TikTokはコマースプラットフォームのティースプリング(Teespring)との提携を発表した。両社はTikTokのクリエイターがアプリ上でグッズ販売できるようにする。TikTokは、同アプリが10代の若者が動画を共有するだけのプラットフォームではないことを示したいと考えており、これは重要な一歩といえる。
TikTokが、新たなコマースプログラムの実現に邁進している。
9月上旬、TikTokはコマースプラットフォームのティースプリング(Teespring)との提携を発表した。詳細は発表されていないが、両社はTikTokのクリエイターがアプリ上でグッズ販売できるようにする予定だという。TikTokは、同アプリが10代の若者が毒にも薬にもならないような動画を共有するだけのプラットフォームではないことを示したいと考えており、これは重要な一歩といえる。
多くのブランドが参入を検討
また、TikTokは中国政府とのつながりが取り沙汰されており、米国政府からは米国事業の売却を迫られている。売却先の候補としてはウォルマート(Walmart)すら挙がっているが、具体的にどうなるかは不明なままだ。一方、TikTokのアプリ自体は絶好調となっている。米国における月間アクティブユーザー数は1億人を突破した。不透明な状況にあっても、さまざまなブランドがTikTokへの参入を検討している状況だ。
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グロースマーケティングおよびデザインエージェンシーのスロープ(Slope)で共同経営者を務めるカリン・スー氏は、最近行われた米DIGIDAYの兄弟サイト、モダン・リテール(Modern Retail)のインタビューで「クライアントからはSnapchat、ピンタレスト(Pinterest)、レディット(Reddit)、そして今はTikTokについての問い合わせが多い」と語っている。
ブランドがまだ本格参入を始めていないのは、TikTokにおける広告配信がまだ比較的初期段階にあるためだ。確かに、広告主からすればTikTokのCPMは1ドル(約106円)から4ドル(約420円)で、Facebookの9ドル(約950円)から10ドル(約1060円)と比べれば大幅に安い。だが、デジタルエージェンシーのワラルーメディア(Wallaroo Media)を創業したブランドン・ドイル氏が最近モダン・リテールに語ったように、「TikTokのピクセルは他のプラットフォームほど強力ではない」。つまり、少なくともFacebookやGoogleといった成熟した広告システムと比べれば、TikTokにおける広告のインパクトの追跡はいまだ推測に頼らざるを得ない部分が大きい。
ティースプリングとの提携
ティースプリングとの提携が意味するところは大きい。TikTokが動画上の広告だけでなく、収益源としてコマースに本気で取り組む姿勢を示しているためだ。ティースプリングは40万人以上のクリエイターを抱えており、YouTubeやFacebookなどのSNSを通じて自分たちの商品の販売を行っている。たとえばYouTubeのクリエイターは、ティースプリングを介して、自分たちのブランドのマーケットプレイスへリンクする形で動画上に商品を展示している。
ティースプリングのクリス・ラモンターニュCEOは、TikTokとティースプリングが昨年を通じて話し合いを進めてきたと述べている。そのなかでTikTokは「クリエイターのための収益化の機会を増やす」ことを目的としていたという。ティースプリングは、クライアントがアプリ上で簡単に商品展開できる方法を提供する企業だ。どのような形で実際に統合されるか詳細は明らかになっていないが、ローンチは9月末を予定しており、現在は調整中だという。
それでも今回の統合はすでに大きな話題を呼んでいる。ティースプリングはローンチに向けてTikTokのクリエイター7000名と試験運用を行っているという。「現在は7900名のクリエイターが協力している」とラモンターニュ氏は語る。今回のベータテストに対し、一晩で900名の申し込みが殺到したとのことだ。
さらに人を呼び込む可能性
現時点ではTikTokアプリ上で実際の決済が行われることはなさそうだ。「Tiktokのクリエイターが商品のプッシュフィードをTikTok上で行えるようにする」と、ラモンターニュ氏は語る。「実際に購入する段階で、ティースプリングへと移動する仕組みだ」。同社はフルフィルメントを始めとする購入システムを担当する。
リーバイス(Levi’s)やメイシーズ(Macy’s)など、多くのブランドが若い層に向けたマーケティングの場としてTikTokを試している。各社のキャンペーンは、新たなハッシュタグを作ったり既存のハッシュタグを活用したりして、アプリ上でオーガニックにバズらせることを重視している場合が多い。ティースプリングとの提携によるコマース機能の充実が、さらに人を呼び込む可能性は高い。
とはいえTikTokのショッピング機能はいまだFacebookやGoogleに及ぶものではない。たとえばFacebookは、インスタグラムにおける取引機能を強化し、ショップのサービス提供を行ってきた。
「主役はクリエイターだ」
今のところ、TikTokの戦略は、ユーザーフレンドリーなコマースプラットフォームと提携し、コマースを普及させることにあるようだ。
ラモンターニュ氏は次のように語っている。「主役はクリエイターだ。クリエイターの収益化をどのように支援できるかを考えている」。
[原文:TikTok’s new partnership hints at commerce ambitions]
Cale Guthrie Weissman(翻訳:SI Japan、編集:長田真)