マスク氏がTwitterを買収するというアイデアを最初に持ち出してから買収完了まで、Twitterは広告費、価格、ユーザーの変動を目の当たりにしてきた。今回の記事では、Twitterとその新しいオーナーであるイーロン・マスク氏の気まぐれな関係がどのように推移してきたかについて、概要を説明しよう。
Twitterとイーロン・マスク氏──今は何を読んでも、このドラマの展開が見出しに登場しないことはない。
何カ月も前の4月14日に、マスク氏がTwitterを買収するというアイデアを最初に持ち出してから10月27日の買収完了まで、Twitterは広告費、価格、ユーザーの変動を目の当たりにしてきた。
今回の記事では、Twitterとその新しいオーナーであるイーロン・マスク氏の気まぐれな関係がどのように推移してきたかについて、概要を説明しよう。
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広告費はマスク氏のいないところへ
センサータワー(Sensor Tower)によると、2022年4月の米国における、同社の広告主上位10社の平均週間支出額は60万8000ドル(約8520万円)だった。これが5月には57万3600ドル(約8040万円)、6月には再度(わずかではあるが)57万2000ドル(約8020万円)にまで落ち込んだ。
確かに、Twitterでの広告がこのように変動した背景にはあらゆる理由がありそうだが、そのひとつとしてマスク氏の存在を無視することはできない。どちらかというと、2022年のTwitterでの広告は、マスク氏とTwitterの距離が近づくほど落ち込む傾向が強くなっている。
話を数字に戻そう。センサータワーのデータによると、米国での同社の平均週間広告費は、トップ10の広告主で7月までには92万4100ドル(約1億2950万円)に増加し、8月にはさらに増えて94万5800ドル(約1億3260万円)となった。この時期にはマスク氏が、Twitter側がスパムアカウントの取り締まりを拒否し取引条件に違反したとして、Twitter買収の合意を解消する予定だと述べていた。
9月までにTwitterでは、上位10社の広告主による米国での平均週間支出額が94万4200ドル(約1億3240万円)となり、若干の落ち込みとなっていた。このとき、Twitterによるマスク氏に対する宣誓証言(7月にデラウェア州衡平法裁判所に提出されたTwitter買収撤回をめぐる訴訟の一部)が9月26~27日に行われることとなり、必要であれば9月28日まで延長される見込みだったため、緊張感はさらに高まっていた。しかし、法廷ドラマとは関係なく、取引は完遂されるように見え、問題はタイミングだけだった。
「広告を出すべきプラットフォーム」ではない
10月に入り、買収を前にして、米国における上位10社の広告主の平均週間支出額は、再び減少して87万7200ドル(約1億2300万円)になった。そして当然のことながら、マスクのTwitter買収が決まったわずか1週間後には、週平均の広告費は58万9100ドル(約8260万円)にまで減少したのである。
繰り返しになるが、どんな広告ビジネスでも、広告費の出入りに影響を及ぼす要因はいくつかある。それでも、マスク氏はTwitterの広告に圧倒的な影響力を持つ人物のひとりであり、いまもそうであり続けている。
Twitterでの広告休止は、予測を信じるとすれば、長い別れになるかもしれない。インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)によると、2024年までのTwitterの広告予測は、3分の1以上(39.1%)削減されている。このところTwitterの将来についてあまりにも多くの不確実性があり、広告主が広告費を投入することに警戒心を抱いている。
これはマスク氏だけの問題ではなく、経済状況が悪化しているからこそ、広告予算もより少ない領域に集約せざるを得なくなっている。Twitterは、広告を出すべきプラットフォームのひとつではないことがわかってきた──ただ、少なくとも当面はそうではないようだ。
マスク氏買収のはるか以前から、Twitter向け広告費は減少
マスク氏は確かに、Twitterをニュースの最前線に導いたが、この買収によって、すでに膨張し、爆発を待っていた問題が浮き彫りになった。その問題の中心は広告費、いや、むしろその不足だ。
大手消費財メーカーのモンデリーズ(Mondelez)を例にとってみよう。分析会社パスマティクス(Pathmatics)によると、2019年以降、同社の米国でのTwitterへの広告費の伸びは鈍化している。2019年には1350万ドル(約18億9200万円)を費やし、その1年後には55%増の2100万ドル(約29億4400万円)に、そして2021年にはその金額が43%増の3010万ドル(約42億1900万円)になった。2022年に入ってからの10カ月間、モンデリーズの支出は13%増の3420万ドル(約47億9400万円)だった。
クラフト・ハインツ・カンパニー(Kraft Heinz Company)でも同じような状況だ。2019年から2020年にかけて、同社の米国でのTwitter広告費は2080万ドル(約29億1600万円)から2840万ドル(約39億8100万円)へと37%増加した。1年後の広告費は3730万ドル(約52億2900万円)に達し、前年比31%増となった。だが、2022年には劇的に支出を抑制したようで、クラフト・ハインツはパスマティクスの分析による上位15社の広告主から完全に脱落した。
ユーザーの目的は主にゴシップ
センサータワーは、10月15日~10月26日のあいだに、App StoreとGoogle PlayからTwitterアプリのインストールが全世界で約630万件あったと推定している。10月27日にマスク氏が買収手続きを終えると、アプリのインストール数は11月7日までに760万件に増加した。
マスク氏自身のTwitterでのフォロワーも同様に増加。マーケティング分析企業のエンプリファイ(Emplifi)によると、物議の種をもたらしたビリオネアは先月、Twitterで520万人のフォロワーを獲得したが、そのほぼ半分は10月24日~10月30日のあいだ、つまり取引完了日を挟む数日間のうちに蓄積された。急増はそれだけにとどまらず、先頃行われたTwitterスタッフの残酷な淘汰のあと、マスク氏のフォロワーはさらに240万人増えている。
これらのことから、人は大惨事を好み、Twitterの大混乱はいま起こっている出来事のなかで最大のもののひとつだということだ。
[原文:Tired of hot takes on Elon Musk’s ownership of Twitter? Let’s talk numbers]
Krystal Scanlon(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)