TikTokが多くのマーケティング予算や戦略の柱となるなか、一部のマーケターは、ブランドアカウントを自前で立ち上げることをためらい、TikTokに強いエージェンシーや専門家を探し始めている。 たとえば、グローバルリテール […]
TikTokが多くのマーケティング予算や戦略の柱となるなか、一部のマーケターは、ブランドアカウントを自前で立ち上げることをためらい、TikTokに強いエージェンシーや専門家を探し始めている。
たとえば、グローバルリテール企業のジ・アスリーツフット(The Athlete’s Foot)は、TikTokでブランドアカウントを作成してマーケティングを展開している大勢の企業の列に加わっていない。同社でマーケティングおよびコミュニティエンゲージメント担当バイスプレジデントを務めるダリウス・ビリングス氏によれば、アトランタに本拠地を置く同社は、このショート動画アプリでのマーケティング活動を自前で管理するのではなく、TikTok専門のエージェンシーを探すことにしているという。
「ブランドとしては、まだTikTokに関与していない」と話すビリングス氏は、「TikTokでは、必要に応じてユーザー生成コンテンツ(UGC)が常に生み出されるようにしなければならない」と指摘した。ジ・アスリーツフットは今、買い物客がサイトから直接商品を購入できるeコマース機能を組み込むべくデジタル戦略を刷新しており、それが済んでからTikTok専門のエージェンシー探しを再開する予定だと、広報担当者は述べている。ただし、具体的なスケジュールは不明だ。
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優れたコンテンツの制作はパートナに頼るべきか
大手ブランドのあいだでは、TikTokでプレゼンスを維持するために必要なコンテンツの量とスピードを確保しようと、ソーシャルメディア関連のサポートを求める頻度が増えている。オンラインエージェンシーのマーケットプレイスを手がけるスタジオスペース(StudioSpace)が最近公開したリポートによれば、マーケターはユーザー体験やクリエイティブ制作より、ソーシャルスキルやコンテンツスキルに懸念を抱いているようだ。
そうしたなかで、TikTok広告の技術に特化した新しいエージェンシーが登場している。「社内でコンテンツを制作してアップデートし続けることができないなら、サードパーティのパートナーにやってもらうしかない」と、ビリングス氏は言う。「ソーシャルメディアと優れたコンテンツの制作に関しては、パートナーに頼る必要がある」。
ジ・アスリーツフットがソーシャルメディア広告費としてどれだけの予算を確保しているかは、同社が具体的な数字を明らかにしなかったため不明だ。パスマティック(Pathmatics)からの有料ソーシャルデータを含むビビックス(Vivvix)のデータによると、今年の第1四半期から6月までのあいだに、ジ・アスリーツフットは3万2056ドル(約466万円)をメディアに費やしている。これに対し、2022年のメディア支出は7万7019ドル(約1120万円)だった。
皮肉なことに、インスタグラムでは、ジ・アスリーツフットは26万人のフォロワーを抱え、メタ(Meta)がTikTokに対抗すべくリリースした「リール(Reels)」も活用しながら、ブランドコンテンツやインフルエンサーを通じて積極的にプレゼンスを築いている。また、やはりメタがXに対抗すべくリリースしたスレッズ(Threads)でも、熱心に自社の存在をアピールしている。だがTikTokでは、インフルエンサーやコンテンツクリエイターを通じて小さな存在感を放っているに過ぎず、公式のブランドページも設けていない。
「(インスタグラムは)オーディエンスのおかげで、私たちにとってベストの場所となっている」とビリングス氏は言う。「そのうえ、私たちが利用しているマイクロインフルエンサーたちにとっても、ナンバーワンのプラットフォームだ」。
コンテンツの供給量と比例してリスクも上がる
TikTok戦略を自前で進めることに不安を感じているのは、ジ・アスリーツフットだけではない。最近になってeコマースサービスの「TikTokショップ(TikTok Shop)」を新たに立ち上げるなど、TikTokプラットフォームが成熟度を増すなかで、マーケターはTikTokの活用を支援してくれるTikTok専門家に目を向けている(詳細はこちら)。
8月初旬には、ドリンクウェアブランドのスタンレー(Stanley)が、同社初のTikTok専門エージェンシーとしてGSD&Mと提携し、TikTok戦略やコンテンツ制作などの取り組みを指揮してもらうことを明らかにした。一方、ジ・アスリーツフットはまだエージェンシーとの正式な提携を発表していない。
もっとも、こうした傾向に驚きを覚えているエージェンシーもある。たしかにTikTokではコンテンツを供給する量とスピードが重要だが、ほとんどのブランドにとってTikTokに特化したエージェンシーは不要だというのだ。「ブランドはいつも、自社に関する話題をうまくコントロールし、反発を受けたりミスを犯したりした場合に備えた緊急対応計画をうまく管理しようとしてきた」と、広告エージェンシーのマザー(Mother)で戦略責任者を務めるジェシー・アンガー氏は言う。「何か問題が起こるのではないかと、常に恐れているのだ」。
TikTokは、ソーシャルメディアの新たな在り方を体現する存在だ。ソーシャルメディアの振り子は、過度に洗練されたインスタグラム的なコンテンツから、瞬間を捉えたよりオーセンティックに見えるTikTok動画へと揺れ動いている。「TikTokではカルチャーやコンテンツの移り変わりが非常に速く、アルゴリズムが予測不可能なため、ブランドが常に正しい対応を取れなくても仕方ない」と、アンガー氏は話す。
また、「ネタを供給し続けなければならないコンテンツマシンと考えるのではなく、実験的な遊び場だと考えれば、それほど難しくはない」と、アンガー氏は付け加えた。「実験することを許容し、すべてがうまくいくなどと期待しなければ、圧倒されたり気後れしたりすることははるかに少なくなる」。
ブランドに必要なもの
「ただし、ブランドに必要なものがある。それは、ブランドについて、プラットフォームとしてのTikTokについて、そしてソーシャル向けコンテンツの価値について理解している人材だ」と、アンガー氏は話す。
とはいえ、TikTok専門のエージェンシーと手を組めば、あらゆる外部のエージェンシーと提携した場合と同じく、第3者が管理することでブランドと目標のあいだに断絶ができるリスクが生まれる。これは、外部のエージェンシーとの提携でよく批判される問題だ。
TikTok自体も、ユーザーベースが拡大し続けるなかで、今年に入って広告主の大規模な獲得に乗り出している。インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)によれば、TikTokのユーザーベースは、今年の8億3430万人から来年には9億70万人に増える見込みだ(TikTokの最新媒体資料徹底分析はこちら)。
「ジ・アスリーツフットのチームは小規模なため、TikTokを常に自社で管理すれば手に負えなくなる可能性がある」と、ビリングス氏は話す。一方で、「eコマースを再開すれば、ソーシャルメディアの新しい方向性と新しい戦略が生まれるに違いない。これは実に素晴らしいことで、私たちのプレゼンスを高めるのに役立つはずだ」と語った。
[原文:TikTok’s growth has brands like The Athlete’s Foot seeking TikTok agencies]
Kimeko McCoy(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)