TikTok が採用強化、その多くは Snapchat から引き抜き? : アメリカで存在感を強めるために

2019年のはじめに、Snapchat(スナップチャット)の元社員で現在は別のテック系企業で働く人物のLinkedIn(リンクトイン)に、リクルーターからセールス部門での人材募集に関するメッセージが届いた。そのリクルーターによると、その会社は「AIの力で成功を収めている、数少ないコンテンツプラットフォームのひとつ」であり、その会社の商品は、150以上のマーケットと75種類の言語圏で購入できる。そして、売れ筋の商品では1日あたり3億人以上のデイリーアクティブユーザーがいるという。

「とても興味深い」と、その人物は返信したが、最終的にはそのオファーを断った。

その企業の名前はバイトダンス(Bytedance)で、探していたのはTikTok(ティックトック)でブランド戦略を担える人材だった。

バイトダンスは2018年8月に同社のアプリのひとつであるTikTokアプリをリリースしてからというもの、アメリカ国内で新たな人材の採用活動を盛んに行なってきた。この中国のテック企業は2017年11月に、TikTokとともにMusical.ly(ミュージカリー)というアプリを買収・統合したが、その金額は10億ドル(約1120億円)規模ともいわれている。だが、バイトダンスは、アメリカ国内での存在感を強めるために、アプリの販促だけではなく、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、シカゴにオフィスを構えるアメリカのチームを構築した。そこで働くというのはつまり、各国で延べ4万人に上る組織に入るということだと、インフォメーション(The Information)は報じている。バイトダンスは、米国において2018年8月からの8カ月間で、デジタルエージェンシーやそのほかのソーシャルアプリから何十名もの人材を採用してきた。その多くは、Snapchatからの引き抜きであり、その狙いはTikTokのセールスやパートナーシップのチーム構築だった。

このSnapchatの元社員によると、現在もSnapchatで働く元同僚の数名にもアプローチがあるという。LinkedInを見る限り、TikTokは少なくとも14名のSnapchatの社員を採用している。たとえばロクサンナ・サーバズ氏は、2018年12月に戦略コンテンツパートナーとしてTikTokに転職するまで、3年以上もSnapchatのパートナーシップのセールス部門に勤めていた。タッカー・キング氏も、Snapchatのプロダクション部門で3年以上勤務したのち、2019年1月からはTikTokのクリエイティブ・デベロップメント・マネージャーとして働いている。

SnapchatともTikTokの共通点

SnapchatともTikTokとも話したことのあるバイヤーたちは、どちらの会社も、売り込み方に共通点があるという。

「彼らのセールスポイントは同じだ。(TikTokの)セールストークは、誇張気味だという点では驚くほど似ているが、TikTokの推しのポイントは、表面的な利点だけでなく、インタラクティブ性も高いというところだ。もちろん、いまはSnapchatも同じことをしていることは分かっているが」と、そのバイヤーは語る。

TikTokもSnapchatもタテ型の短い動画アプリであり、どちらも若年層のエンゲージメントの高いオーディエンスを擁している。米DIGIDAYが得た情報によると、TikTokは、アメリカのエージェンシーへの売り込みにおいて、Snapchatを引き合いに出している。あるスライドショーでは、TikTokがどのようにしてSnapchatをしのいでアメリカでの月間最多ダウンロード数を獲得したかが示されている。また、TikTokはアップアニー(App Annie)による2018年10月からの統計データを引き合いに出しているが、そのデータによると平均のセッション時間はSnapchatが80秒なのに対し、TikTokは294秒だった。また、広告商品はどちらも非常に似ており、使われているのはタテ型の動画広告やAR(拡張現実)広告だ。

競合他社からの引き抜きの歴史

特にテック業界では、競合他社からの引き抜きは、いまにはじまったことではない。Snapchatも、広告ビジネスやそのほかの商品の立ち上げなどのために、FacebookやTwitterから人材を採用してきた。Snapchatで目立った引き抜きは、Facebookの広告商品を担当していたスリラム・クリシュナン氏だ。彼は現在、Twitterで働いている。SnapchatはFacebookの広告プレイブックにしたがって、自前のシステムの構築しているようだった。TikTok、Snapchatがともに拠点を置くロサンゼルスのテックの現場は、規模はかなり小さいが急速に成長している。SnapchatとTikTokのロサンゼルスのオフィス間の距離は、およそ5マイル(約8km)だ。

TikTokは、この件に関してのコメント依頼には返信せず、Snapchatはコメントを控えた。

もちろん、TikTokのリクルーターは、Snapchatで仕事の経験がある人材だけを見ているわけではない。TikTokは、少なくとも3名をTwitterから、3名をGoogleやYouTubeから採用している。マイク・ロドリゲス氏は、ロサンゼルスでYouTubeのコミュニティスペシャリストとして2年間働いたのちに2018年11月にTikTokに加わり、ソーシャルや編集の部門で働いている。彼は、TikTokのジェネラルマネージャーであり、YouTubeのクリエイター育成チームで8年間働いていたバネッサ・パパス氏と一緒に仕事をしている。「動画を通じたグローバルなオーディエンスとの繋がりにおける、彼女の成功実績と経験」を考えても、パパス氏の採用は非常に良かったと、TikTokの広報は2018年にチェダー(Cheddar)に語っている

バイトダンスのリクルーターも、2019年初頭に、ブランドパートナーシップの役割を担ってもらおうと、ゲーム実況プラットフォームのTwitch(ツイッチ)の社員にアプローチしてきた。このリクルーターによると、この企業は「全世界で急速に成長している、クリエーションとインタラクションに富んだ動画プラットフォームであり、800万人を超えるデイリーアクティブユーザーがいる」と、採用の可能性について米DIGIDAYに語った。

エージェンシーの専門家も採用

ブランドとエージェンシーの関係を育成するため、TikTokは関連エージェンシーから専門家を採用してきた。最近ではヴェイナーメディア(VaynerMedia)から2名がTikTokに加わり、サイクル(Cycle)やフェッチ(Fetch)からも採用している。

これらの社員は現在、TikTokの現行の広告商品の販売促進や、将来の商品に関する話し合いをしていると、メディアバイヤーは米DIGIDAYに語った。TikTokの売り込み文句によると、TikTokが現在提供する広告商品は、ブランドのテイクオーバー、インフィードビデオ、ハッシュタグチャレンジ、そしてブランデッドレンズの4種類だ。これらの商品は、TikTok内のセールスチームを通じてのみ購入できるようになっている。だが、セールスチームは将来的にセルフサービスシステムの提供についても明らかにしている。

TikTokの人事採用はとどまる気配がない。TikTokは、2019年4月12日時点で、LinkedInに26種の役職で人材を募集している。これらの役割には、ニューヨークやサンフランシスコでのブランド戦略担当や、ロサンゼルスにおけるマーケティングのトップも含まれている。

Kerry Flynn(原文 / 訳:Conyac