人気アプリ「 TikTok 」に、エージェンシーたちも熱視線:でも、広告機能は未実装

口パク動画作成アプリ「TikTok(ティックトック)」は、8月に同様のアプリ「Musical.ly(ミュージカリー)」と合併して、人気を急上昇させている。しかし、ブランド向けの広告ユニットやクリエイター向けのマネタイゼーション機能は、まだローンチされていない。だが、この1カ月でエージェンシーたちも、このアプリに注目しはじめた。

CNNワシントン・ポスト(Washington Post)がヘッドラインで、TikTokはバイラルセンセーションだと称賛するなかで、マーケターたちはしっかりとしたエンゲージメントを持つ、次のポテンシャルだと関心をもちつつある。しかも、このアプリは、FacebookやGoogle、Amazonと紐付いていない。この事実は、広告トラッキングという観点では不満は残すものの、同時に予算の多様化という意味では、興味深いものとなっているのだ。

「TikTokはどんどんと面白くなっている。Vine(ヴァイン)のようなタイプのコンテンツが増えている。レコードレーベルやアーティストのプロモーションという点では、TikTokは素晴らしいと思う。また、ブランドの認知度を高めるためのキャンペーンにも適しているだろう。まだまだ道のりは長いが、正しい方向に進んでいるように、私は思う」と、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのバイラルネーション(Viral Nation)でアカウントディレクターを務めるクリス・ストロング氏は言う。

ユニバーサルが行った実験

TikTok上でインフルエンサーキャンペーンを実験的に展開するブランドも出てきた。そのひとつの例がユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures)だ。彼らはTikTok上の人気ユーザー、ギャビー・マーリーレベッカ・ザモーロ、そして「アワー・ファイヤー(Our Fire)」のカップル、クリス・カーとシャーラ・メイを起用して、映画『ルイスと不思議の時計(原題:The House with a Clock in its Walls)』が9月に公開される前のプロモーションを行った。

こういったパートナーシップは、TikTok自身が関わって収益の一部を受け取るのではなく、ブランドやインフルエンサーによって取り組まれるのがほとんどのケースだ。クリエイティブエージェンシーのひとつは、クライアント1社とTikTok上のキャンペーンを数週間後にローンチするところだと、米DIGIDAYに語った。TikTokは今後数カ月で、メディア企業やエージェンシーとさらに協働できるよう、準備をしてきた。2017年にMusical.lyは、NBCユニバーサル(NBCUniversal)、バイアコム(Viacom)、そしてハースト(Hearst)と、コンテンツパートナー契約を結んでいる。NBCユニバーサルの広報担当は、この契約は現時点ではアクティブではないと、米DIGIDAYに伝えた。

「消費者体験にもっともフォーカスしている。しかし、(パートナー契約など)への計画もある」と、グローバルマーケティング責任者であるステファン・ハインリッチ氏は言う。

#ハッシュタグチャレンジ

TikTok上の広告フォーマットのひとつが「#ハッシュタグチャレンジ(#HashtagChallenge)」だ。ブランドが最初に動画を公開し、それにインスピレーションを受けたTikTokユーザーが自分のビデオを作るというキャンペーンになっている。Musical.lyは、TikTokとの合併の前に、今年初頭にこのメニューをエージェンシーたちへ売り込もうとしていた。人気トーク番組の司会者ジミー・ファロンは彼の番組「トゥナイト・ショー(The Tonight Show)」で、このチャレンジを取り入れている。金銭のやり取りは、このチャレンジでは行われていないが、番組のデジタル部門ディレクターがバラエティ(Variety)に語ったところによると、司会者のファロン自身がアプリを使って楽しかったから、というのが事の発端のようだ。

