TikTok は、いかにアプリ内コマースに取り組んでいるか?

TikTok(ティックトック)は、単なるデジタル上の流行のひとつに過ぎない、と考える人がいる一方で、これこそがソーシャルメディアの次の流れだと考える人もいる。実際はどうであれ、若い世代へ直接繋がれるアクセスを提供していることは間違いない。アメリカでユーザーベースを拡大し続けている。この2月には月間アクティブユーザー数は2650万人を記録した。そしてマネタイゼーションに向けても取り組んでいるようだ。もっとも自然な流れとしては広告が挙げられるが、そこから派生しているのがeコマースだ。

TikTokがオンラインリテールからの広告によって収益を上げたいと思っているのは確実だが、成果が表れているかどうかはまだ判断ができない。北米マーケットにおけるTikTok広告に参加しているブランドが複数存在する一方で、eコマース分野はまだ初期段階だ。昨年以降、TikTokにおけるブランデッドコンテンツのキャンペーンをローンチしたリテーラーは複数ある。この4月には、ホリスター(Hollister)が「今すぐ購入する」ボタンを取り込んだTikTok広告をテストしていると、Adweek(アドウィーク)が報道した。このボタンによってアプリ内のショップサイトへとユーザーを移動させるようだ。ほかにもアプリ上での広告に参加しているポッシュマーク(Poshmark)のようなリテーラーもある。

TikTokのeコマース計画

TikTokがeコマースにアプローチする方法としてどのような可能性があるか、そのヒントは海外にある。TikTokの親会社であるバイトダンス(ByteDance)は、TikTokの中国国内版であるTikTokドウイン(TikTok Douyin)において、すでに安定したコマース機能を導入している。1年以上前、アリババ(Alibaba)とのパートナーシップを通じて、ショッピングカートボタンをアプリに追加した。このボタンは100万人以上のフォロワーを抱えるアカウントはコンテンツに組み込むことができるのだ。これを通じてフォロワーたちはプロダクトを購入することができると、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)は報じている。

それ以降、バイトダンスはショッピング機能を拡大させてきている。昨年12月、ドウインはこの機能をさらに多くのユーザーに提供し、中国メディアに対し、1日だけで3000万ドル(約32億円)の売上を処理することができた、と発表したのだ。

また同時に、中国以外の国でもTikTokに取り組むリテーラーたちが存在する。インドではヴーニック(Voonik)、ミントラ(Myntra)、そしてスナップディール(Snapdeal)といったeコマースサイトがすべて、今年はじめからTikTokでの広告を開始した。インドにおけるTikTokとヴーニックといったサイトを利用する消費者層は重なりがあるとアナリストたちはエコノミック・タイムズ(Economic Times)に語った

アメリカでは成功できるか?

アメリカにおいてソーシャルコマースが盛り上がっていることはデータが示している。アドビ・デジタル・インサイツ(Adobe Digital Insights)のデータによると、eコマースサイトへのソーシャルからの参照トラフィックは、2016年の第1四半期における3.1%から2019年第1四半期の9.1%と大きく増加している。

ホリスター(Hollister)にTikTokにおける取り組みについてコメントを求めたが、回答は得られなかった。ポッシュマークはモダンリテール(Modern Retail)の取材に対し、TikTokにおける広告は「有望」であることがわかったが、現状ではダイレクトなeコマース・キャンペーンを展開する計画はないと回答している。バイトダンスからは本稿の公開までに回答を得られなかった。

TikTokにとって、アメリカにおけるeコマース計画の主な問題は消費者行動にある、とeマーケター(eMarketer)プリンシパル・アナリストであるアンドリュー・リップスマン氏は言う。ソーシャルショッピングはアジアの方がより進んでおり、北米ではまだ確立していない。

「購入ボタンはこれまでの歴史を見ても、上手くいかない。ほとんどの人が、専用のショッピング体験においてプロダクトを購入することに慣れている」と、彼は言う。ほぼすべてのソーシャルメディアプラットフォームが、さまざまな形のeコマース機能を試してきた。インスタグラム(Instagram)はアプリ内のeコマース機能を展開したばかりだ。Snapchat(スナップチャット)もショッピファイ(Shopify)と協力して昨年、ショッピング機能を提供しはじめた。ピンタレスト(Pinterest)もまた、長いあいだ、サイトにおけるショッピングを成功させようと取り組んできたが、成功には至っていない。アメリカのソーシャルメディアユーザーのほとんどは、プロダクトの検索にソーシャルメディアを使わないのが実態だ。コーウェン・アンド・カンパニー(Cowen & Company)による2019年のデータによると、「プロダクトを見つける/購入する」目的で利用するソーシャルメディアとしてはピンタレスト(42%)とインスタグラム(11%)がもっとも高い割合を見せている。

実験的な段階を越えない

TikTokにおいて購入ボタンを使うことは、現状のモバイルにおける消費者行動においては非常に衝動的な判断と言える。リップスマン氏が仮説するところでは、たとえば限定プロダクトの発売のような、珍しさが関わってくるケースであれば購入ボタンが成功するかもしれない、とのことだ。「それは非常に限定的なケースだ」と、彼は言う。

そのため、今後数年に渡って、TikTokのeコマース機能は実験的な段階を越えないだろうと、彼は予測する。「広告ビジネスが最初に成功する必要がある」と語った。

TikTokがソーシャルコマース分野で成功する可能性があるとすれば、競合他社による競争の激化が要因として挙げられる。人気のあるソーシャルプラットフォームがますますeコマース機能をプッシュすれば、消費者の日々の行動も変わる可能性がある。たとえば、インスタグラムは一部のビューティーやファッションのブランドを対象にアプリ内精算の機能を加えた

まずは先行者の成功が先

リップスマン氏によると、TikTokがアメリカにおいてeコマースを導入しようとしているのは、単純に試験的なものであるだけでなく、マーケットの出発地点に参加すると同時に、インスタグラムのようなプラットフォームにおけるeコマースが成功するかどうかを様子見することが目的だろう、とのことだ。「そういう意味では、Facebookは消費者行動を変える大きな役割を担っている。(TikTokは)試験を行い、足がかりをつかみたいと思っている。マーケットが加速すれば、一気にエンジンをかけられるように」と、彼は説明する。

まだ、これらの試みは初期段階だが、リテーラーたちは常に、新しいオーディエンス、より若いオーディエンスを獲得する方法を求めている。そしてそれを新しいセールスにつなげる方法を求めている。新しいアプリが登場して、TikTokの人気が陰り、Z世代を奪っていかない限りは、eコマースの試験運用はこれから数年間にわたり、ますます世に出されるだろう。しかし、本当の意味でのモバイルリテールの転換期を迎えるためには、ほかのプラットフォームが先陣を切る必要がありそうだ。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:塚本 紺)