「見せかけが横行している」: マイクロソフト 幹部、ブラウザプライバシー戦争について語る

2020年1月、マイクロソフト(Microsoft)が「Microsoft Edge(マイクロソフト・エッジ)」ブラウザの最新バージョンをロールアウトした。これでようやく、同社はアドトラッカー対策の強化に乗り出すテック企業の長い行列の最後尾に並ぶこととなった。

GoogleのChromeブラウザと同じオープンソースコードを用いて開発された同ブラウザの最新版は、強化型のトラッカー防止機能(デフォルトでオンになっている)を内蔵している。マイクロソフトの発表によれば、最新版の同機能は、旧版のそれよりも25%多くのトラッカーをブロックできるという。

米DIGIDAYは、マイクロソフトのWindowsマーケティング部門でゼネラルマネージャーを務めるアーロン・ウッドマン氏に取材を行い、GoogleのChromiumコードへの移行や、Microsoft Edgeブラウザのプライバシー機能を差別化するための取り組み、テックコミュニティの一部で横行する「見せかけの」プライバシー対策などについて語ってもらった。なお、読みやすさを考慮して、以下のインタビューには編集が加えられている。

──最新版のMicrosoft Edgeブラウザでは、旧版よりもトラッキングの防止が強化されている。この措置に踏み切ったのはなぜか?

大部分は、我々が1年半前に下した(Chromiumを組み込むという)エンジニアリングサイドの決定に関係している。

かつて我々がいた世界では、ウェブとの互換性を持たせることに必死で、エンジニアリングサイドの多くのリソースが消費されていた。Chromiumへの移行により、互換性を追求していたリソースを、注力したくてもできなかった機能に移せるようになった。安全性は高いかもしれないが、ウェブをレンダリングできないブラウザを使いたがるユーザーなどいないからだ。

──鈍いトラッカーブロックは意図しない結果を招きかねない、という議論もある。つまり、フィンガープリンティングのような、プライバシーの侵害を増長するおそれのある回避策だ。それにどう対処するのか?

一般には、イエス/ノー式の答えがあると思われている。どうにかトラッキングをオフにはできるが、果たしてその結果を許容するのか(あるいは許容しないのか)というものだ。世界はそんなふうには動いていないと、私は思う。

また、広告=トラッキングであり、トラッキング=広告であるという一般認識もあるようだが、そんなことはない。多くの場合、広告のコンテクストは閲覧中のページのコンテンツに基づいている。どんな広告であれ、80~90%の効果を有している。

一部では「(プライバシーに関して)こんなことをします」という見せかけが横行している。だが実際には、その作業は利用者に一任されており、その複雑さは甚だしい。利用者がアクセスできるコントロールを増やすことにより、これがウェブに対するウェブ開発者や広告主の考え方に影響を与えていることが見えてくるようになればと思っている。

──マイクロソフトのさまざまな代表者が、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)のグループに参加しており、ウェブ広告の未来にフォーカスを当てたグループにも参加している。マイクロソフトはW3Cで、どんなことに取り組んでいるのか?

システム内には実に多くの混乱や雑音があるので、この業界の現在地やその影響、利用者のニーズを正確に把握するのはきわめて難しい。

マイクロソフトは、Microsoft Edgeブラウザをはじめとする自社製品に対して諸原則を定めている。第一に透明性。複雑で理解が難しい、あるいは複雑すぎて管理できないものはだめだ。

第二にコントロール。

そして第三にバランス。このバランスを決めるのは、個々の企業によってではない。消費者、顧客の認識、文化的要求、あるいは規制当局の要求によって決められるべきだ。

一部のレベルにおいては、これらが、より広範な社内全体におけるエンジニアリングサイドの取り組みを導き、ひいてはこれらフォーラムへの参加において我々が行なっている仕事の大部分を導く原則となっている。

──プライバシーが市場参入の最低条件になっているように思われるが、一部のブラウザにとっては、それにはマーケティング的な側面もある。Microsoft Edgeブラウザについてはどうか?

今後1年間、我々がマーケティング効果の測定に使用する唯一の指標は、バリュープロポジションの理解だ。

我々はブラウザ内に自分たちの哲学を適用してきたが、そのやり方には大きな違いがある。特に、プライバシー関連のものがそうだ。利用者がそれを理解してくれれば、トップレベルのリスペクト要素としてそれを組み込んだプロダクトを選んでくれるようになると、私は確信している。

私の懸念のひとつは、プライバシーが一般大衆の心配事という悲劇を生んでいるということだ。つまり、人々は集団でこの問題を気にかけているということだ。この問題について我々が文化的観点から持つべき懸念がある。だがこの激痛は、いかなる場合も、個々に感じられることはないかもしれない。だから、利用者の選択を刺激することはない。それが変わることはないだろう。

マイクロソフトは、我々が考える正しいこと、利用者をどのように扱い、どのように考えるべきなのかという観点からスタンスを取っているが、これが業界を大きく動かすことはないかもしれない。

残念ながら、いま我々が暮らす世界では、人々は見出しや重要なメッセージしか読まない。「新しいプライバシー機能を開発しました」と口でいうのは、実に簡単だ。ブラウザやほかのデジタル製品に関して(プライバシーが)時事問題になっている昨今、原理に基づいた差別化要因や、本当に意味のある差別化要因、あるいは利用者のためのアクセスしやすいアプローチを持たない見せかけが横行している。そのことに私は大きな懸念を抱いている。

──Microsoft Edgeブラウザのローンチ前日に、GoogleがCookieの段階的廃止を発表した。してやられたとは思わなかったか?

全般的に、Chromeチーム(のメンバー)は非常に協力的だった。それはChromiumへの移行という点でも、オープンソースコミュニティへの貢献に向けた我々との協働という点においてもだ。私個人は反感や懸念は抱いていない。

1月15日という、もともとのローンチ日に向けて我々が抱いていた目標に目を向けると、この反応を心からうれしく思う。したがって、答えはノーだ。そのせいで損失が生じたとは思っていない。

Lara O’Reilly (原文 / 訳:ガリレオ)