[ DIGIDAY+ 限定記事 ]英国のパブリッシャーは、若いオーディエンスとつながる新たな手段として、短編動画プラットフォームTikTok(ティック・トック)に注目している。ここ1年でBBC、MTV、カイラTV(Kyra TV)などは、タレントインキュベーター、あるいはコンテンツ配信パートナーとして、TikTokを利用法を探ってきた。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]英国のパブリッシャーは、若いオーディエンスとつながる新たな手段として、短編動画プラットフォームTikTok(ティック・トック)に注目している。
過去18カ月のあいだ、BBC、MTV、カイラTV(Kyra TV)などの英国パブリッシャーは、タレントインキュベーター、テレビへと誘導する手段、あるいはコンテンツ配信パートナーとして、TikTokを利用する方法を探ってきた。一方、TikTokは人員を増やし、英国での広告キャンペーンを開始した。
BBCやMTVにおける事例
2018年、BBCはTikTok出身のタレントを主役に抜擢。14歳の双子のTikTokクリエーター、マックスとハーベイのミルズ兄弟を、BBCキッズチャンネル「CBBC」の全2話のシリーズに起用したのだ。そして、TikTokフォロワー600万人を誇る兄弟は、その番組内で自身の生活と成功の軌跡について語った。
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「マックスとハーベイはTikTokのスターだ。彼らのようなタレントが、TikTokのようなデジタルプラットフォームでも、テレビでも活躍できるのは素晴らしいことだ」と、BBCスタジオ(BBC Studios)傘下のタレントワークス(Talentworks)で開発責任者を務めるヘレン・オドネル氏はいう。
MTVもTikTokのタレントに注目し、今後の番組での提携を視野に入れている。昨年11月には、スペイン・ビルバオで開催されたMTVヨーロピアン・ニュージック・アウォーズ(MTV European Music Awards)をTikTok上でストリーミング配信した。「TikTokの成長は、実にエキサイティングだ。Vine(ヴァイン)のバイラル性と、Snapchat(スナップチャット)のインタラクティブ要素が融合している」と、英国の動画パブリッシャー「カイラTV」の共同創業者であるデブラン・カラカ氏は話す。同氏は最近、TikTokの関係者と会ったという。「デジタルネイティブの若者たちは、こうしたインタラクティブツールを利用して、面白くて独創的な短編動画を制作している」。
TikTokによる欧米展開
TikTok、および親会社である中国テック企業バイトダンス(ByteDance)は現在、ロンドンで大規模採用を行っていて、1月にはLinkedIn(リンクトイン)に40以上の職種のオファーが投稿された。LinkedInによれば、現在TikTokで働く英国在住者は30人。新たなポストの大部分は欧州の各言語(フランス語、デンマーク語、ルーマニア語、ウクライナ語など)へのローカライズを担当するコンテンツモデレーターだが、投稿内容からみて、ブランドパートナーシップ担当部署にも増員をかけている。
DIGIDAYが入手した、昨年11月に英国のエージェンシーのあいだで出回ったTikTokの媒体資料によると、同プラットフォームの英国の月間ユーザー数は370万人で、1日の平均アプリ使用時間は41分。この数字は依然として、Facebook、インスタグラム(Instagram)、Snapchatよりも短い(シミラーウェブ[SimilarWeb]の昨年7月のデータによれば、米国のアンドロイドユーザーの各アプリの1日平均使用時間は、Facebookが58.5分、インスタグラムが53分、Snapchatが49.5分だった)。しかし、飽和に近づいているほかのプラットフォームとは異なり、TikTokはいままさに急成長中だ。
TikTokは今年1月に米国と英国でアプリ内広告のテストを開始。現在、広告主が購入できる広告フォーマットは4種類ある。
TikTok広告のお値段
「この1カ月で、(TikTokへの)関心は大いに高まった」と、メディアコムでインフルエンサー戦略担当責任者を務めるアナ・ソースドッター氏はいう。同社はつい先日、TikTokの関係者と朝食ミーティングを開いたばかりだ。メディアコムは英国で、大手消費財ブランドと組んだTikTokでの最初のキャンペーンを、今後数週間以内に開始する予定だ。コンテンツにはTikTokのインフルエンサーが起用され、ネイティブ広告として提示される。米国での報道によると、テイクオーバー広告にかかる費用は5~10万ドル(約550万~1100万円)だ。
ソースドッター氏によれば、TikTokでインフルエンサーと動画制作を行うのにかかる費用は、インスタグラムの場合の5分の1ですむ。
「TikTokのインフルエンサーは信じられないくらい安い。半年後には劇的に変化しているだろうが、いまのところ我々は、この点を利用できる」と、同氏はいう。
本記事の執筆に際し、TikTokに取材を行ったが、公開できる新情報はないとのことだった。
「新規参入があるニッチ」
今年2月、TikTokはこれまでで最大のグローバルキャンペーンを実施した。ソニー・ピクチャーズ(Sony Pictures)のサスペンス映画『エスケープ・ルーム(Escape Room)』と組んだ企画で、8カ国から選ばれたTikTokインフルエンサーたちが脱出チャレンジに参加し、映像をプラットフォーム上でストリーミング配信するというものだった。また同じく今月、TikTokは英国、フランス、ドイツの全チャンネルの広告キャンペーン担当として、英国のメディアエージェンシーであるトータルメディア(Total Media)を指名した。
若いオーディエンスのFacebook利用が減少し、新たなプラットフォームが入り込む余地ができた。とりわけ動画に特化したプラットフォームは有利な立場にあり、パブリッシャーはTikTokの利用時間や、アプリの急成長ぶりに魅力を感じている。
「若者のFacebook離れによって、新たなプレイヤーが参入するニッチができたのは間違いない。彼らは、現在ソーシャルメディアを事実上独占しているインスタグラムと共存することになるだろう」と、カララ氏は述べた。
Lucinda southern(原文 / 訳:ガリレオ)