- TikTokがブラックフライデーに向け、ハッシュタグオーディエンス戦略を展開。購買意向が高いユーザーグループをターゲティングし、広告主に提案している。
- ブラックフライデーとサイバーマンデー前後に行う広告出稿全体で、推奨する広告支出は最低でも総額25万ドル(約3791万円)にのぼり、価格設定には賛否が懸念されるも、概ねエージェンシーからは受け入れられている。
- 実際、こうしたカスタムオーディエンスのパッケージは非常に効果的であり、TikTokサイドは「TikTokを使ってこの機会にリーチしない手はない」と主張している。
ブラックフライデーは年末に向けた広告商戦の幕開けを告げる。そして、TikTokが広告主候補の企業各社に送った媒体資料を見る限り、この短尺動画アプリは今年、この商戦期にがっつり広告費を稼ぎたい意向のようだ。米DIGIDAYはこの資料の内容を確認した。
9月にTikTokから米国のあるエージェンシーに送られた電子メールによると、この計画の中心を占めるのは「ハッシュタグオーディエンス」と呼ばれるカスタムオーディエンスのパッケージだ。その内容は、広告主の製品を購入する可能性がもっとも高い人々で構成されるようだ。当該のブランドや業界、または類似の製品に興味を示しているかなど、多角的な情報に基づいてTikTokがオーディエンスのキュレーション、すなわち選択とパッケージ化を行い、広告主に提案するという。
この電子メールによると、TikTokがこの広告プログラムのターゲットに想定するのはすばやく動ける広告主だ。キャンペーン作成の締め切りは10月25日となっていた。広告主は、第4四半期のブラックフライデーとサイバーマンデー前後の最低1週間にわたり、カスタムオーディエンスに対して1日あたり最低1000ドル(約15万円)の追加支出を行う必要がある。ただし、比較的新参のプラットフォームにはありがちだが、推奨通りの投資コストを考慮すると、問題となるのはその価格だ。この記事に関するコメントの要請に、TikTokはすぐには応じなかった。
狙うのは中堅企業から高級ブランドを持つ企業
TikTokが広告主に推奨する広告支出は、トップフィード広告、トップビュー広告、ブランド広告とパフォーマンス広告を掛け合わせた運用型インフィード広告など、ブラックフライデーとサイバーマンデー前後に行う広告出稿全体で、最低でも総額25万ドル(約3791万円)にのぼる。米DIGIDAYが取材した複数の情報筋のあいだでも、この価格設定の是非については意見が割れた。
たとえば、ベイシステクノロジーズ(Basis Technologies)でサーチおよびソーシャルメディアサービス担当のシニアバイスプレジデントを務めるエイミー・ランプラー氏は、「妥当な価格設定だ」と評価し、「ほかのSNSプラットフォームが季節的な繁忙期や新製品の発表時に設定する価格を逸脱するものではない」と述べている。
また、「適正な水準の広告主、そして適正な数の広告主に利用してもらうための価格設定だ」とランプラー氏は説明し、「この施策が成功し、よい反響が得られれば(そして同様のインセンティブ方式のプログラムが後に続くなら)、来年は参加のハードルがもっとずっと低くなるだろう。(もしかしたら、一般公開版としてすべての広告主が利用できるようになるかもしれない)」と続けた。
マーケティングエージェンシーのグッドピープス(Good Peeps)の創業者で最高経営責任者(CEO)のシュレイ・ジョシ氏も、TikTokの価格設定に対して同様の見解を持つ。プロテインスナックブランドのチョンプス(Chomps)や四川風チリソースのフライバイジン(Fly By Jing)などを顧客に持つグッドピープスの場合、クライアントの70%がTikTokを利用しており、うち15%がTikTokに広告を出しているという。同氏によると、25万ドル(約3791万円)という価格は、毎月の広告費が総額で100万ドル(約1億5千万円)から200万ドル(約3億)程度の企業を想定した数字のようだ。
「言い換えれば、TikTokはこの提案で少なくとも売上高3000万ドル(約45億円)から5000万ドル(約75億円)のブランドを標的にしようとしている」とジョシ氏は話す。「TikTokショップ(TikTok Shop)は中小企業に重点を置いているようだが、広告商品のインセンティブで狙うのは中堅企業から高級ブランドを持つ企業だと思われる」。
カスタムオーディエンスのパッケージは効果的
一方、デジタルエージェンシーのマインドグルーヴ(Mindgruve)でグループメディアディレクターを務めるヘイリー・フィーゼル氏は、「SNSプラットフォームがカスタムオーディエンスというオプションを提案することは、特に珍しい方向性ではない。メタ(Meta)は自動的にこれをやっている」と語る。同氏はTikTokの売り込みの内容を確認しているという。
