逆風のなか、いかに TikTok はブランドと提携しているか?:同社VP ブレイク・チャンドリー氏

TikTokはテックラッシュの時代のなかで成長した。

TikTokがFacebookやGoogle以上に厳しいのは、中国と衝突するトランプ政権との政治的かけひきが求められている点だ。

トランプ大統領は7月31日の記者会見で、中国企業のバイトダンス(ByteDance)が保有する同アプリの禁止を検討していると話している。同週末にロイターが報じたところによると、同社はこれを回避するため、米国の運営企業のマイクロソフトへの完全売却を検討している可能性があるという。

TikTokにとって米国市場は巨大であり、同国のユーザー数はすでに1億を超えている。これを手放さないために、バイトダンスはほかの巨大IT企業と同様にロビイストを雇ってワシントンへの働きかけを行っているといわれている。

トランプ政権が表明している懸念は、TikTokと中国政府とのつながりだ。昨年秋にリークされた文書では、天安門事件やチベット独立など、中国共産党が容認しない話題についてTikTokが検閲していたことが明らかになっている。TikTokはこうした一部の件について謝罪を行っている。

TikTokの欧州および米国地域におけるグローバルビジネスソリューション担当バイスプレジデントを務めるブレイク・チャンドリー氏は、バイトダンスと中国政府との結びつきについて否定している。

トランプ氏の発言前日の録音インタビューのなかで同氏は「TikTokは明確に独立した企業だ。当社はこれまで多くの行動でそれを示してきた」とチャンドリー氏は語る。

「当社は企業全体を中国国外で構築している。データは中国国外に置かれており、米国内にある。バックアップが行われているのはシンガポールだ」。

チャンドリー氏は、同社が競合他社以上に個人データの保護に気を配っているとしている。

「これまで起きてきたことを鑑みれば、世の中がこれからどうなっていくかはある程度予測できる」と、同氏は語る。「データ保護に対する意識は高まっており、知識も備えつつある。個人情報の管理について、当社は過去の事例から多くを学んできた」。

チャンドリー氏は昨年夏にそれまで勤めていたFacebookからTikTokへと移った。Facebookのデータの収集方法は、米国メディアや国会、一部のユーザーから問題視されている。

TikTokは莫大な数の若年層ユーザーを抱えており、この層へのマーケティングに熱心なブランドにとって不可欠なアプリであることを証明しようと取り組んでいる。

米国政府との軋轢にもかかわらず、こういった企業はTikTokとの提携を望んでいるようだ。同氏はこれについて「ブランドはわかっているのだ」と語る。「今回の件でTikTokから距離を取ろうとしているブランドは少ない」という。さらに「提携している大手ブランドのほとんどは中国国内でも展開している。提携ブランドには当社の企業構造と意思決定きちんと納得のいく説明をして、理解をいただいている」。

TikTokは広告主とインフルエンサーを結びつける新サービス、「クリエイター・マーケットプレイス」を提供するが、それだけではない。

7月末、トランプ大統領の発言前に、同社は米国のクリエイターのための基金として今後3年間で10億ドル(約1060億円)を支出すると発表している。

またチャンドリー氏はTikTokがそれだけでなく、これまで大手IT企業が行ってこなかったような方法でブランドの支出(およびクリエイター収益)を支援していくと述べている。

「それについては今後期待して待っていてほしい」と同氏は語る。

以下に、同氏へのインタビューの一部をお伝えしよう。なお、発言の意図を明確にするため一部に若干の編集を加えている。

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ブランドは理解している

「ブランドは理解してくれている。こういった大手ブランドの大半は中国にも展開している。提携ブランドには当社の企業構造と意思決定きちんと納得のいく説明をして、ご理解いただいている。納得してくれているのだ。今回の件でTikTokと距離を置いたブランドは少ない。クリエイターたちも私たちについてきてくれている」。

TikTokのユーザーは適切な形式であれば広告に理解を示す

「私は常々、オーディエンスも消費者も広告を嫌っているわけではないと述べてきた。自分にとって無関係な広告が嫌われる。皆、ブランドが好きなのだ。ブランドに影響を受け、親近感を抱いている。だからこそ私たちは、ユーザーがブランドを見つけられるように、そしてTikTokならではの体験としてブランドと関われるように、独自の環境を作ろうと取り組んでいる。これはブランドにとっても夢のような話だ。そのために各社は大規模な投資を行っている。ちなみにこれに似た取り組みを行ったプラットフォームもあるが、いずれもプログラマティックで実施している。世界中のウェブサイトで、クロスデバイスの追跡と特定を行っているのだ。すなわち広告のフォーマットが限定されているため、ブランドの創造力を十分に発揮できない分野になりつつある。同じ内容の広告がプラットフォームを変えても何度も表示され、飽き飽きしてしまう。TikTokがやろうとしていることは、それとはまったく異なるアプローチだ」。

TikTokはクリエイター層を育む

「インスタグラムやYouTubeと同様に、TikTokで生計を立てようとしている人たちがいる。私たちは最近まで、それを実現できるプラットフォームではなかった。基本的にはクリエイティブ・マーケットプレイス(私たちは「TCM」と呼んでいる)で収益を得るのが一般的だが、ブランドが価値観の似たクリエイターを発見することも可能だ。クリエイターを発見するためのツールを提供しており、ブランドからは『素晴らしいツールだ。提携したいクリエイターが4、5人見つかった』との感謝の声をいただいている。こういったクリエイターとオフラインでもつながりを作れるようになる。その面でも私たちはサポートをしている。それは価値交換の場であり、クリエイターに料金を支払うのが通常だ。そしてほかにもクリエイターの収益源を提供できないかを考え、TikTokは基金を立ち上げた。これは米国と欧州にまたがる大規模な基金で、クリエイターのコミュニティと歩調を合わせて収益化につなげるための取り組みだ。時とともにいくつかのフォーマットが出来上がるだろう。この業界には収益化についてさまざまな基準がある。現在、TikTok独自のフォーマットとなる広告について取り組んでいる。クリエイターやユーザーのためになるようなフォーマットを作り上げたいというのが、私たちの心からの願いだ」。

(特に米大統領選挙のある年では)ブランドセーフティと政治は異なる

「TikTokは昨年、他社よりも1カ月以上はやく、政治的な宣伝を扱わないと決めた。政治家が参入すると、すぐにTikTokの環境に悪影響を及ぼしかねないことは明確だったからだ。私たちの望み、それはオーディエンスの安全を確保し、楽しめる環境を作り出すことに尽きる。自分たちのアルゴリズムがコンテンツをきちんと識別できていることをあらかじめ確認し、オーディエンスやコミュニティからの指摘にモデレーターが迅速に対応できる環境づくりに邁進したい」。

[原文:TikTok’s Blake Chandlee on working with U.S. brands despite conflict with the White House

PIERRE BIENAIMÉ(翻訳:SI Japan、編集:長田真)