Twitterにとって、「フォーカス」が今年の大きなテーマだ。最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシー氏が照準を合わせた分野はプログラマティック広告になる。しかし、現時点でTwitterは、GoogleやFacebookといったはるかに大きなライバルに後れを取っている。その内情を追った。
Twitterにとって、「フォーカス」が今年の大きなテーマだ。最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシー氏が照準を合わせた分野はプログラマティック広告になる。たとえば5月、デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)であるターン(Turn)の元CEOでアドテクのベテラン、ブルーズ・ファルク氏を、Twitterのレベニュープロダクトの責任者として採用した。またカンヌでは、Twitterはアドテクを諦めておらず、今年はサードパーティと協力することでプログラマティックへの投資を増やしていくと語った。
期待外れだった買収劇
それでも現時点では、TwitterはGoogleやFacebookといったはるかに大きなライバルに後れを取っており、これまでのアドテク買収を広告ポートフォリオ全体にどのように当てはめればいいのか、Twitterはまだ答えを見つけられていないという声が、アドテク業界には多い。Twitterは、Facebookのようにプラットフォームの外でプログラマティックによって広告を売ることもできず、GoogleのようにDSPに直接接続することもできない(もっとも、Twitterは複数のソーシャル入札管理ツールにつながるし、アプリケーションプログラムのインターフェイスベースの購入には対応している。一部のアドテク幹部はAPIベースの購入について、プログラマティックの一形態だという見方をしている)。
さらに、Twitterが全体として何を目指しているのかを問う声もある。Twitterは2013年にモバイルエクスチェンジのモーパブ(MoPub)を買収し、2015年にはリターゲターのTellApart(テルアパート)を買収したが、エージェンシーらによると、その後、どちらも期待外れな結果に終わったという。
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「Twitterには明確な戦略がない。モーパブはオーディエンスネットワークの拡充に向けた明確な動きだと見られていたようだが、以降、あまり活かされていない。一方、テルアパートはというと、一度も完全に統合されることなく、いまでは閉じられている」と語ったのは、プログラマティックのエージェンシーであるグッドウェイ・グループ(Goodway Group)で最高執行責任者(COO)を務めるジェイ・フリードマン氏だ。「どちらの買収も、結局のところ(Twitterの)中核製品の核心的なニーズを満たすことはなかったし、どちらも長いこと独立企業のままなのは意味がない」。
セールス意欲もない様子
一方、エージェンシーのアイクロッシング(iCrossing)でメディア担当バイスプレジデントを務めるスコット・リンザー氏と、エージェンシーのRPAでデジタルマーケティングのディレクターを務めるニコラ・ペリゴ氏によると、Twitterがメディアバイヤーへの売り込みをかける際、モーパブやテルアパートのような自社プログラマティックソリューションを積極的に押し出すことは決してないという。両氏ともTwitterがプログラマティックを売り込むのを見たことがなく、オーディエンスターゲティング機能やデータ管理機能の話を聞くことが多いという。
「もしかすると、Twitterにとってはアドテクに進出する必要がまだないのかもしれない」とリンザー氏は言う。「Twitterはまだデータの取り扱いに習熟していないので、個々のユーザーを本当に理解するためにまずデータを改善し、そのうえでプログラマティックに投資するほうが重要だ」。
プログラマティックに関する独自技術の開発よりもデータ機能の改善のほうが価値があるのかもしれないという意見には、フリードマン氏も同意した。TwitterのユーザーはFacebookユーザーよりも自分の興味と深く関わっているので、Twitterにはマイニングすべき貴重なデータがたくさんある。「Twitterがデータをまだきちんとマネタイズしていないのは、私からすると驚きで、そのためTwitterは市場で不利な立場にある」とフリードマン氏は語った。
Twitterの広報担当者は、この記事に対するコメントを控えた。
すでに諦めているのか?
アドテクへのアプローチは企業によってさまざまだ。たとえば、Googleは、技術スタックを全面的に構築し、アドメルド(Admeld)やインバイトメディア(Invite Media)のような企業を買収することで、既存のサービスに欠けている部分を埋めてきた。Facebookは、独自のアドエクスチェンジを2016年に閉鎖し、Audience Network事業へと焦点を移した。これに対し、エージェンシーとアドテクの幹部たちによると、Twitterは明確なアドテク戦略が見つかっていないようだという。
それでも、Twitterにもアドテクのチャンスはあると、プログラマティックのエージェンシーであるケプラー・グループ(Kepler Group)で最適化とイノベーションを担当するシニアバイスプレジデントであるギャレット・デール氏は指摘した。FacebookがAudience Networkでやっているように、モーパブのネイティブネットワークをダッシュボードに接続すれば、Twitterがアドテクに適応するのは簡単にできるのだという。
「また、Twitterのデータに対し独占的な権利のあるTwitter DSPを作れば手っ取り早く稼ぐことが可能で、これはRTBのサプライエコシステム全体に及ぶものになるかもしれない」、とデール氏は言う。「しかし、Twitterはこれをすでに諦めているようで、デマンド、データ、サプライを(ソーシャルネットワークが)すべてコントロールしているFacebookの先例に倣う可能性が高まっている」。
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)