フィーゼル氏は「(TikTokで)それが特別な恩恵となるのはおかしい」と話し、[続きを読む]
- TikTokがブラックフライデーに向け、ハッシュタグオーディエンス戦略を展開。購買意向が高いユーザーグループをターゲティングし、広告主に提案している。
- ブラックフライデーとサイバーマンデー前後に行う広告出稿全体で、推奨する広告支出は最低でも総額25万ドル(約3791万円)にのぼり、価格設定には賛否が懸念されるも、概ねエージェンシーからは受け入れられている。
- 実際、こうしたカスタムオーディエンスのパッケージは非常に効果的であり、TikTokサイドは「TikTokを使ってこの機会にリーチしない手はない」と主張している。
ブラックフライデーは年末に向けた広告商戦の幕開けを告げる。そして、TikTokが広告主候補の企業各社に送った媒体資料を見る限り、この短尺動画アプリは今年、この商戦期にがっつり広告費を稼ぎたい意向のようだ。米DIGIDAYはこの資料の内容を確認した。
9月にTikTokから米国のあるエージェンシーに送られた電子メールによると、この計画の中心を占めるのは「ハッシュタグオーディエンス」と呼ばれるカスタムオーディエンスのパッケージだ。その内容は、広告主の製品を購入する可能性がもっとも高い人々で構成されるようだ。当該のブランドや業界、または類似の製品に興味を示しているかなど、多角的な情報に基づいてTikTokがオーディエンスのキュレーション、すなわち選択とパッケージ化を行い、広告主に提案するという。
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この電子メールによると、TikTokがこの広告プログラムのターゲットに想定するのはすばやく動ける広告主だ。キャンペーン作成の締め切りは10月25日となっていた。広告主は、第4四半期のブラックフライデーとサイバーマンデー前後の最低1週間にわたり、カスタムオーディエンスに対して1日あたり最低1000ドル(約15万円)の追加支出を行う必要がある。ただし、比較的新参のプラットフォームにはありがちだが、推奨通りの投資コストを考慮すると、問題となるのはその価格だ。この記事に関するコメントの要請に、TikTokはすぐには応じなかった。
狙うのは中堅企業から高級ブランドを持つ企業
TikTokが広告主に推奨する広告支出は、トップフィード広告、トップビュー広告、ブランド広告とパフォーマンス広告を掛け合わせた運用型インフィード広告など、ブラックフライデーとサイバーマンデー前後に行う広告出稿全体で、最低でも総額25万ドル(約3791万円)にのぼる。米DIGIDAYが取材した複数の情報筋のあいだでも、この価格設定の是非については意見が割れた。
たとえば、ベイシステクノロジーズ(Basis Technologies)でサーチおよびソーシャルメディアサービス担当のシニアバイスプレジデントを務めるエイミー・ランプラー氏は、「妥当な価格設定だ」と評価し、「ほかのSNSプラットフォームが季節的な繁忙期や新製品の発表時に設定する価格を逸脱するものではない」と述べている。
また、「適正な水準の広告主、そして適正な数の広告主に利用してもらうための価格設定だ」とランプラー氏は説明し、「この施策が成功し、よい反響が得られれば(そして同様のインセンティブ方式のプログラムが後に続くなら)、来年は参加のハードルがもっとずっと低くなるだろう。(もしかしたら、一般公開版としてすべての広告主が利用できるようになるかもしれない)」と続けた。
マーケティングエージェンシーのグッドピープス(Good Peeps)の創業者で最高経営責任者(CEO)のシュレイ・ジョシ氏も、TikTokの価格設定に対して同様の見解を持つ。プロテインスナックブランドのチョンプス(Chomps)や四川風チリソースのフライバイジン(Fly By Jing)などを顧客に持つグッドピープスの場合、クライアントの70%がTikTokを利用しており、うち15%がTikTokに広告を出しているという。同氏によると、25万ドル(約3791万円)という価格は、毎月の広告費が総額で100万ドル(約1億5千万円)から200万ドル(約3億)程度の企業を想定した数字のようだ。
「言い換えれば、TikTokはこの提案で少なくとも売上高3000万ドル(約45億円)から5000万ドル(約75億円)のブランドを標的にしようとしている」とジョシ氏は話す。「TikTokショップ(TikTok Shop)は中小企業に重点を置いているようだが、広告商品のインセンティブで狙うのは中堅企業から高級ブランドを持つ企業だと思われる」。
カスタムオーディエンスのパッケージは効果的