消費者向けのアプリという形で、何かが流行の兆しを見せるのは、10年前と比べて珍しくなっている。Snapchat(スナップチャット)がローンチされたのは2011年だが、インスタグラム(Instagram)の台頭で、いまでは大手ブランドやエージェンシーに対して、Snapchatの重要性を説得することが難しくなっている。トリビアクイズで賞金を山分けするアプリ「HQ」は2017年に急成長したが、いまでは懸賞金額を大きくしない限りは、利用者数は下がっている(新しいゲームを実験的に試しているようだ)。そんななか、TikTokは人々に笑いを届けるクリエイティブなプラットフォームとして登場し、人々はVineを懐かしむ声をあげている。

しかし、Vineが学んだように、インターネット上の良い発明も、お金を生み出す方法を見つけなければ消えてしまう。ファロンが番組に取り組んだチャレンジフォーマットは、マネタイズのひとつの可能性を持っている。

新しいエンゲージメント

「マーケターである私にとっては、TikTokは新しいレベルのエンゲージメントだ。ほかのプラットフォームでマーケターが手に入るのは、いいね!やシェア、コメントだ。TikTok上でユーザーからビデオを獲得できれば、そのユーザーがビデオを作り、シェアするのに費やした20分から30分を得ることになる。ひとりの人物を会話のきっかけを生み出してくれる、ブランドの広告塔にすることができる」と、ハインリッチ氏は言う。

ハインリッチ氏はYouTubeレッド(Red)で2014年から2017年までのあいだ、プロダクト・マーケティング部門で働いた。その後、Musical.lyに移っている。いまは、より多くのユーザーを獲得するためのTikTokキャンペーンを制作し、実行することが、彼の仕事のフォーカスだ。もっとも最近のキャンペーンは、「#私は私を行う(#ImaDoMe)というもので、これはYouTubeや映画館で流された30秒の広告となっている。TikTokの広告はTwitter、インスタグラム、そしてSnapchat上で流されてきた。

「#私は私を行う」では、アプリのなかで、それほど注目を集めてなかったユーザーたちを祝う時期が来たと、我々は思った。誰もが行っていることを行うのではなく、まったく別の側面を見せるということだ。アメリカのど真ん中、ウォルマートで働いている最中の人や、看護師たちがシフトの間にお気に入りの踊りを見せる、といった様子を見られている」と、ハインリッチ氏は語った。

広告に不満をもつユーザーも

しかし大量に配信されるTikTokの広告を目障りだと感じるユーザーたちも現れている。


TikTokの広告はゴキブリみたい(にたくさんいる)…


TikTokの広告、Snapchatから禁止されるべき

TikTokのメディア予算について、ハインリッチ氏はコメントしなかった。だが、今年中に、もうふたつのキャンペーンが展開されるとのことだ。

「あまりに大きな規模のキャンペーンを実施するのではなく、短期的なものにフォーカスしている。会話を生み出すけれども、それを長くやり過ぎない」と、彼は言う。

コミュニティを有効活用

「#私は私を行う」といったキャンペーンでは、TikTokはすでに存在しているコミュニティをうまく取り込んでいる。これはVineとは大きな違いだ。Vineの場合は、多くの黒人コメディアンたちが活躍をしていたにも関わらず、Vineはクリエーターたちを大事にしなかったのは有名だ。Facebookは類似プロダクト、Lasso(ラッソ)の提供をはじめ、TikTokとユーザーを巡って競争をしている。Lassoはβ版のパートナーとして、TikTokのトップクリエーターの一部を引き抜いている。しかし、Facebookはまだ、これらのクリエーターに報酬は払っておらず、公式なマネタイズの方法も導入していない。

バイラルネーションのストロング氏は、TikTokの2019年の成長に期待している。

「トラックできるリンクは、TikTokには存在していない。KPIをクライアント向けにトラックするのは、いまだ難しい。とは言っても、ほかのプラットフォームで高いエンゲージメントを持っている新しいインフルエンサーたちが、TikTokを開始している様子を確認している。これはMusical.lyでも観察していた似た現象だ」と、ストロング氏は言う。

Kerry Flynn(原文 / 訳:塚本 紺)