TikTokが「インストラクティブ・アクセラレーター・プログラム(Instructive Accelerator Program)」という新プログラムをローンチする。有益な動画を投稿したパブリッシャーには報酬を支払うという内容だ。プログラムの開始時期は4月で、参加者数は25社に限定されている。
TikTokが「インストラクティブ・アクセラレーター・プログラム(Instructive Accelerator Program)」という新プログラムをローンチする。有益な動画を投稿したパブリッシャーには報酬を支払うという内容だ。
TikTokは以前にも「クリエイティブ・ラーニング・ファンド(Creative Learning Fund)」という同様のプログラムを運営していたが、今回のプログラムでは参加できるパブリッシャーの数を減らしつつ、投稿動画のカテゴリーは拡大する方針だ。現時点ではカテゴリーは未確定だが、たとえば科学や教育から、DIY、モチベーション、啓発活動など、裾野を拡げることが想定されている。
プログラムの開始時期は4月で、応募締切は3月12日までとなっている。参加者数は25社に限定され、前回の45社からは大幅な減少となる。TikTokで啓発および非営利コンテンツパートナーシップ責任者を務めるブレット・ピーターズ氏は「ユーザーにとってなるべく魅力的なコンテンツを揃えるため、『量より質』を方針としている」と語る(なお、本プログラムの動画製作者やパートナーの数については未定となっている)。
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プログラムにおける参加条件
TikTokが今回のプログラムに向けて準備している報酬金は未公開だが、ピーターズ氏は「価値のあるものに対し公平に審査し、金額を決めたい」としている。
前回2020年に行われたプログラムでは、各パブリッシャーが7週間にわたり35本の動画を投稿し、対価として合計で5万ドル(約550万円)が支払われた(米DIGIDAY調べ)。この報酬に加えて、選定された動画の権利を再販する形で広告やスポンサーを募集し、別途収益化につなげることも可能という条件が附帯されていた。
一方、今回のプログラムは8週間x4回のサイクルで、1社あたり週4本の動画が投稿されることになりそうだ。また、各サイクルの終了後に、次のサイクルへ進めるか否かがTikTokから伝えられる。
そして「最低基準を満たしていない」パブリッシャーは、他社と差し替えられてしまう可能性もあるという。この「基準」はTikTok内部で決める指標で、社外秘とのことだ。また、パブリッシャー向けに毎月ウェビナーを開催するほか、成長戦略担当者と1対1で行うコンテンツ戦略会議などの機会も設けられるという。
新型コロナウイルス基金が発端
今回のプログラムの発端は、TikTokが立ち上げた新型コロナウイルス基金だ。ここでTikTokは若者向けの教育コンテンツやリソースの制作をパブリッシャーやクリエイターに依頼している。2020年5月に開始された基金の第1ラウンドでは、2400社を超える企業が参加し、5000万ドル(約55億円)を拠出している。当時作られた#LearnOnTikTokのハッシュタグの後押しもあって、関連動画の再生数は実に750億回にも達している。
この基金は名前を変更しており、「コロナ禍の終息後もクリエイターやパブリッシャーを対象として活動を続ける可能性がある」とピーターズ氏は言う。
BuzzFeedの人材パートナーシップ担当バイスプレジデント、アンドレア・メイジー氏は、「世界規模で発生した危機の結果として、TikTokなどのプラットフォームで展開することに乗り気な広告主が増えている」と語る。デジタス(Digitas)のソーシャル戦略担当バイスプレジデント兼グループディレクターのアリー・ワッサム氏もこれに同意する。「新規開拓として、TikTokに予算を多く割く企業が増えている。今、TikTok以上にバイラルを狙えるところはないからだ」。
2020年のプログラムには、ディスカバリー(Discovery)やインサイダー(Insider)、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)といったさまざまなメディア企業が参加した。グループ・ナインの科学分野のメディア、シーカー(Seeker)は環境問題関連のコンテンツを制作し、ライセンス料を受け取るとともに広告収益の獲得にも成功している。前回のプログラムで作られた有益で実用的な動画や、深い考察に基づいて制作された動画は「ほかのTikTokユーザーに波及した」とピーターズ氏は言う。この「ほかのTikTokユーザー」も同様の動画をアップロードするようになり、相乗的に拡散していった。
「イノベーションのペースが速い」
今年のプログラムではさらにカテゴリーを拡大し、精神衛生やスポーツ、ファッション、動画編集、音楽など、幅広く作品を募集することになりそうだ。
また審査においてはTikTokだけでなく、YouTubeやインスタグラム、Facebookといったほかのプラットフォームにおけるパフォーマンスも考慮、検討される。つまり、それらのプラットフォームでのパフォーマンスを参考情報として、TikTok上でどのような効果を創出し得るか、この点についても応募者の提示材料となる。
メイジー氏は次のように述べる。「動画の世界は尺の短さから、イノベーションのペースが速い。手間やコストが相対的に小さいこともあり、より迅速に知見を考察、再利用できるからだ」。
[原文:TikTok brings back fund to pay 25 publishers to create ‘instructive and informative’ videos]
SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)