Twitterの「スナッピーTV(SnappyTV)」は、さまざまなパブリッシャーが利用している無料の動画編集ツールだ。彼らはこのツールを使ってテレビ映像を編集し、TwitterやFacebookなどいろいろなプラットフォームで公開している。だが、このスナッピーTVが終わりを迎えつつあるようだ。
Twitterの「スナッピーTV(SnappyTV)」は、テレビネットワークをはじめとするさまざまなパブリッシャーが利用している動画編集ツールだ。彼らはこのツールを使ってテレビ映像を編集し、TwitterやFacebookなどいろいろなプラットフォームで公開している。だが、このスナッピーTVが終わりを迎えつつあるようだ。Twitterはその代わりに、同社が力を入れているメディア企業向け製品「メディアスタジオ(Media Studio)」で新しい動画編集ソフトウェアを提供する予定だという。しかし、一部のパブリッシャーは、この変更によってTwitterのエコシステム以外の場所に動画を投稿できなくなると懸念している。
TwitterがスナッピーTVを買収したのは2014年のことだ。スナッピーTVは、パブリッシャーがライブ番組やリニア放送の映像をすばやく編集して、ソーシャルネットワークや自社サイトで公開できる技術を提供していた企業だ。情報筋によると、スナッピーTVを買収したTwitterは、この製品を利用するテレビネットワークの数をできるだけ増やしたいと考え、この製品を無料にしたという。唯一の制限は、まずTwitterでテレビ映像を公開してからでないと、ほかの場所で公開できないことだけだった。
情報筋によれば、Twitterはこの数週間、少数のテレビ局やそのほかのユーザーに対してスナッピーTVを「終わり」にする計画を伝えており、今年限りで終了になる可能性が高いという。新しいスナッピーTV風の製品は、スナッピーTVの改良版になるといわれている。
Advertisement
Twitterの計画
スナッピーTVのユーザーらは、新しいバージョンのツールでは、同じ動画クリップをTwitter以外の場所で公開する機能が廃止されるだろうと懸念を示した。具体的には、FacebookとYouTube、それにブライトコーブ(BrightCove)、ウーヤラ(Ooyala)、カルトゥーラ(Kaltura)などのベンダーが手がける動画プラットフォームで公開できなくなるだろう。
その兆候はすでに現れている。あるデジタルパブリッシャーによれば、スナッピーTVでは、サードパーティ製の動画プレーヤーへの直接アップロードは今後サポートされないようだ。
とはいえ、Twitterの計画はまだ準備段階だ。したがって、新しい動画編集ツールでさまざまなプラットフォームに動画を公開できるかどうかは未定だと、Twitterのある情報筋は語っている。Twitterの狙いは、動画編集機能をひとつのシステムにシームレスに統合し、同社のあらゆる動画ツールをメディアスタジオというひとつの場所で提供できるようにすることだと、この情報筋は説明した。これには、ライブ配信ツールやほかのパブリッシングツールも含まれる。ただし、Twitterはこの件について正式なコメントを発表していない。
スナッピーTVの浸透度
TwitterはスナッピーTVを利用しているメディア企業の数を明らかにしていないが、このツールは、フォックス(Fox)、The CW、ABCニュース(ABC News)、NBCニュース(NBC News)といったテレビネットワークや報道機関で広く利用されていると思われる。ライブ配信やニュース速報を多く手がけている企業でも、このツールを利用すれば、1時間程度で動画を編集して公開できる。あるテレビネットワークのソーシャルメディア担当幹部によれば、この企業がスナッピーTVを利用して制作した動画の数は、過去2年間で2万を超えるという。
動画パブリッシャーが動画の編集に利用できるツールは、ほかにもいくつかある。たとえば、ロンドンに本拠を置く新興企業のグレイビヨ(Grabyo)や、ブライトコーブ(BrightCove)といった企業のツールだ。だが、どちらも製品は無料ではなく、数十万ドルの費用がかかる場合があると複数のパブリッシャーが指摘している(一方、Facebookは今のところ、スナッピーTVのような編集ツールは提供していない)。
「当社では、サードパーティ製ソフトウェアで動画編集するための予算は計上していない。上層部がスナッピーTVの仕組みに満足しているからだ」と、先ほどのテレビ局幹部は語った。
新たなハードル
だが、スナッピーTVの魅力は、無料ですばやく編集できることだけにあるのではない。FacebookやYouTubeに直接動画を配信できるため、パブリッシャーはソーシャル動画のワークフローを簡素化できるのだ。
さまざまなプラットフォームで動画を公開できる機能がなくなるとしたら、ニュース速報の動画を編集して配信したいと考える放送局や報道機関にとって、新たなハードルが出現することになる。ある情報筋によると、以前スナッピーTVで技術的なトラブルが発生してサービスが2日間ほど停止したとき、動画を編集して複数のプラットフォームで配信するのにさらに4~5時間の手作業が必要になったという。「テレビ業界にとって、スナッピーTVは、テレビで放映した動画をTwitterやFacebookにもっとも早く投稿できる手段だ」とある情報筋はいう。だが、「今回の変更によって、ワークフロー上の大きな問題が発生する」ことになる。
「これ(今回の変更)はわずらわしさをもたらすだけだ」というのは、ある動画テクノロジーベンダーの幹部だ。このベンダーは、自社のサービスをスナッピーTVのAPIに接続している。「おそらく短期的には、Twitterにとってよい結果をもたらすだろう。企業はすでにこのワークフローを確立している。動画をほかの場所に投稿する作業を煩雑にすることで、Twitterは自社のプラットフォームだけで動画が公開されるようにできるのだ」とこの幹部は語った。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)