IPGのメディアブランズMAGNA部門は、ソーシャルメディアの安全性や業界の進展を図るため、2021年はじめから半年ごとにメディア責任指数(Media Responsibility Index:MRI)を公表している。米DIGIDAYは、第3回MRIの結果を同日に入手した。
人々の多くの時間と注目を引きつけている大手ソーシャルメディアプラットフォームは、消費者と広告主にとって、より安全な環境になろうと取り組んでいる。それは、ある程度は前進してきたと言ってもいいだろう。だが、改めるべき点を改めるまでには、まだ長い道のりがある、という方が、おそらく正確だ。
そうした不十分な点が、IPGメディアブランズ(IPG Mediabrands)のMAGNA部門が、2021年はじめから半年ごとに「メディア責任指数(Media Responsibility Index、以下MRI)」を公表するおもな動機だった。MRIは基本的に、データの収集および利用、誤情報や虚偽情報の水準、広告の透明性、敬意と多様性の奨励、ヘイトスピーチの監視と制限、ポリシーの強化、説明責任の強調といった分野におけるソーシャルメディアプラットフォームの取り組みについて、公平な評価を提供。評価にあたっては、プラットフォームからの回答のほか、独自レポートとソーシャルリスニングを頼りにしている。
メディアの責任におけるMRIの必要性
米DIGIDAYは、2022年2月2日に発表された第3回MRIの結果を同日に入手した。
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Facebook、インスタグラム、ピンタレスト(Pinterest)、レディット(Reddit)、 Snapchat、TikTok、ツイッチ(Twitch)、Twitter、YouTube(LinkedInもアンケートを送られたが、回答を拒否)に送られたMRIのアンケートの新しい重点分野は、生体データの収集と保存、性自認と広告ターゲティング、ヘイトスピーチに関するポリシー、BIPOC(黒人・先住民・有色人種)や少数派の制作者についての報告、誤情報に対するラベルなどだ。
MRIの必要性の証拠として、レポートでは、あらかじめ「米国人の64%が、ソーシャルメディアは現在の国内情勢にもっとも悪影響を及ぼしていると回答している」事実について言及されている。
だが、ソーシャルメディアが、米国人がコンテンツや意見を目にする唯一の手段ではない。今後のMRIでは、ほかのメディアに対象を拡大していくと、レポートを監督するMAGNA部門でグローバルデジタルパートナーシップおよびメディア責任担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるエリヤ・ハリス氏はいう。「規模を拡大してもっと大きな影響を及ぼすためには、注目するメディアの種類を広げることが必要になるだろう(中略)。いまはまだ、投資全体のごく一部しか対象にしていない」。
ハリス氏は、MRIにはもうひとつ、IPGが事業展開するさまざまな国と地域が、レポートの各要素を現地のニーズや課題に合わせてカスタマイズできるようにするという拡大計画がある、と付け加えた。MAGNAの米国担当プレジデントであるダニ・ベノウィッツ氏は「いつか、顧客の支出先すべてを対象にするのが目標だ。それは大きな指数になる」と続けた。
MRIが示すメディアの責任の指標
ブランドセーフティ、表現、悪意ある者の行為に対する対応、データの精度、バイアスの除去の問題について、業界を前進させる取り組みを行っているのは、IPGだけではない。持ち株会社がそれぞれ、これらのうち少なくともいくつかの分野に多くの力を注いでいる。だが、おおむね間違いなく、MRIがもっとも広範であり、メディアの責任に対するソーシャルプラットフォームの取り組みについて、評価対象の以下の5要素に取り組んでいる。
- 広告管理
- 執行
- ポリシー
- 報告
- ユーザー管理
「絶えず適応させて、周囲の状況とともに変わるようにしている。顧客は100%、我々にそうしたことを求め、期待している。顧客は、我々がメディアパートナーに、そして自分たちに説明責任を負わせることを期待している。またその方法について我々にガイダンスを求めている」とベノウィッツ氏は話す。
「安全性は絶えず進化するトピックだ」と、TikTokでブランドセーフティおよび業界関係担当グローバル責任者を務めるデビッド・バーン氏はいう。「昨年は『クラスで一番』だったかもしれないものが、すぐに業界標準になる。事前対策を取ることの重要性を浮き彫りにしている」。
回答したすべてのプラットフォームのなかで、Twitterがもっとも全体的パフォーマンスが良かった、とハリス氏は言及した。今回のレポートでは、Twitterは、広告管理を除くすべての評価対象で、以前のレポートよりパフォーマンスが向上していた。
Twitterのグローバルブランドセーフティ戦略担当責任者、ケイトリン・ラッシュ氏によると、今回のレポートは、ブランドセーフティ分野だけでなく自社の進捗状況をより良く追跡し続けるのに役立ったという。「1年以上にわたってMRIの評価対象になっているので、進捗状況の確認や評価ができる。このように長期にわたる変動がわかることは、我々にとって本当に有用だ」。
特に問われるブランドセーフティ
ラッシュ氏は、MRIの重要な要素としてのブランドセーフティの範囲拡大にも言及した。「本レポートで進化したトピックの一部は、企業がDE&I(多様性、公平性、包摂性)に関する目標をどのようにサポートしているか、責任ある機械学習やアルゴリズムの透明性に対応するために何をしているかといった、より全体像を見ることに重点を置き始めている」。
レポートは、Facebookの内部資料、Facebookペーパーズの流出と内部告発者フランシス・ホーゲン氏の2021年秋の証言に言及し、Facebookは進歩しているものの、後ろ暗い要素をわかりにくくしているのが見つかったことも示している。
ハリス氏が説明しているように、「ポリシーの基盤、メタ(Meta)のプラットフォームが利用している管理ツール、そしてそれらが活用する検知技術については、そうしたシステム内に絶対的な業界リーダーシップがある」。いわく、「その妨げになっているのはポリシーや規則を適用する際の一貫性であり、そこで問題が発生している。我々やほかの業界団体は、具体的には、有害なコンテンツや違反コンテンツの横行に関する報告方法について、独立した関係者と協力するよう、そうしたプラットフォームに対して特に促してきた」。
最終的に、第3回MRIは、プラットフォームに以下の勧告をしている。
- プラットフォームのポリシーに違反しているコンテンツすべてのラベル表示の拡大
- アルゴリズムによるバイアスへの完全な監査
- より慎重であること
- 「プラットフォームにおけるコンテンツ視聴総数に対する違反コンテンツの視聴回数の割合を示す」、YouTubeとスナップ(Snap)が最近開発した指標「違反コンテンツ視聴の割合(VVR:Violative View Rate)」の業界全体への導入
- TikTokがほかのソーシャルプラットフォームに提案した覚書に示されているように、プラットフォーム間で協力して、「有害なコンテンツ」を制限すること
「我々は、専門家や業界団体、ブランドパートナーと定期的に提携し、ポリシーや慣行、解決策に関する情報提供を手助けしている。業界として、ユーザーのコミュニティと制作者、ブランドのあいだで信頼を構築・維持するために、透明性が不可欠だ」とTikTokのバーン氏は指摘している。
MICHAEL BÜRGI(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:小玉明依)