るのは、マーケティングコンサルティング会社のインターマーケッツ(Intermarkets)で販売およびプログラマティック戦略担当VPを務めるエリック・リクワイダン氏だ。
オンライン教科書レンタル会社チェグ(Chegg)で広告担当バイスプレジデントを務めるエムリー・ダウニングホール氏によると、パブリッシャーがAmazonのラッパーを利用するもうひとつのメリットは、セットアップや調整が簡単な点だという。たとえば、サプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)の追加と削除が簡単にできる。また、ページとサーバーサイドのあいだで入札者を簡単に切り替えることも可能だ。
サーバー・トゥ・サーバー接続の問題点は、SSPとデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)にとって、ユーザーIDのマッチングが難しくなることだ。ページヘッダー入札では、各SSPがユーザーのブラウザにアクセスする。そのため、自社でマッチングデータを集め、そのデータを利用してDSPのマッチングデータと同期できる。これに対し、サーバー・トゥ・サーバーのラッパーでは、あるベンダーがほかのすべてのベンダーからの入札をクラウドベースの製品にまとめ、そのベンダーだけがユーザーのブラウザにアクセスする。したがって、残りのベンダーは、自社のデータをそのベンダーがまとめたデータと同期する必要がある。この余分な手順のために、マッチ率が低下する可能性がある。そして、これこそが、パブリッシャーがサーバーサイドの入札に消極的な理由のひとつだ。
拡大するAmazonの勢力
Amazon以外のテクノロジーベンダーは、サードパーティのデータから推測しなければ、大規模なデータベースを作成できない。しかしAmazonは、自社のさまざまな製品を利用している膨大な数のユーザーから直接データを取得している。大量のユーザーから多くの情報を得られるため、Amazonは自社のラッパーで複数のベンダーにまたがってユーザーデータをマッチングすることで、サーバーサイドの入札に存在する問題のひとつを回避できると、アメリカの大手出版社メレディス(Meredith)で、データおよびプログラマティック担当バイスプレジデントを務めるチップ・シェンク氏は指摘する。
Amazonのラッパーが人気を集めている事実は、同社が広告業界で足がかりを築いていることを示す最新の事例に過ぎない。同社はすでに、販売チームを拡大し、セルフサービス型のプログラマティック広告製品を開発し、動画パブリッシャーを引き込もうとしている。
また、ほかの企業が四半期業績発表の場でAmazonに言及する例が増えている。さらにAmazonは、ニューヨークの新しいオフィスで2000人のスタッフを新たに採用した。なお、本記事の執筆にあたり、筆者はAmazonに取材を申し込んだが断られた。
パブリッシャーに人気の理由
ヘッダー入札が増えている理由は、Googleのアドサーバーが自社のエクスチェンジを優先していることにパブリッシャーがフラストレーションを感じているからだ。したがって、Googleの独占状態に対抗したいと考えるパブリッシャーが現れるのも驚きではない。
パブリッシャーがAmazonのサーバーサイドラッパーを採用する理由のひとつは、AmazonをGoogleの対抗勢力とみなしているからだと、テクノロジー系パブリッシャーのパーチ(Purch)でCTOを務めるジョン・ポッター氏はいう。
「パブリッシャーやSSPの誰もが懸念するのは当然だ」と、ポッター氏は指摘する。「広告の分野でGoogleがこれ以上力を持つことを誰も望んではいない」。
Googleの王道戦略
ただし、Amazonを追い越せる企業があるとすれば、それはGoogleだ。Googleのサーバーサイド製品であるエクスチェンジ入札は、いまも試験段階だが、これを利用しているパブリッシャーの数は5月の100社から185社に増えたと、Googleの広報担当者は述べている。2018年はじめには、Googleのアドサーバー「クリック・フォー・パブリッシャー(DoubleClick for Publishers)」を利用しているすべてのパブリッシャーにエクスチェンジ入札を開放する予定だという。
とはいえ、サーバー・トゥ・サーバー入札がまだ登場間もないものであることは知っておいてよい。Amazonはこのテクノロジーを早くから導入したが、そのラッパーは登場からまだ1年も経っていない。
Amazonは、早い段階で高い採用率を獲得したことで「やや有利なスタートを切ることができたが、サーバー・トゥ・サーバーの戦いでどこが勝つのか決まったわけではない」と、メレディスのシェンク氏は語った。
Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)