失敗から学んだ「 Quibi 」、コンテンツ重視へ戦略変更:ハリウッドの鳴り物入り新動画サービス

もしかしたら、Quibi(クイビー)にとって遅すぎることはまったくないのかもしれない。モバイル専門のユニコーン企業からテーブルステークス(市場参入に最低限必要な条件を備えた)のストリーミングサービスへと戦略がシフトしつつあるように見え、Quibiの当初の傲慢さが薄れてきた、とプロデューサーたちは語る。その一方で、Quibiアプリの毎週のダウンロード数は増えてきている。

はっきりさせておくと、ジェフリー・カッツェンバーグ氏が手がけるストリーミングサービスのQuibiは、驚くべき大失敗だった。4月6日のサービス開始に先立ち、Quibiは大いに騒ぎ立てた。ハリウッドの大手スタジオからの多額の支援。クリッシー・テイゲンやスティーブン・スピルバーグのような大物が登場する番組ラインナップ。モバイル専用ストリーミングサービスのQuibiが特別である理由を示すよう意図された、縦向き視聴と横向き視聴を切り替えられる鳴り物入りの機能。だが、そうしたものはいずれも、無駄だったようだ。ストリーミングサービスの開始という観点からいえば、Quibiは、一方ではベライゾン(Verizon)が打ち切ったGo90(ゴーナインティ)に、もう一方では9カ月間で6050万人の契約者を獲得したDisney+(ディズニープラス)に匹敵する。

不名誉殿堂に加えるのは時期尚早

それでも、昨年のリメイク映画『キャッツ(Cats)』と並んで、ハリウッドの不名誉殿堂にQuibiを加えるのは、時期尚早かもしれない。Quibiは、冷たい反応に恐縮したように見える。なにしろ、6月の時点で、このままのペースで行くと、1年目の契約者数は、740万人という目標に届かずに500万人にとどまると報じられているくらいだ。

サービス開始に先立ち、Quibiは、対応が難しいという印象を一部のプロデューサーに与えた。Quibiを含む、複数のストリーミングサービスにプロジェクトを売り込みに行ったプロデューサーは、Netflixやワーナーメディア(WarnerMedia)のようなほかの買い手が、すぐに値を付けるのに対し、Quibiは良いタイミングを待つのに気付いた。「サービス開始後の否定的な報道の山にすぐに対応して、メディアの論調を変えさせた。『我々は傲慢すぎた。まだ大成功していないのは明らかだ。やり方を変える必要がある』と言ってきた」と、あるプロデューサーはいう。

Quibiは実際、独自の驚くべきプラットフォームではなく、標準的なストリーミングサービスに似た動きを取り始めている。当初はモバイル専用だったアプリは、6月に、コネクテッドTVに番組を配信できるオプションを追加した。続いて7月には、Twitterやインスタグラムのようなプラットフォームで、番組のスクリーンショットを共有できる機能を付加した。これまでサブスクリプション型だったアプリは、オーストラリアとニュージーランドで、無料の広告付きバージョンのテストもしており、金を払うだけの価値がある番組だと証明しなければならないとQuibiが認識している兆候が、表面的にはみられる。

マーケティングを理解してなかった

「初っ端からすべてを完璧にできなかったということを分かったのだ」と、2人目のプロデューサーは語る。

Quibiがきちんと理解していなかったことのひとつが、マーケティングだ。当初の戦略は、特定の番組に人々の注意を向けることではなく、アプリの宣伝に重点を置いていた。「番組の主役を務める有名人がみな、代わりにその仕事をやってくれると期待していたのだと思う」と、3人目のプロデューサーは話す。Quibiは、サービス開始から数週間後に、より番組に特化したマーケティング戦略へとシフトし始め、4月下旬にESPNに広告を流し、NBAのチーム、ロサンゼルス・クリッパーズ(the Los Angeles Clippers)に関するドキュメンタリーシリーズ「ブラックボールド(Blackballed)」を宣伝した。複数のプロデューサーによると、Quibiは、番組に特化したマーケティングを強化中で、ワイデン+ケネディ(Wieden+Kennedy)やデジタル・メディア・マネジメント(Digital Media Management)などのエージェンシーと提携している。「番組を直接的に売り込む必要があると学んだのだ」と、2人目のプロデューサーは指摘する。

おそらく何よりも意外なのは、Quibiの運命が好転しているかもしれないことだ。分析企業のセンサータワー(Sensor Tower)によると、4月のリリース以来、Quibiのアプリは600万回近くダウンロードされており、7月にはダウンロード数が120万回に上った。また、この2カ月間で、Quibiのアプリの週間ダウンロード率は上向き、6月1日から始まる週の7万2000回と比べて、8月3日からの1週間でダウンロード回数は34万8000回に達した。

Quibi_WeeklyDownloadsChart

どれだけの可能性を捨ててきたか

Quibiの週間ダウンロード率が急上昇している理由は明確ではなく、アプリをダウンロードした人々が利用し続けているのかどうかもわからない。だが、アプリのダウンロードは、サブスクリプション契約を意味するわけではない。また、ストリーミング戦争では、サブスクリプションのサインアップは契約更新ほどの価値がない。Quibiは、どちらかの面で成功していると証明しなければならない。調査会社カンター(Kantar)が第2四半期に行った調査によると、Quibiの契約者の3分の1は、3カ月以内に解約するようだという。

週間ダウンロード率を見ると前途有望に思えるかもしれないが、ヒット番組を最終的に配信するまで、Quibiの見通しに意味を持つほどの変化はないだろう。そうしたことが、Quibiの失敗の最大の兆候であり、公式に失敗と認めるのを妨げる最大の障害であり続ける。Quibiが番組を配信し続けられる限り、何が成功し、何が成功しないかを学んで、それに従って戦略を変えることができる限り、Quibiには見込みがある。

だが、Quibiがどれだけの可能性を捨ててきたかは、別問題だ。新しいプロジェクトの獲得のためにどれだけの資金を取っておいたのか、疑問がある。「どれだけの金を用意していたか知らないが、プロジェクトにまだゴーサインは出されていない」と、4人目のプロデューサーはいう。とはいえ、プロデューサーがプロジェクトをQuibiに持ち込むのにどれほど乗り気かという疑問もある。相変わらずQuibiに番組を売る気満々のプロデューサーもいる。「小切手を現金に交換し、意気揚々だ」と、2人目のプロデューサーは述べた。だが、皆が皆、そう確信しているわけではない。

「問題は、彼らが入札するときに、『おそらく12カ月で事業をやめるだろう』と思われることだ。死のスパイラルに陥っているとは言いたくないが、彼らは幸運に恵まれて、我々が皆話しているようなヒット番組を見つけなければならない」と、1人目のプロデューサーは語った。

[原文:‘They got the memo’: Quibi changes tone, tact after failed debut

TIM PETERSON(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:長田真)