一方、デジタルエージェンシーのマインドグルーヴ(Mindgruve)でグループメディアディレクターを務めるヘイリー・フィーゼル氏は、「SNSプラットフォームがカスタムオーディエンスというオプションを提案することは、特に珍しい方向性ではない。メタ(Meta)は自動的にこれをやっている」と語る。同氏はTikTokの売り込みの内容を確認しているという。
フィーゼル氏は「(TikTokで)それが特別な恩恵となるのはおかしい」と話し、「アルゴリズムの効果に頼るのなら、それはアルゴリズムの一部であるべきだ」と言い添えた。
TikTokのプログラムに既視感を覚えるなら、それはTikTokが昨年も同じような売り込みをしていたからだ。ただし、昨年のプログラムの詳細は明らかにはなっていない。米DIGIDAYが確認した電子メールには、2022年の年末商戦期にハッシュタグオーディエンスを活用した広告主は、ほかのキャンペーンと比べて顧客獲得単価(CPA)を平均36%抑制できたとある。
TikTokとの取引関係を理由に匿名で取材に応じたある米国の広告主はこう語る。「どの程度強化されたターゲティングが、将来的により多くの広告主に提供されるのか、今後を占う非常に興味深い数字だ。TikTokのデータセット(特に購入と購入意向に関わるデータ)が継続的に増えていることを考えれば、なおさらに興味深い」。
実際、こうしたカスタムオーディエンスのパッケージは非常に効果的で、TikTokはAmazonのプライムデーの成功に地味だが重要な役割を果たしたとしている。前述の電子メールにはこうも書かれていた。「Amazonは2023年のプライムデーで創業以来最高の売上高(流通取引総額119億ドル[1兆8千億円])を達成した。Amazonとその出店者がTikTokに広告を出稿し、その多くが同様のカスタムオーディエンスを活用しており、これが過去最高の売上高に大きく貢献した」。
TikTokの大胆な主張
広告主宛てのこの電子メールに添付されたペラいちの資料には、TikTokユーザーにとってブラックフライデーがいかに大きなショッピングイベントであるかを物語る社内の統計データが示されていた。TikTokはこの資料で「ブラックフライデーやサイバーマンデーはTikTokユーザーが一番買い物をする時期であり、この機会に彼らにリーチしない手はない」と述べている。
これらはTikTok自身の大胆な主張で、これに納得していないマーケターも少なくない。試行錯誤を重ねた実績のあるプラットフォームでも同じことができるのだからなおさらだ。
マインドグルーヴのフィーゼル氏は、多少の疑念はあるにせよ、eコマース系のクライアント向けにこうしたカスタムオーディエンスを活用する考えをまったく排除しているわけではないようだ。この選択肢を無視することは、TikTokが商品やサービスの認知度アップに長けているという事実を見逃すことに等しい。
「TikTokの広告アルゴリズムは、効率という点ではメタのFacebookやインスタグラムに決して敵わない」とフィーゼル氏は話す。「(我々から見る)TikTokという広告プラットフォームの強みとしては、TikTokに夢中の若者層をターゲットオーディエンスとするブランドであれば、エンゲージメントの向上や新商品の紹介には最適と言えるだろう」。
TikTokをフル活用する入り口になる?
ブラックフライデーのようなイベントはデータを増やす好機でもある。
フィーゼル氏が指摘するように、TikTokはeコマース企業にとって(まだ)最初の選択肢にあがるプラットフォームではなく、TikTokもおそらくそのことは承知している。強力な推奨力と特別なオーディエンスというインセンティブは、TikTokをまだ十分に試していないような、いわばテストモードの広告主には効果的かもしれない。
ベイシステクノロジーズのランプラー氏も、「ほとんどのeコマース企業や小売企業は、TikTokが提供できる売上増の機会を認識しており、新たに投資すること、あるいは例年よりも投資を増やすことをすでに検討している可能性が高い」と述べ、「確かに、クリエイティブ面での支援やカスタムオーディエンスの可能性は、広告主を取り込む転機となるかもしれない」と話している。
そのほかのTikTokの統計データ(TikTokによるデータを参照)
- ユーザーの70%近くがブラックフライデーに買い物をすると予想
- TikTokユーザーにとって、ブラックフライデーとサイバーマンデーは最大のショッピングイベント
- 昨年のブラックフライデーで物品等の購入を行ったユーザーの80%が「購入の意思決定にTikTokが一役買った」と回答
[原文:TikTok touts its curated audiences to advertisers to drive Black Friday, Cyber Monday sales]
Krystal Scanlon(翻訳:英じゅんこ、編集:島田涼平)