Twitterは5月19日自社広告配信網であるTwitterオーディエンスプラットフォーム(以下TAP)を通じて、モバイルアプリだけでなくウェブサイト、モバイルサイトにも広告を掲出するテストをしていると発表した。同社プロダクトマーケティング・ディレクターのケルトン・リン氏は20日、メディア数社向けにラウンドテーブルを行い、TAPが持つ在庫を通じて「8億人へのリーチの可能性がある」と訴えた。
Twitterは5月19日自社広告配信網であるTwitterオーディエンスプラットフォーム(以下TAP)を通じて、モバイルアプリだけでなくウェブサイト、モバイルサイトにも広告を掲出するテストをしていると発表した。同社プロダクトマーケティング・ディレクターのケルトン・リン氏は20日、メディア数社向けにラウンドテーブルを行い、TAPが持つ在庫を通じて「8億人へのリーチの可能性がある」と訴えた。
Twitterは近年モバイルまわりのアドテク分野を強化し、Twitterの外のアプリにリーチを広げることで収益源の拡大を図ってきた。その核となるのが、2013年9月に3億5000万ドル(約385億円)で買収したと発表したモバイル・アドサーバーのMopub(モーパブ)だ。Mopubは買収時、取引額が1億ドル(約110億円)程度。Facebookは同時期、AOLも2015年にモバイル広告関連の買収をしている。各社が長期的に拡大を見込めるモバイル広告領域に投資する時期だった。
Twitterは2014年にTAPの前身のプラットフォームを立ち上げており、アドテク企業TellApart(テルアパート)の買収を最終的に4億7900万ドル(約520億円)で完了した。この買収によりTwitterでもクロスデバイスでのリターゲティングを可能になると言われる。
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「高品質」在庫をクロスデバイスで
「現状、Mopubにおける日本のアプリの在庫はあまり多くはない。海外のアプリがもつ日本の在庫はある。なので、今後は日本のアドエクスチェンジなどと連携して、在庫を拡大する必要がある。国際的な拡大を図っているところだ」とリン氏は東京都中央区の同社オフィスで説明した。
リターゲティングをめぐっては「ほかのソーシャルメディアのような外部のプラットフォームとの連携はしない。Twitterのみによる提供だ」と語った。TellApartのテクノロジーを活用し、アプリに加えウェブサイトにも、ウェブサイトへの誘導、アプリのインストールを目的としたキャンペーンのテストを実施しているという。「Mopubを通じてTwitter内と外に広告を打てるし、管理画面で両者の効果を比較することもできる」とリン氏は語った。
「広告主は在庫の質とともに、Twitterのオーディエンスの質に関しても気にしている。Twitterのオーディエンスの質はとても高い。また、Twitterと(パートナーの)ウェブサイトの両方を視ているユーザーの価値は高い。在庫に関してはブランドポリシーに準拠しているものだけ選んでいる。TAPの在庫は、プレミアムな在庫に対して表示することができる」。
「プレミアムな在庫だけに興味がある広告主もいれば、掲出先にはあまりこだわらず、ロングテールの在庫も気にせず利用する広告主もいる」。
非ログインユーザーの活かし方
リン氏はTwitterは豊富なログインユーザーを活かしていると話す。「多くのユーザーがTwitterにログインしており、豊富なデータを確保できている。ログインしない訪問者もたくさんのデータをもたらしている」。
Twitterは全世界の2016年第1四半期の平均月間アクティブユーザー数3億1000万人と同数程度のログインしないユーザーがいると同社はみており、この層のマネタイズを試行錯誤していると言われる。「ユーザーのTwitterでの行動に加えて、外のアプリでの行動を加えることで、彼らのコンテクスト(文脈)にアプローチできる。ほかのアプリもTwitterの広告のターゲティング、予測に貢献している」。
「ユーザーがどんなウェブサイトやアプリを訪れ、製品を購入するか、アプリをダウンロードしたりするかを知ることができる。追跡したコンバージョンのデータは広告主と共有しているので、広告主は広告の効果を知り、広告予算配分を最適化することができる」と説明した。
Twitterのアカウントからはユーザーの詳細な属性データを得ることができない。「Twitterはユーザーの興味関心に重きを置いている。属性データではなくインタレスト(興味関心)データを知るのにTwitterはふさわしいだろう。同じ性別・年齢の人物でも、極端に違う興味関心をもっていることがある。たとえば、同年齢の性別でランニングのようなスポーツに興味がある人もいれば、テレビゲームが好きな人もいる」。
リン氏はこう説いた。「TAPの在庫の質、ターゲティング力、数千のアプリとの連携により、素晴らしい価値を提供できる。Twitterのアプリからはユーザーの位置情報も手に入れることができる」。将来的には位置情報と広告主が保有するデータ、サードパーティデータと組み合わせることも、視野に入れているかもしれない。
Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock / Getty Images